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サブスク?広告? ニューヨーク・タイムズにみる判断指針【Off Topic Ep215】

宮武徹郎と草野美木が、アメリカを中心とした最新テクノロジーやスタートアップビジネスの情報を、広く掘り下げながら紹介するポッドキャスト「Off Topic」。このnoteでは、番組のエピソードからトピックをピックアップして再構成したものをお届けする。

今回は「#215 The New York Timesのサブスクはなぜ成功している?」から、デジタルシフトを成功させるニューヨーク・タイムズのビジネスモデル戦略について。サブスクリプション型のビジネスモデルをメディア業界ではいちはやく採用し、登録者が1000万人を超えた同メディア。サブスク、広告モデル、正解はどっち? そうした議論に対して考えるべき重要なポイントを探っていく。


実は金儲けからはじまったニューヨーク・タイムズ

Buzzfeedの大型レイオフや報道部門閉鎖、ニュースアプリ「Artifact」の閉鎖、VICE Mediaの連邦破産法適用、デジタルメディア「Refinery29」の売却など、近年苦境に立たされるデジタルメディア企業。アメリカの成人の89%はニュースをオンライン上で獲得しており依然増加傾向にある一方で、トップ25のニュースサイトを合わせたニュースサイトの平均利用時間が毎月5分未満であるという厳しい調査結果も出ている。

Pew Research

そうしたなかで成長を続けるのが、老舗メディアのニューヨーク・タイムズだ。デジタル版のサブスクリプションへの登録者は1,000万人を超え、売り上げは10億ドルに。1年早く目標を達成したとされる。

New York Times 2023 Q4 Earnings Presentation

第4の権力ともいわれ、メディアのインフラとしての社会的役割があるなかで、ニューヨーク・タイムズの編集チームはビジネスチームとは独立しており、ビジネスに過度に影響されることなく良質なコンテンツに注力することがミッションに組み込まれている。一方で、こうしたメディアの性質上市場での成長のハードルが高いなかにあっても、プロダクト(ニューヨーク・タイムズであれな記事コンテンツ)とビジネスが連動し成長を続けている背景のひとつに、同メディアのそもそもの成り立ちも関係している。

1851年に設立されたニューヨーク・タイムズは、日刊新聞『ニューヨーク・トリビューン』に在籍する2人の記者が、凍結した冬のハドソン川を渡りながら同紙の利益について話し、『そんなに儲かるのなら自分たちもやろう』と、川を渡りきる間に起業を決意した、という逸話がある。つまり、当初からビジネス目線で事業を捉えた媒体であり、それがデジタル時代におけるビジネスモデルのアップデートに繋がっている部分も大いにあると、宮武は推測する。

サブスクか、広告か

近年でのニューヨーク・タイムズの大きな変化は、まず2010年代にみてとれる。2014年、2017年にニューヨーク・タイムズが今後のデジタル戦略を社内向けに公開した「イノベーション・レポート」は、ジャーナリストやメディア業界にとって衝撃的な内容であったことで知られる。

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