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Gen Zが大好きなMeme文化から生まれるビジネス

自己紹介

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。これまで日本のVCで米国を拠点にキャピタリストとして働いてきて、現在は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。Off Topicでは、次世代SNS、Gen Zトレンド、最新テックニュースの解説をしているポッドキャストもやってます。まだ購読されてない方はチェックしてみてください!

はじめに

これまでGen ZやTikTokなど、若手世代の文化について解説した記事を多く書いてきたが、その中でも何回もメンションしているのは「Meme」文化。Memeは昔から存在して、インターネットでかなりバズったフォーマットだが、ここ最近さらに人気になっている。MemeとはGen Zのコミュニケーションの基本。そんなMemeが何故人気で、何故Gen Zと合っていて、何故スタートアップやブランドがMeme文化について知らなければいけないかを解説したいと思います。

実はMemeはただの面白コメントや画像ではなく、Memeを使ったビジネスが出来ている。インフルエンサーやMemeアカウント、Memeを使ったソーシャルコマース、そしてMemeマーケティングを使ってユーザー獲得をする会社まで出てきている。

最近話題になった次世代SNSのClubhouseもまさにこのMemeマーケティングで伸びて、その影響で6月末にアメリカテック業界で騒然となった👁👄👁現象もMemeを使ってバズった。そして、今ではMemeをベースに新しい機能を作るスタートアップもいる。

Memeを理解するのは若手世代、特にGen Z世代を理解すること。このMemeの素晴らしさ、そしてMemeが生んだ様々なスタートアップや事業を紹介していきます!

Memeとは?

「Meme」と言う言葉を聞くと、皆さん、大体この様な画像を思いつくと思います。

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引用:Reddit

Memeとは「文化内に人から人へ広がるアイデア・行動・スタイル」と、かなり広く定義付されている。そもそも「Meme」という言葉を考えたのは進化生物学者・動物行動学者で有名なリチャード・ドーキンスさん。ドーキンスは1976に書いた本の「The Selfish Gene」でギリシャ語をベースにまず考えたのは「Mimeme」だったが、「Gene」(遺伝子)と似た響きの言葉を作りたかったため、Mimemeを短縮して「Meme」と名付けた。しかもMemeはフランス語の「même」(記憶)と近いことから、ドーキンスはMemeにしたらしい。

もちろんドーキンスはReddit、Twitter、TikTokを知らずにこの言葉を考えたため、まさかこれだけ主流になるとは思ってなかっただろう。今ではアメリカ中、どこに行ってもMemeが会話の中心に入ってくることが多い。

Memeが人気になる理由

Memeが人気なのはバイラル化する要素がいっぱい入っているから。大体のMemeは面白く、共感できて、ポップカルチャーの瞬間を使っているので分かりやすく、そしてビジュアルなので一発で分かるもの。「This is fine」のMemeはまさに見るだけで自分でもこう言う状況に出会ったと共感できて、それがすぐに分かるからこそインサイダー感、インサイドジョーク的な感じで特別に感じる。

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引用:New York Times

さらに、カスタマイズが簡単なのも重要。誰でもこの画像をとって、少しテキストを加えるだけで自分に合ったMemeを作れる。

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引用:Kapwing

Memeが生まれる瞬間
どのタイミングにMemeが生まれるかと言うと、大体はポップカルチャー(映画、ドラマ、スポーツ、ニュース)などで特に面白かった・印象的だった瞬間をとっている。

例えばバスケ選手のマイケル・ジョーダンが殿堂入りした時のスピーチ中に、号泣したが、その時の写真がこちら:

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引用:Wikipedia

この写真が撮られたのは2009年で、2012年ぐらいからMeme化したもの。今だとこんな風に使われている。

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引用:Buzzfeed

敗北感の瞬間、特にアスリートとかに使われがちです。以下はアメフトのNew England Patriotsがスーパーボールを負けた時のMeme。

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引用:Buzzfeed

Memeはポジティブな形でも使われています。

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引用:Make a Meme

Memeは人気すぎて、イギリスの公共放送局のBBCも過去10年のトップMemeをリスト化していた。

そしてこのMeme文化を加速させたのはMemeやコンテンツ共有を専門とする会社。

Meme用の会社・ツール

Meme文化を加速させているのは、なんとなく四つの種類の会社と考えています。

プラットフォーム:TikTok、Twitter、Facebook、Instagramなど多くのユーザーがいて、Memeを共有できる場所
Meme作成ツール:まず簡単に作れないとそもそも共有されないし、探せない
Meme検索ツール:共有するためには、Memeを見つけないといけない
次世代Memeツール:Memeをパーソナライズなどが可能になっている

