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大手SNSプラットフォームのマネタイズシフトが及ぼす影響とは?Daily Memo - 3/28/2023

今日の話はアメリカの大手SNSプラットフォームのマネタイズシフトにおける影響について話したいと思います。こちらはOff Topic Clubメンバーシップ向けに最近試験的に投稿している「Daily Memo」ではありますが、長文だったため記事として書かせていただいてます。気になる方は是非Off Topic Clubに参加してみてください!

サブスク化する大手SNSプラットフォーム

Meta(Facebook、Instagram)、Snapchat、Google(YouTube)、Twitterなど大体どの大手SNSは今まで広告でマネタイズしていたが、AppleのiOSアップデートの影響などもあり、サブスクやアプリ内課金のマネタイズオプションを増やしている傾向にある。

・Twitter:広告 → 広告 + Twitter Blue (サブスク)
・Meta (FB/Instagram):広告 → 広告 + Verified (サブスク)
・YouTube:広告 → 広告 + Premium/TV/Music (サブスク)
・Snapchat:広告 → 広告 + Snapchat+ (サブスク)

iOSアップデート意外にこのシフトが行っている理由としてよく挙げられるのはユーザープライバシーやユーザーデータの活用について。よく言われるのが:

AZ Quotes

オンラインサービスが無料だった場合はユーザーは顧客ではなく、プロダクトである。ーTim Cook

簡単に言えば、無料でユーザーがプラットフォームを活用する代わりに、FacebookなどSNS企業はユーザーのデータを収集してそれを販売している。そう考えると、SNS企業の顧客は広告主であり、販売している商品はユーザーデータとなる。

大手SNSプラットフォームはデータを販売していない理由

そもそも、この考えは間違っている気がする。個人のデータは実はそこまで価値がなく、Facebookも個人データを販売しても恐らく儲からない。個々のいいねデータ、プロフィールデータ、投稿コンテンツはそれぞれ価値がない。それではSNS企業は何を販売しているのか?結局各社が広告主に販売しているのはアルゴリズムである。そのアルゴリズムとはどのコンテンツを出すかとかではなく、類似オーディエンスだったり、ユーザーの行動データと属性データを大量に集めているからこそFacebookは広告主が求めている人たちに近しい人たちにリーチできる広告商品を販売している。

そのデータは一部他のSNSプラットフォームでも使えるかもしれないが、多くの行動データはFacebook特有のものなので、他社プラットフォームに同じデータを持っていってもあまり役に立たない。結果として、FacebookやGoogleはデータを販売して儲かっているのは違うと個人的には思います。各社のアルゴリズムへアクセスするために広告主はお金を出している。よってFacebookや大手SNS企業はアルゴリズムを最大化するためにユーザーにゼロコストでプラットフォームを使えるようにしている。

Mobile Dev Memo

ゼロコストにすることによって、どのユーザーも平等な立ち位置でディストリビューションにアクセス出来て、平等な立ち位置からオーディエンス・フォロワーを集められる。

このゼロコストによって大量のユーザーを集められたのは恐らく間違いない。FacebookのDAUが20億人以上まで達成して、MAUだともう少しで30億人を突破する規模まで成長した。YouTubeも25億人のMAU、WhatsAppとInstagramは20億人、WeChatは13億人、TikTokは10億人のMAUを超えている。それぞれの会社はユーザーにとってゼロコストだったからこそここまで成長できたはず。

Statista

中国企業のマネタイズモデルを目指すUS企業

どの大手SNSもサブスクモデルへとシフトし始めている中で、今までのゼロコスト体験と比較するのが大事な気もする。そもそも広告無しで月額課金するよりも、恐らく多くのユーザーはゼロコストでサービス利用を望むはず。広告を表示しない機能やプレミアム機能だけだと恐らくパワーユーザーしか課金しない。それでもある程度のビジネスにはなれる。Snapchat+も去年の夏にローンチして既に250万人の有料ユーザーがいる($100M以上のARR)。Discordも2020年ではサブスク売上が年間$130Mの売上を達成していて、2021年は$300Mのサブスク売上を達成したと思われている。

