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小説「私の好きな人」

シゴデキ上司ホソク部長への片想いストーリー、全13話(2022.11〜連載)、「キミは嘘をつかない」のスピンオフです

14 本
¥300

私の好きな人 1

秋らしい和やかな朝の光が無人のオフィスを柔らかく包み込んでいる。いつも通り誰も出社していない静かなフロア、その南東側に法人営業部のエリアがある。窓側には二人の部長の大きなデスクが、そしてそれぞれを起点に楕円を描くように各営業チームのデスクが並んでいる。椅子にバッグを置いたらPCを起動し、引き出しから拭き掃除のシートを取り出す。私の日課、それは、朝イチで部長と同僚のデスクを拭くこと。新卒の頃から続けている習慣だけれど、多分、誰一人としてそのことに気づいていない。全員のデスクを拭

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私の好きな人 2

朝、鏡の前に立つと2割増に浮腫んだ顔の私がいる。はぁ。生理。いつもより重そう。目覚めた瞬間から頭も重いし全てにおいてやる気が出ない。着ようと思って出しておいたオフホワイトのパンツをクローゼットに戻し、あまりお気に入りでもない黒のスカートを憂鬱な気持ちで履く。ああ、今日はホソクさんが出張から戻ってくる日なのに。

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私の好きな人 3

人事部からの一斉メールが届くと周辺のデスクからぽつりぽつりと小さなため息が聞こえた。人事評価面談の季節だ。この会社には世界共通の人事評価プロセスがあり、それにかなり力を入れている。年初に社員自身が伸ばしたいスキルを設定し、定期的にチェックしながら一年を終える前に上司と共に振り返る。システムとしては素晴らしいのだが、年末のこの時期になると煩わしくてたまらない。何故なら上司との面談前までに年初に設定した目標に対する成果や反省点などを文書に、しかも英語で、まとめなければならないのだ

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私の好きな人 4

定時まで1時間あるのに外はもう真っ暗だ。電話も鳴らない静かなフロア、同僚たちは各自デスクでPC作業をしている。残りの仕事を優雅に終わらせて今日は定時で帰ろう、そんな雰囲気が漂う中、私は余計な思考が邪魔をして仕事に全く集中できない。ホソクさんが、先ほどからずっと「東京カレンダー」を読んでいる。片肘を立てて、真剣な表情で「艶やかな夜を約束する珠玉の10軒」なんて特集が大見出しになっている雑誌を読んでいるのだ。ホソクさんの席からページをめくる音が聞こえるたび、ホソクさんは何を計画し

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小説「最後のピース」

人生リセットした25歳と年上弁護士キムソクジンの恋、全24話(2022.4〜連載)。 家具屋ナムジュンのスピンオフ(全8話)も収録

35 本
¥300

最後のピース 1

夜10時。LINEの通知を知らせる音。 〈今セブン。家いるよね?〉 付き合って約半年の彼はいつも唐突に我が家へやってくる。前回会ったのは…もう2週間前だったろうか。付き合うってこんなもの?なんて、いつも思う。大人の恋愛はこのくらいがちょうどいい、なんて誰かが言ってたけど、私たちは初めからずっと燃えそうで燃えないし、付き合ってるけど会わなくても平気だし、でもインスタの中ではしっかりと恋人同士な表情を見せる、そんな恋愛を、している。 「はい、これ」 部屋に入るなり、彼は小

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最後のピース 2

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最後のピース 3

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最後のピース 4

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小説「キミは嘘をつかない」

船上パーティで出会った王子様みたいな年下男子キムソクジンとの恋。全21話(2022.3〜連載)

22 本
¥300

キミは嘘をつかない 1

恋は大きく分けて2種類ある、と思う。 一目ぼれのように瞬間的に落ちる恋と、じっくりゆっくり沼に落ちていくような恋。 でも、私の恋の始まりは、そのどちらでもなかった。 喩えるのなら、深い沼の上にある今にも壊れてしまいそうな桟橋を恐る恐る歩くような恋。 31歳、独身、彼氏なし。 それが、私。 社名を聞けば誰でも知っているような大企業の購買部で働いている。購買部とは、会社がモノやサービスを購入する時の仕入れ先を決める部門だ。つまりは会社の財布の紐を握る存在。良いモノを安く仕入

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キミは嘘をつかない 2

高級車の後部座席からキラキラと輝くレインボーブリッジの光を見上げた。 助手席の背もたれを最大限倒してチカを寝かせ、私はドライバーの後ろ側に座った。先ほどまで「王子」と呼んでいたパーティの中心人物の車に乗っているだなんて、なんだか嘘みたい。

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キミは嘘をつかない 3

「...ズルい」 朝、コーヒーを飲みながら昨夜の出来事を話すと、チカはムスッとした表情でそう言った。

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キミは嘘をつかない 4

店を出た後、私たちは涼しい夜風に当たりながら散歩した。

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小説「雪ネリネ」

世界的スタージミンと日本人ヌナのラブストーリー、全33話(2021.10.13〜連載)。 エピローグ全4話(2022.4〜連載)。※執筆感想文のみ全文無料公開しています