プラットフォームは有名な会社が多いので、一旦飛ばして、残り三つの種類の会社について解説させていただきます。

Meme作成ツール
人気なMemeが出てきたらみんなコピペしたりすることは出来るが、まずはMemeを作らなければいけない。昔だとパソコン内のソフトウェア(Microsoft Paint、Adobe Photoshop、Adobe Illustrator、Microsoft Powerpoint、Keynote)などを皆さん利用していたのが、今だとオンラインツールでGiphy、Tenor、Figma、Canva、Kapwingなど、多くのツールが存在する。

Kapwingは特に注力をしていて、簡単に作れる様にMemeのテンプレを用意している。

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引用:Kapwing

そしてスクロールすると、今流行っているMemeが表示され、そのMemeをクリックするとカスタマイズできる様になっています。

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引用:Kapwing

記事のはじめに紹介した「This if Fine」のMemeも、Kapwingだと簡単にカスタマイズが出来る。例えば、こちらは私が1分もかからずに作ったThis is FineのMeme。

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そしてそもそもの画像は一般のユーザーが映画・テレビ・CM・コンテンツからスクショをとってアップロードしているものもあれば、GiphyやTenorみたいにチーム内で共有されやすいシーンを見つけてアップロードするスタッフもいる。これによって、どんどん多種類のMemeが生まれる。そしてMemeは文化内の出来事に応じて変わるので、新しいイベントが起こると新しいMemeが作られる。そのMemeが広がり、人気度もしくはマネタイズで味をしめたユーザー・企業はさらにMemeを作り、周りのユーザーも「そんなMemeなんか私でも作れる!」と思うため、作る人が増える。このサイクルがどんどん加速して、今に至っている。

個人的にKapwingは簡単な動画編集やGIF作成などに使っています!かなり便利なツールなので、是非皆さんも使ってみてください。

Meme/Gif検索
Meme作成するのは簡単かもしれなく、共有できるプラットフォームがあっても、自分が欲しいMemeを探すツールがないと共有できない。それを解決するためにTenor、Giphy、Gfycatなどが生まれました。

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引用:Giphy

Giphy、Tenor、Gfycatはプラットフォームと連携して検索を簡単にするサービス。例えばFacebook上でGIFを検索すると、Giphyのプラットフォームを活用している。

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引用:Facebook Messenger

そしてこの大きなGIF/Meme検索エンジンは大手テック企業が買収することが多い。TenorはGoogleに買収され、2020年5月にFacebookがGiphyを$400Mで買収。

上記記事に記載した通り、Giphyを使う人は多く(DAUが7億人)、1日で100億個以上のGIFが共有されている。多少はマネタイズしていたものの、FacebookがGiphyを買収した大きな理由はMemeがユーザーの表現方法とわかっているため、そこのデータが欲しかったと思われてます。

Giphy、Tenor、Gfycat以外で使われているGIF/Meme検索サイトはImgur。

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引用:Imgur

Imgurは特にミレニアル世代の男性に人気で、Imgurのユーザーの74%は35歳以下。Gen Zや若手層の調査をするZebraIQによると、Imgurユーザーの17%は毎週10時間以上Imgurサイトに滞在して、毎月2.5億人にリーチしている。

次世代Memeツール
最近のMeme専用のスタートアップを見ると、よりパーソナライズされてたり、面白い技術を組み込んだものが多い。その中でも面白い事例はMorphinと言うアプリで、ディープフェイク技術を使って、誰でもMemeになれるようにしている。

例えば以下スターウォーズのテレビ番組「マンダロリアン」からのGIF。

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引用:WiffleGif

これをMorphinで変換すると、こんなことが出来る。

iOS のファイル

引用:Morphin

実際の使い方は以下動画を見てください。

逆に、Morphinと似ているが、TikTokに寄せたものだとSwayと言うアプリも人気になった。TikTokでは多くのダンス動画があるので、Swayは簡単に上手くダンスしているように見えるアプリ。

何故Gen ZはMemeが好きなのか?

