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私の好きな人 1
秋らしい和やかな朝の光が無人のオフィスを柔らかく包み込んでいる。いつも通り誰も出社していない静かなフロア、その南東側に法人営業部のエリアがある。窓側には二人の部長の大きなデスクが、そしてそれぞれを起点に楕円を描くように各営業チームのデスクが並んでいる。椅子にバッグを置いたらPCを起動し、引き出しから拭き掃除のシートを取り出す。私の日課、それは、朝イチで部長と同僚のデスクを拭くこと。新卒の頃から続けている習慣だけれど、多分、誰一人としてそのことに気づいていない。全員のデスクを拭いたらやっと席につきメールチェックだ。カタカタとPCを打つ音が広いフロアに響くのが私は好きだ。朝の始まりを唐突に告げるオンドリとは違って、まだ眠っている空間を静かに目覚めさせる優しい音。そして、ひとりふたりと社員が出社すれば独奏が二重奏、トリオ、カルテット…と増えていき、いつの間にか静かだったこの空間にはコピー音、電話音、笑い声などありとあらゆる音が響くようになる。私にとって会社の朝はまるで独奏から始まる交響曲のようだ。それに、いつも私と二重奏を奏でてくれる人は、もう5年も片想いしているうちの部長、ホソクさんだ。
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