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しつこく毛穴を見せられる(休職日記16)

ほんの興味本位でクリックしてしまったのがいけなかった。
Instagramのはなしです。


一度クリックしたら最後、出るわ出るわの大騒ぎ。
毎回書かれているのはだいたい同じこと。


これで毛穴が目立たなくなりました!
これでイチゴ鼻とはさよならです!
開いた毛穴って老けて見えますよね!
開いた毛穴って黒ずんで不潔ですよね!


等々。


むかーしむかし、新宿を歩いていた時に、突然お姉さん寄りのお兄さんに声をかけられて、

「ダメよ!毛穴のケアもしっかりしなくちゃ!」

と言われたのを覚えている。


わたしは人の顔をあんまりよく見ていない。
よって、人の毛穴なんて気にしたこともない。
人の顔を覚えるのもあんまり得意じゃない。
つまり、人の毛穴なんて気にしたこともないんだよ、わたしは。


毛穴の悩みを解消することで、自己愛がぐんとあがるならそれは本人の自由だ。そういうの大賛成。自分の好きな自分になったらいいとおもう。

だけれども、不安を煽るようなやり方は、ことほどさように品がないな、と思ってしまう。
でもよくできてる仕組みだ。
だって、今なら半額以下という煽り文句にのせられて、クリックしそうになったから(3回も)。


いやいや、全然さっきまで毛穴のこと気にしてなかったじゃん。
毛穴のことなんてこれっぽっちも考えていなかったのに、クリックしそうになったわたしの頭の中は、おのれの黒ずんだ(黒ずんだかどうかも見てない、だって鏡をそんなに長い時間見ない)毛穴のことで頭がいっぱいになっていた。
恐るべしInstagram。恐るべしパーソナライズ広告。


脱毛に通っていたときもそうだった。
全◯回、と決まったコースだったのだけれども、あまりにも勧誘がすごいので、怖気付いて通うのを辞めてしまった。
わたしは全身脱毛じゃなくて、何ヶ所か任意の部位をやってもらっていたのだけれど、ここでも施術師のお姉さんから言われた言葉を覚えている。


「夏って首元がよく見えるじゃないですか。そういうときに、うなじとか、背中とか、毛深いと、うわー、あの人毛深いなって思われちゃったりするんですよ。」


わたしは人の顔をあんまりよく見ていない。
よって、人のうなじや背中なんて気にしたこともない。
人の顔を覚えるのもあんまり得意じゃない。
つまり、人のうなじや背中なんて気にしたこともないんだよ、わたしは。


こういう「呪いの言葉」(と自分で勝手に呼んでいる)に出会うと、一目散にダッシュで逃げたくなる。
繰り返すけど、それを行うことで自己愛爆上がりになるなら、どんどんやったらいいと思う。大賛成。なりたい自分になったらいい。


でも、人の容姿を、かならず衰えていく外見のなにがしかを、さも大問題のように、鬼の首をとったように、「それみたことか!だからおまえはダメなんだ!」というような言説や、態度や、状況からは、すたこらさっさと逃げ出すに限ると、わたしは思っている。


毛穴が開いていたら、なんか、ダメなの?
背中に毛があったら、なんか、ダメなの?
なんで、ダメなの?


今ならあのお姉さんたちに聞けるかな。
いやー、今の自分でも聞けないだろうな。
だからここに書いて、成仏させておく。


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