ミレニアル世代がインターネット世代であれば、Gen Zはスマホ世代。ミレニアル世代はBefore Internet時代も知っているが、Gen Zは完全にAfter Internet世代で、多くのGen Zは10歳にはスマホを持ち始めている。そのため、アメリカのミレニアル世代の多くはAIMやMSNなどパソコンでのメッセンジャーに慣れていたのと変わり、ミレニアル世代はスマホでクイックなコンテンツ消費とコミュニケーションに慣れている。

SnapchatやTikTokを使うGen Zたちはどの世代よりも早くコンテンツを作り、消費し、共有し、そして飽きる。だからこそMemeと言う「今の文化」に最も合っている世代でもある。今日流行っている話題は明日は流行ってない。これは以前も記事にて解説しましたが、Gen ZはInstagramやTikTokなどで過去の動画・画像をアーカイブする傾向がある。これは「今の自分」だけを表現したいからで、これもまさにMeme文化にフィットしている。

Instagramがミレニアル世代の最も使われているツールで、ミレニアル世代はこの「インスタ映え」文化で生きてきた。何でも美しく見えて、ブランドやコンテンツもカッコいい・美しいものが欲しがる。Gen Zも一部似ている部分があるが、どちらかと言うともっと砕けた美しさ、いわゆる完璧ではないものを求めている。Memeもまさにラフに作られていることから、Gen Zにぴったりなコンテンツフォーマット。

TikTokは他のプラットフォームと比較して一つの動画がバイラル化する可能性が高いので、Memeアカウトにとって相性の良いプラットフォームである。

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引用:New York Times

Memeから生まれる新しいビジネス

スタートアップ以外にも、Meme文化を見ているGen Zは色んなビジネスを立ち上げている。その中でも、MemeとTikTokが生む瞬時のソーシャルコマースとインフルエンサービジネスの二つがメインとなる。

インフルエンサー/Memeアカウント
まずは大体どのSNSプラットフォームでも生まれるインフルエンサービジネス。大体Instagramでみんなスタートして、最近だとTikTokにも広がっている。これは何かと言うと、個人がInstagram/TikTok/TwitterでMeme専用のアカウントを出して、そこでひたすらMemeを出し続ける。

その一例がNew York Times記者のTaylor Lorenzさんが取り上げたRowan Winchさん。数年前からのルーチンでRowanさんは朝6時に起きてからすぐにiPhoneでInstagram上で共有できるMeme(バイラル動画や写真)を探す。学校に行く途中のバスも、学校中の休み時間も、ひたすら投稿し続ける毎日。

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引用:New York Times

彼の目標は1日100回の投稿。家に帰ってもずっとInstagram上に住んでいるRowan。彼の一番人気アカウント「Zuccccccccccc」は120万人のフォロワーが集まっている。時間を費やすほどフォロワーは増えるが、逆に休みを取ると成長が止まってしまう。

インターネット上で投稿をしているほとんどの若手層は名誉やお金を求めてなく、「影響力」を求めている。Rowanも1ヶ月で最高100万円ぐらい儲かったことはあるが、そこがポイントじゃないと。影響力が今のソーシャル上での通貨になっている。

若いうちに「影響力」通貨を費やすと何でも取得できるとインターネット時代の子供たちは思っている。大学から推薦枠で入ってくれないかと声がかかったり、面白い仕事やインターン機会も来る。友達の中での立ち位置、名誉、お金もそれで手にすることができる一番の通貨。

RowanさんみたいなMemeブランドはInstagram上でDMを受けて、毎日10個ぐらいの広告を何かしらの形で流して、マネタイズしている。

そして、最近だと有名MemeブランドがTikTokに入り始めて、すぐに何百万人とフォロワーを獲得して、TikTok上でのインフルエンサーを超えている。Memerは小さいメディア企業のように運用していて、今はやっている動画、イメージ、ジョークなどを共有してフォロワー数を伸ばして、そのフォロワーに対してグッズや広告を出してマネタイズしている。