Enterprise Apps Today

恐らく多くのUSのSNS企業は中国のマネタイズモデルを見ていると思われる。アメリカだとサブスクに偏るか、広告に偏るかと両軸を取る会社が少ない。2018年の数字ではあるが、Facebookの売上内訳は98.5%広告、Twitterは84.6%広告、Snapchatは99.3%広告。逆にSpotifyは90.3%サブスク、Netflixは100%サブスクだった。

YouTube

それと比較するとTencentやiQiyiの売上内訳は明らかに分散されている。過去5年で中国の大手SNS企業はほぼ全社メンバーシップ・VIPプログラムを立ち上げてる。中国版Twitter/InstagramのWeibo、中国版NetflixのiQIYI、中国版Reddit/YouTubeのBilibili、ニュースアプリのToutiaoはリテンションを高めるための戦略として立ち上げてる。

YouTube

中国の課金型メンバーシップモデルは非常に参考になるので、気になる方はこちらのツイートスレッドをご覧ください。特にメンバーシップモデルのインセンティブ設計、ステータスと機能のバランスはめちゃくちゃ上手く作られている気がする。

USのSNSプラットフォームの平等性を作れない特典

アメリカのSNSプラットフォームがサブスクモデルを取り入れている中で、実は中国企業と比べて一つ非常に大きな違う特典をユーザーに与えている(少なくとも自分が見ている中国企業の特典リストにはなかったと思われる)。その特典は今までのゼロコストのプラットフォームで育ったユーザーからすると、かなり不自然で恐らく多くの批判を集める特典である。

その特典とは投稿のリーチ(投稿が届くユーザー数)が有料ユーザーの場合だと拡大されること。Meta(FacebookとInstagram)の月額$12のVerifiedバッジを獲得するともらえる特典は以下となる:

Facebook

ここで重要な特典は「Increased visibility and reach」。Meta Verifiedになると、自分の投稿がVerifiedメンバーじゃない人よりも優先されるようになる(アメリカは対象とはならない)。

MetaはTwitterからこのアイデアを恐らく取ったと思われる。月額$8のTwitter Blueは返信などで優先的に出るようにしたり、より多くの人へリーチできるようにすると特典リストに記載している。Snapchat+もセレブへ返信する時に優先されるようになっている。

何故わざわざ有料メンバーのコンテンツを優先したり、よりリーチを増やす判断に至ったかと言うと、恐らくボット問題の解決案だと思われる。各プラットフォームではボットがいるため、大量のスパムボットをわざわざ有料課金アカウントにしないと仮定すると、有料ユーザー(いわゆる本当の人間と認証したアカウント)を優先した方が良いと言う考え。

イーロンは4月15日からフィードのレコメンドコンテンツとして表示されるのは認証されたアカウントのみと発言。そうすると認証されていないアカウントはリツイートやいいねをされないとフォロワー以外にリーチが難しくなる。

このマネタイズのシフト及び有料ユーザーの優先する判断は大きな影響があると個人的には思っている。ゼロコストのプラットフォームでは誰でも努力してプラットフォームネイティブなコンテンツを出すとオーディエンス作りが出来た。この新しい時代のSNSプラットフォームでは経済ステータス(月額課金できる人たち)がお金を払うだけでディストリビューションのアドバンテージを持つことになる。もちろん無料版で成功するユーザーも色々出てくると思われるが、今までのゼロコスト時代のプラットフォームから大幅にユーザーの心理と考え方が変わる可能性があるシフトに見える。既にオーディエンス作りをするのは難しい中で、より難しくなってしまうとユーザーは違うプラットフォームへ移行する可能性が高くなる。実際にTikTokが人気になったのはゼロコスト及びフォロワーゼロ人からでもバズれる可能性が他のプラットフォームよりも圧倒的に高かったから。

中国企業のメンバーシップモデルはオーディエンス作りよりもユーザーのステータスやコンテンツ内容をアップグレードするため、ディスカバリー体験自体は変わらない。個人的にはUS企業が有料・無料ユーザーによってディストリビューション力を変えるべきかは正直分からないが、明らかなのはトレードオフがあること。

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ボット問題はあるとは思うが、全ユーザーがゼロコストでも十分勝負出来るプラットフォームを作りながら、メンバーシップモデルにもっとティアなどステータスを入れ込むやり方がないかと思ってしまう。

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