40 本
¥300

雪ネリネ1

「オンニ!イゴ、チウォジュセヨ!」 チーム長が必要以上の声量で私に指示を出した。鼓膜が破れてしまいそうな彼女の甲高い声にはもう慣れた。だって毎日なのだ。私は彼女に目の敵にされている。彼女が裏で私のことをアジュンマと呼んでいることも知っている。でも年長者とは言え新人の私は耐えるしかない。 私は3ヶ月前から韓国ソウルにあるHYBEという会社で働いている。 それは突然のことで自分にとって嵐のような変化だった。半年以上前のことだ。人気ボーイズグループBTSが日本の化粧品CMのモ

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雪ネリネ2

ここに来てもう1年が過ぎた...。 必死に努力を重ね、韓国語もかなり話せるようになった。会社からの信頼も得られたと思う。 オフィスビルに入り、1階のカフェでアメリカーノを買う。私の朝のルーティン。ただ今朝は美味しそうなドーナツに惹かれ、思わず買ってしまった。ドーナツの入った袋を持ってエレベーターに乗るとそこに眠そうに目元を擦るジミンがいた。

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雪ネリネ3

ジミンが運転するポルシェの助手席に座っている私。何を話せばいいのかわからずただ心臓だけが音を立てている。ジミンに「飲みたい気分だから付き合って」と言われ、乗せられ、ふたり無言のまま車は江南の方へ向かっている。 騒がしい大通りから路地に入るとジミンは車を停めた。ジミンは慣れたようにスタッフにキーを渡し地下に続く階段を下りた。私も遅れて彼に続いた。 VIPしか入れない隠れ家のような店で私たちは個室に入った。どうしよう。気を失いそうなほど緊張してきた。 「こういうところ、初めて

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雪ネリネ4

あの日から数日してやっとジミンに会えた。しかし他のメンバーも一緒だったので変なことは言えないと挨拶しか出来なかった。ジミンに自室に泊めてもらうほど酔って記憶をなくしてしまったいたたまれなさと、申し訳なさと、そしてあんな大スターとの距離が縮まったことの優越感と緊張感で、ジミンを見つけた時は気が動転しそうになった。おどおどと挨拶する私に、気のせいかジミンはふっと笑顔を見せた。

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BTSエッセイ

BTSに関するエッセイ 愛を吐き出します

バンタンのソロアルバムを振り返る

(注: これはナムさんの第二弾ソロが出る前に書いたちょい古め記事です。細かく言うとテテソロまで書いたところでやめてそのまま放置してしまい、先ほどグクソロについて加筆し公開した次第です) 本当はジンくんのソロアルバムが出た後にこういった振り返り記事を書きたかったのですが、まさかのソロ2周目が始まりそうな雰囲気を感じ、ジンくん除隊前ではありますが、2022年から始まったバンタンソロ活を敢えて今この時期に振り返っていきたいと思います。なお、私にとって「ソロ活」とは「ソロアルバム発

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Like Crazyについて思うこと

夫と溜め込んでいたドラマを見てしまいかなり遅い時間になってしまったが故、手短に2000字以内で書きます(書けるかな)。 今日13時にジミンのアルバム「FACE」及びタイトル曲「Like Crazy」が発表された。前日深夜に私のメールボックスに届いたジミンからの直筆メールにその曲は彼の好きな映画からインスピレーションを受けたとあり、私はその日の夜に映画「Like Crazy」をレンタル料300円ほどを払って見た。 さて、今から思いっきり映画のネタバレ満載な話をするのでここか

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テヤン×ジミン ”VIBE”私的日本語訳

※VIBEの歌詞、YouTubeで日本語字幕をつけて見てみたけどなんかしっくり来なかったので私なりに訳してみました。ちなみにそんなには意訳していないつもり。 VIBE by TAEYANG featuring Jimin of BTS 言葉では表現できないけど ガール、キミにはそのvibeがあるんだ キミの微笑みは芸術品 俺の魂を目覚めさせる キミってすごくしっくりくるんだ そう、それがvibe [Verse 1: TAEYANG] 唯一無二のテーマソングになりそうだ

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KBS歌謡大祝祭2019について語りたい

ダンプラ紹介記事でウザさを爆発させすぎてしまったので「この人ちょっと面倒臭いかもな」って思われた方もいると思うんですよ。ごめんなさい…リアルでは空気読むタイプなんですけどね、この場では遠慮なく好きなことを正直に書いているだけなんです、許してね。反省もしてるんですが、好きなものを好きだとただ書くのは楽しかったんです。何しろ私、身の回りにアミ友がいないもので好きを語る相手がいないんです。なので、今後もバンタン不在の寂しさを紛らわすために好きなものをただ語るシリーズ、続けていこうと

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