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地獄の歯石取り(復職日記48)

昨年末、3年ぶりに歯医者に行った。
盛大にひげを剃り忘れ、虫歯だと思ったのに「知覚過敏ですね」と言われ、「歯がだいぶ汚れてるのでクリーニングしましょうね」と、ひげ面と歯の汚さを披露して終わったあの歯医者。


あの日に言われた「クリーニングしましょうね」の日が、今日だった。


あの時の恥を忘れるまいぞ、と、歯医者の前に入念にひげをそり、準備万端。
これで鏡にうつったわたしの口周り完璧、と、颯爽と歯医者に到着。


待ち時間も相変わらずほとんどなく、どうぞ〜と、診察室に呼ばれる。



今日はこちらの部屋へどうぞ、と言われて、前回とはちがうお部屋へ。
あれ、鏡とかないんですけれども。
まあいいか。
診察台に座る。


やさしいお姉さんが、一言。


「ではクリーニングしていきますね。問題なければ、今回でおしまいです。」


あれ?歯医者って何回も通うものだと思ってたけれど、クリーニングなら1回で済むのか。
なんだ〜よかった〜。



ここからが地獄の始まりでした。



キュイーンというおなじみの音とともに始まったクリーニング。
かなりの歯石がついていたらしく、とにかくゴリゴリに削られてゆく。
全然痛くないじゃん、と思っていたのも束の間、間髪いれずに襲いくる激痛。


平気、いてぇ!平気、いてぇ!平気、平気、いてぇ!いてぇ!いや、いてぇ!いてぇよ!



だんだん平気な部分が減ってくる。
そもそも知覚過敏だから、多分他人より痛いのだ。
歯を削られているわけではないのに、歯と歯のあいだの歯石を削っているだけなのに、とにかく「痛い」。


ひげ面がどうこうとか、そんなもん関係なかった。そもそも今日は真上に鏡ないし。
というかそんな暇もなく、いてぇ!いてぇよぉ、おねえさん…



お姉さんが下手なのでは決してない。
血が全く出なかった。
ただただ、知覚過敏&3年分の歯石、というダブルコンボをキメてしまったわたしが悪いのだ。




痛すぎて、全身に力が入りまくる。
上の歯が終わったころには、すでに瀕死だった。
一度口をゆすぐ。
ゆすぐときに、やさしいお姉さんは、「力が入って疲れちゃいますよね、あともうちょっとですからね」と労ってくださった。
やさしい。やさしさが沁みる。


お姉さんのやさしさに励まされて、下の歯に挑む。
下の歯に挑むも、すぐに心が折れる。



もうやめて…
もうわたしは一生この歯石と生きてゆきますからもうやめて…


もはや、いてぇ!と思う気力もなく、ただただ、もうやめて…もういいよ…残りの歯石はそのままで、わたしはその歯石とともに生きてゆきますから…と、お姉さんに言いたくて仕方なかった。




瀕死の状態のまま、もはや思考も無になりかけたときに、全部の歯のクリーニングが終わった。



やさしいお姉さんが一言、

「舌で歯の状態を確認してみてください、きっと前と感触がちがうと思いますよ」

とにっこり言ってくださったので、言われた通りにすると、つるっつるのつるだった。


思わず、


つるつるです!つるつるしています!


と、無駄に2回同じことを言ったら、お姉さんは、



「そうやって言って頂けるのが1番嬉しいです。歯石は、どんなに歯を磨いていてもできてしまうものなので、お掃除はわたしたちに任せてくださいね。おそらく◯◯さん(わたしのこと)は、歯石が出来やすい体質だと思うので、次回は4ヶ月後くらいにいらして頂けるといいかと思います。」


と仰った。


わたしは神妙な心持ちで、


わかりました。4ヶ月後に必ずまた来ます、と、お姉さんと約束した。



こうして地獄の歯石取りが、無事に終了した。
こんなに痛い思いするなら、定期的にメンテナンスに行ったほうが絶対いい。
お医者さんに言われた、「歯磨き&フロス」もちゃんとやる。
ひげ面で恥かいたことなんて吹っ飛ぶほど、最終的に無の境地に陥るほどの、痛さだったんだから。



もう2度と無の境地は味わうまい。
みなさんも、わたしみたいにならないように、歯を大事になさってください。


ああ、お姉さん、優しかったなあ…

投げ銭?みたいなことなのかな? お金をこの池になげると、わたしがちょっとおいしい牛乳を飲めます。ありがたーい