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文章題が苦手な子の改善策~進次郎構文から読み解く~

はじめに

中学受験をしている親御さんからに限らず、よく相談を受ける内容の一つに「子供が文章題が苦手でどうしたらいいのか」
というものがあります。
文章題は算数、理科、社会など多くの教科で出てくるし、どうしてできないのかもわかりづらいから結局こういう相談の仕方になってしまうのでしょう。
単にその分野が苦手なのか、それとも教科自体が苦手なのか、はたまた応用問題が上手く解けていないのか。

というわけで本稿ではそんな文章題が苦手な子の改善策と思っているものを書いていきます。
なお、そもそも単元学習が足りない、という子の対策はまず暗記や解法の学習なのでそこは前提とさせてもらいます。

文章題が苦手な子は何に躓いているのか

結論を先に話しますが、冒頭の問に筆者がまず返す返答が
「とにかく国語を勉強させてください」
です。

どういうことなのか。
まず、筆者が見てきた文章題が苦手な多くの子に共通している特徴に国語の読解が苦手、というのがありました。
特に随筆や論説の読解が苦手な子が多かったです。
これが何を表しているかというと、彼らは文章題を解くというステージそのものに立てていないということなのです。

文章題は「出題者の意図を問題文から汲み取って適切な答えを返す」問題です。
短答式の問題は何を答えればいいのかが最初から示されているから、知識勝負なわけですが、文章題では出題者の意図が汲み取れずに躓いてしまう子がとても多い。

出題者が何を聞きたいのか、それが分からなければ当然解答の方針も立てられない。

短い文章題でそんなことが?と思うかもしれないが、文章題が苦手な子に文章題で必要な情報を整理させると驚くほど情報を拾えていません。
なので、ここからはその練習方法などを書いていきます。

基礎 文章から情報を集める練習~進次郎構文を添えて

上の章で書いた通り、文章題で躓いている子は文章の意図が読み取れていないということが多くあります。
そこで、私は文章から情報を拾う練習が、文章題の苦手克服に役立つと考えています。

まず、文章は概ね
「AはBである」
少し複雑になると
「AはBである、BということはつまりCである、だからDだ」
というふうに分解できます。

一つ例文を示します。

「私のクラスには佐藤さんが5人もいたので、そんなに佐藤さんって多いのか、と思って調べたところ、日本人の名字で一番多いのは佐藤さんであり、その数はおよそ184万人です。日本の人口は1億2000万人程度なので、約1.5%が佐藤さんということになります。つまり、実は50人のクラスに1人いるかいないかくらいです。そう考えると私のクラスは佐藤さんが多いですね。」

↑の文章で言いたいことはなんでしょうか。
1行で要約すると
「私のクラス佐藤さん多過ぎやん」
です。
そこに至る要素としては
「佐藤さんってそんなに多いのか、と思った」(話者の疑問)
「佐藤さんは日本人の1.5%である」(AはBである)
「1.5%ということはつまり50人に1人いるかいないかだ」(BということはC)
「50人クラスだとしても1.5%を大きく超える割合の佐藤さんがいる」(だからD)
となり、これが根拠となって
「多過ぎやん」(根拠を踏まえた結論)
となります。
ABCDの流れがしっかり出来ていて、要素に分解しやすいですね。
しかし、文章題の苦手な子はこの量の文章からでも必要な情報を抜き取ることができなかったりします。
もっと簡単な文章から練習したほうがいい場合もあります。

さて、ではここでようやく進次郎構文の出番です。
進次郎構文がなにか分からない方に簡単に説明すると政治家 小泉進次郎氏がインタビューなどで放った言葉の数々です。
それらがあまりに論拠、具体性に乏しかったり、同じことの繰り返し(トートロジー)であったため彼の環境大臣としての資質を揶揄する意味も込めてこのような呼び方がされています。
もちろんこんなものばかりではないのですが、悪目立ちしてしまった言葉たちということですね。
実際の語録を見てみましょう

「今のままではいけないと思います。だからこそ日本は今のままではいけないと思っていると言っていかなければならない」
「リモートワークのおかげで、リモートワーク出来て良かった」
「約束という約束を守る概念を用いる以上、私は約束を守る」

さて、ものすごい違和感ですね。
なぜでしょうか。
それはこれらの文章が「A=Aだ」という構成になってしまっているからです。

「今のままではいけない」
だから
「今のままではいけないと言う」

「リモートワーク(ができる)」
おかげで
「リモートワークが出来て良かった」

「約束」
とは
「約束を守ること」
だから
「約束を守る」

最後に関してはまず言葉が足りていませんが、ニュアンスとしては約束を守るために全力でやるということなんでしょう。
いずれにしても、本来はその後にもういくつか伝えたいことなどが連なるはずなのですが、最初のいいたいことを連呼しただけで文章が終わってしまっています。
実際は別日の会見や、そのあとの文章で少し進展したことを言っているのですが、その点は置いておいて、もし文章題でここに線が引いてあって、この人は何がいいたいのでしょう、と聞かれれば簡単に答えることができますよね。(逆に何が言いたいか全然伝わらないだろ、というツッコミはご勘弁願いたい)

文章の意図を汲み取るための文法を学ぶときに文章を分解してみたことはありますか。
進次郎構文は分解が非常に楽です。
なぜなら言いたいことが一つしか含まれていなくて、余計な情報がほとんど入っていません。