TikTokは他のプラットフォームと比較して一つの動画がバイラル化する可能性が高いので、Memeアカウントにとって相性の良いプラットフォームである。

Memeアカウントは過去にフォロワー数を伸ばすために宜しくない行動をとっていたことがある。TikTokでもフォローしてくれたらフォロー返すとかやっている。

TwitterやInstagramもMemeアカウントを消去したこともあるが、TikTokはかなりMemeアカウントと協力的らしい。ちゃんとTikTok従業員がYouTubeチャネルを付け加えてくれたり、ユーザー名を取得するのを手伝ったり、いろんなサポートをしてくれている。

そして直近だと、個人でMemeの投稿をしている人たちがフォロワーを集めて、カルト化し始めている。こちらも以前「TikTokカルト戦争!?急上昇中アプリStep ChickensとTikTokのカルトトレンドについて」記事で解説しましたが、MemeのエキスパートなGen Zはいずれカルト化することがあり、その代表例が記事でも解説したStep Chickens。

ソーシャルコマース
以前の「米国SNSプラットフォームの最新情報とZ世代が新しい場所を求める理由」記事で解説したOK Boomerと言う年上世代の呼び方がMeme化され、それが流行り出したと共に「OK Boomer」と名前が入ったグッズがかなり売れた。OK Boomer以外でもこのMemeからコマースと言う流れが続いている。

まずは以前紹介した「マンダロリアン」の話だが、その中で人気になったのが「Baby Yoda」とインターネットに名付けられたキャラクター。

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引用:Metro

このBaby Yodaキャラクターが人気すぎて、すぐにBaby Yodaが入っているシーンやBaby YodaのことについてMemeが作られた。

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引用:Tetsuro Miyatake Twitter

「マンダロリアン」の1話目が出た24時間以内に、Etsyではこのような形でBaby Yodaグッズがいっぱい出ていた。

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引用:Etsy

そしてDisneyも少し遅れてだが、Baby Yodaのグッズを出し始めた。

そしてキャラクター以外のMemeからコマース化の事例もある。コロナでかなり人気になったZoomだが、アメリカでは多くの教育機関がZoomを使ってオンライン授業を始めた。アメリカの大学の学費は私立か公立、そして公立だとその州に住んでいるかでかなり変わるが、大体学費だけの平均レンジは1年で$25,000(約260万円)から$51,000(約550万円)と言われている。例えば2019年のハーバード大学では学費だけで$47,730(約510万円)、寮費で追加で$17,682(約190万円)、そして教科書やその他コストを集めると年間で$78,200(約8,400万円)かかる。

この多大なるコストを考えると、Zoom上でオンライン授業をすることに対して批判が出てくるのは間違いない。その中で、アメリカ中の生徒内でジョークになったのが「みんな違う学費を払っているけど同じ学校:Zoom Universityに行っている」と笑いあいながら話していた。

@benfurer

What the college you go to says about you 2020 edition. Please watch the whole thing!!!! #safehands #coronavirus #covidー19 #online #college

♬ Funky Town - 70s Hits

そこで生まれたのがZoom Universityのグッズ。AmazonRedBubbleで色んなグッズが出て、ついにそれ専用のZoom University Bookstoreが出来た。

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引用:Zoom University Bookstore

ロゴもハーバードや多くの大学のロゴっぽいのが分かる。

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引用:WikipediaZoom University Bookstore

ちなみに、何故「Bookstore」と言う名前になっている理由とは、アメリカの大学では基本的にキャンパス内に「Bookstore」(本屋さん)があり、そこでは教科書意外に大学のグッズなどを購入できる。それにかけてグッズを買える「Zoom University Bookstore」と名付けている。

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引用:Flickr

そして以前記事にしたStepchickensもグッズ化してマネタイズしている。

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引用:Step Chickens Shop

VC x Meme

VC業界では、VCが着る服装がMeme化した。インターネット(特にTwitter)で多くのテックVCがパタゴニアのベストとAllbirdsやRothy’sを履いているのをバカにした。実際に、多くのVCはパタゴニアのベストを着ている。

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引用:Business Insider

これをMeme化したのがVC Starter Kitと言うサイト。VCの定番アイテムを揃って、一括で購入できるようにした。

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引用:VC Starter Kit

実は、このVC Starter KitをOff TopicではMeme化したことがある。Netflixについて解説したOff TopicのポッドキャストでNetflixでの人気番組「Stranger Things」のイントロ動画のパロディーを作った。当時は前職のVCだったので、動画中にVC Starter Kitをメンションしている。