ですから初歩の初歩として、進次郎構文から情報を抜き出すところから始めましょう。
そして、少しずつ情報を文章題の問題文から拾う、という練習をするのが実は様々な教科で現れる文章題対策の一番の練習方法だと筆者は考えています。
この時、求めれらている情報とその情報がどこに記載されているかを箇条書きにする、もしくはラインマーカーで色分けをしてみる、という方法で可視化してみるのもよいでしょう。
ただし、ラインマーカーでの色分けでは、重複部分が出てきてしまったりするので、情報収集の練習だけをする場合は同じ問題文をコピーして小問ごとに切り分けるのがおすすめです。

応用 いらない情報まで収集・整理しない練習

さて、ここで少し応用編です。
先ほどの文章にすこし情報をつけ足つつ、文章題っぽくしてみます。

「今日は私が日本人の苗字について調べた際のことを発表します。
私のクラスには佐藤さんが5人もいるので、そんなに佐藤さんって多いのか、と思って調べたところ、日本人の名字で一番多いのは佐藤さんであり、その数はおよそ184万人だそうです。
ちなみに、山本さんと小林さんはおよそ100万人ずつらしいです。
どちらも私のクラスにはいませんが。日本の人口は1億2000万人程度なので、約1.5%が佐藤さんということになります。
つまり、実は50人のクラスに1人いるかいないかくらいです。まぁ、最近は子供も減ってきているので、50人クラスなんてそうそうないですよね。しかし、そう考えると私のクラスは佐藤さんが多いですね。」

算数や社会科で出てきて、文中のいろんなところに下線がひかれたりしていることでしょう。
まず文章だけを読んで、含まれている情報をなんとなく頭にいれてください。
さて、ではこの文章で文章題を作ってみます。そこから回答に必要な情報を拾ってみましょう。その辺の紙に書きだしてみてください。

算数
(1)「私」のクラスは40人でした。佐藤さんはクラスの何パーセントですか。
(2)「私」のクラスが佐藤さんが多くない状態になるには少なくとも何人の人が必要ですか。

おまけ
(3)出席番号は名前順です。5人の佐藤さんの出席番号の合計の下一桁としてありうる数字をすべて書け。

それぞれで必要な情報はわかりましたか。では答えです。

===========以下答え==================




(1)
 ア クラスの人数は40人
 イ 私のクラスに佐藤さんは5人

 解答 12.5%

(2)
 ア 佐藤さんが1.5%になれば多くない状態
 イ 私のクラスに佐藤さんは5人

 解答 334人

(3)
 ア 出席番号は名前順なので5人の出席番号は連続している
 イ 私のクラスに佐藤さんは5人

 解答 0、5 
(真ん中の人の番号をXとすると(X-2)+(X-1)+X+(X+1)+(X+2)=5Xとなり必ず5の倍数となるため)

さて、どうでしょう。
驚くほど文章にいらない情報が多いですね。
最初の文を一生懸命読んだのはなんだったのか、と言いたくなりそうです。
山本さんや小林さんのくだり、子供が減ってきていますねのあたりなど完全にいらないですね。まぁこの辺は社会科あたりで使うことでしょう。

必要な情報以外を拾いすぎても効率がわるい、ということです。
これも文章題の苦手な子が陥る罠の一つです。
解答をするときに余計な情報に惑わされてしまうわけですね。
少し読解力が上がってきた子にありがちです。

では、そういう子はどうすればいいのでしょうか。
ここに文章題を解く上での裏技的な要素が含まれています。
その技は
「先に設問から読んでしまう」 です。
解答に必要な情報がなんなのか、それを把握してから、文章を読む練習をしてみましょう。

これは国語などでも使うことができます。
例えば下のような設問があったとしましょう。

国語
(1)「私」が日本人の苗字について調べようと思ったのはなぜですか。適当な箇所を20~25文字で抜き出しなさい。
(2)この文章について、適切でないものを以下から選択せよ
  ア 私は日本人の苗字について調べた。
  イ 日本で一番多い苗字は佐藤である。
  ウ 私のクラスにいた小林さんは1人である。
  エ 私のクラスは佐藤が多かった。

この設問を見たうえで本文を読めば、抜き出し問題があることも、(2)の選択肢の情報がどこかにないかを気にしながら読むこともできます。

情報収集ができるようになってきたお子さんはこの練習をしてみましょう。
問題文に近いところから効率よく読む範囲を広げていくと読解問題の速度は飛躍的に上がりますが、ここから先は国語の読解の話に近くなってしまいますので、またの機会に。

まとめ

まとめです。

1 文章題が苦手な子の根本的な問題は国語力(読解力)にあることが多く、必要な情報を問題文から拾えていないことが多い

2 情報収集能力を向上させることが必要なので、まずは情報量の少ない文章から言いたいことを読み取る練習をしましょう。箇条書きなどで書き出してみるのもよいでしょう。

3 情報が読み取れるようになったら、文章題への対策として、先に解答に必要な情報を整理するために問題文を読むようにしましょう(特に国語、英語の読解問題では有効です)

おまけ
情報の抜き出しができるようになると、それを使って自分の意見を構築する、つまり小論文に取り組む際などにも役立ちます。
筆者は小学生のころ、新聞の社説欄を150字で要約するという練習をよくしていました。上位校を受験するお子さんは試してみるとよいと思います。

さて、長々と書いてきましたが、少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。
なお、ほかに取り扱ってほしいテーマなどがありましたらコメント等いただければ検討いたします。

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