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フル動画(1分)を見たい方は以下ツイートにてご覧ください↓

そして、そこからVC Starter Kitと言うVC業界・スタートアップ業界についてのMemeアカウントがTwitterも生まれた。

このVC Starter Kitもポップカルチャーな瞬間などを上手く活用して言いたいことを表現している。

それ以外にVCをバカにするVC Bragsアカウントも2020年2月だけでフォロワーが3倍になった。

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引用:Surya Twitter

Memeから生まれたVC!?
このMeme文化を完全に受け入れたのはShrug Capitalと言うマイクロVC。「Shrug」とは肩をすくめるような動作、ジェスチャーです。この動作は「自分は知らない」「自分は関係ないよ」といった意味合い。よって、Shrug CapitalのNiv Drorさんは”¯\_(ツ)_/¯”の絵文字をロゴに使っている。

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引用:YouTube

Nivさんによると、そもそもShrug Capitalは冗談から始まった。Nivさんがある日、こんなツイートをした:

その5ヶ月後にShrugを立ち上げた。

ShrugではAndreessen HorowitzやFIrst Roundみたいに長文コンテンツとVC Starter KitやVCBragsみたいなMemeアカウントの間、若干Memeよりの新しいVC。ShrugのTwitterやグッズを見ると、まさにMemeアカウントに近いものを感じる。

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引用:Alex Danco Substack

最近だとMemeアカウントとコラボもしている。

その影響なのか、最近だとMemeを使って情報共有するVCも現れている。

VCは今後若手層にリーチするために、様々なコンテンツフォーマットを試すのは間違いない。

テック業界でのMemeマーケティング

そして、このMeme文化を最近上手く起用しているのは企業で、Memeマーケティングを行ってサービスを成長させている会社が多い。

特にテック業界では多いが、成長戦略でMemeを活用するサービス・ブランドが増えている。

Social CapitalのChamath Palihapitiyaさんによると、アメリカのスタートアップの調達した40%の出資額はGoogle、Facebook、Amazonに行く。今ではアプリ、サービス、ブランドが異常に増えている中で、ユーザー獲得がどんどん厳しくなっている状況。この課題を解決できるのがMeme。

プロダクトが良い前提に話すと、ユーザー獲得をこの時代にするには口コミをしやすい、バイラル化できる、インサイダー感がある方法が必要。そこに当てはまるのがMeme。Memeは共有しやすく、さらにそのスタートアップに関してのMemeであれば、インサイダー感を作れるので、そのコミュニティに入っている証拠とプライドになる。しかも簡単にリミックス・カスタマイズできるので、自分なりにプロダクト体験を語れるフォーマット。そしてMemeを活用され広がると、バイラル化して、そのスタートアップ・サービスに対しての興味度がどんどん上がる。

Initialized CapitalのGarry TanもMemeが強いユーザー獲得戦略と認めている。

デザインツールのFigmaだと非公式のMemeアカウントがTwitterで出ていて、Figma好きな人たちがそこでFigmaについての投稿をしている。

去年だとSuperhumanがMeme文化に乗っ取ったスタートアップ。

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引用:Mehtaphysical

そして2020年4月〜5月の間は$10M調達した音声SNSのClubhouse。こちらはTestFlightで招待制になっていて、トップVCやテック起業家が入ってたことから、みんな入りたがっていた。

こちら以前記事にもまとめましたが、Clubhouseは上手くMemeなどで拡散させて、一部のユーザーにしかアクセスを与えない、そしてその中では一般の人たちも入っていることから、みんなFOMO(Fear Of Missing Out、取り残されることへの恐れ)の感情をもたらせて人気になった。

Superhuman、HEY、ClubhouseなどのVC Twitterを騒がすスタートアップ、特にFOMOを作り出す事前登録、いわゆる限られた人にしかアクセスできないアプリとこのMemeマーケティングを組み合わせたのが👁👄👁現象。

アメリカのテック業界、特にVC業界に関係がある人は2020年6月26日(金)に👁👄👁が含まれた投稿を見ない人はいなかった。そこで、👁👄👁用のLPが出て、Product Huntにまで載った。

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引用:Product Hunt

そこにはメール登録しか要求してなく、Twitter上ではアクセスを持っていて、Clubhouseよりすごい音声SNSと言う人が出てきた。

中にはアプリの画面を「リーク」する人まで。

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引用:Josh Constine Substack

👁👄👁に関わっている人はTwitterの紹介文面で「👁👄👁」を入れたり、LinkedInを変える人まで出た。

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引用:Fiona Twitter

そして何を聞いても、大体の回答が「It is what it is」(しょうがない、仕方がない)としか返答がない。

👁👄👁の関係者は、どんどん以下のようなMemeが溢れた動画を出し始めて、一気に👁👄👁の検索が増えるようになった。

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引用:Google

この広がりを見たVCは焦り出した。この焦りもClubhouseと似たように、Meme化された。

そして以前出したSuperhumanのようなMemeも出てきた。

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引用:Parthi Twitter

そして、こちらの👁👄👁現象をまとめた日本語の記事が語るように、プロダクトがあるように見せたのがかなりな重要なポイント。例えばアプリの利用時間を見せたこと。

さらに、招待機能がちゃんとある風に見せたスクリーンショットも。

そして、恐らく最も有効だったのが、色んなSNSのコードを見て新しい機能をツイートするJane Manchun Wongさんが👁👄👁についてツイートしたこと。

👁👄👁のピッチ資料も出回ってたことになってた。

そして、Twitterでバズり始めたと同時に、数名が数社のチャリティーに寄付をしてレシートを👁👄👁にDMすれば、TestFlightの事前登録リストの一番前に行けるとツイートし始めた。

実態としてはプロダクトは存在しない。何が起きたかと言うと、数名の友達が木曜日の夜にTikTokのMemeの👁👄👁について話し合ってた時に、どんどん話しているグループが増えて、ついに60人ぐらい揃った。せっかく60人も集まったので、何かやりたいと思い、「👁👄👁」をTwitterプロフィールに追記して、👁👄👁.fmと言うサイトを立ち上げた。

サイトが最初からバズり始めて、Discordグループでチャットしてた人たちは今後どうするかを議論し始めて、全員この人気度を社会貢献に繋げたいと思い、特に今現在話題になっている黒人に対しての制度化された人種差別について何かしたいと考えた。よって、👁👄👁が要求した寄付とはBlack Lives Matter関連のチャリティー。

さらに、👁👄👁の目的を公表する前に、一部の人たちに👁👄👁のオンライン店舗へアクセス出来て、そこでグッズの購入が出来た。購入したお金はBlack Lives Matterへ寄付されるとサイトに記載されてた。

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引用:👁👄👁店舗スクリーンショット

結果、2万以上のメールアドレスの登録、1.1万人以上のTwitterフォロワー、そして$200K以上の寄付金を集められた。この悪戯っぽい現象をどう捉えるかは人によってそれぞれだったが、これだけ36時間で存在しないアプリを盛り上げられたのはすごいこと。しかもその盛り上がりを社会問題の解決のために誘導させた。これはインターネットの本来の活用方法でもあるかもしれない。個人的には、👁👄👁プロジェクトに係った60人は素晴らしいと思うし、個人的に購入した👁👄👁グッズをもらえるのが楽しみでしかない。

このMemeマーケティングがC向けアプリでしか起こらないと思うかもしれないが、B向けスタートアップもMeme文化を取り入れるはず。何故かと言うと、Gen Z世代がようやく大学を卒業し始めていて、社会人・起業家になり始めているから。

例えば、残念ながらシャットダウンしてしまったShopify競合のElliot。彼らのローンチ動画は過去B向けサービスで見たことがない、Memeだらけの動画だった。

C向けで流行ったことが大体3年遅れてB向けスタートアップに来る傾向があると考えると、アメリカにいるB向けサービスは早めに手を打ち始めても良いかもしれない。

ブランドがMeme文化を理解しなければいけない理由

インターネット上のMeme文化はミレニアル世代から始まったかもしれないが、今だとGen Zが圧倒的なスピードで加速している。今後アメリカでMeme文化を活用したマーケティングをやっていないブランドは「古い」と呼ばれる。今では最も年上のGen Zは25歳になった。これから、Gen Zは経済、ポップカルチャー、社会を変えていく。アメリカではGen Z世代が最も多い人口なので、必ず気にしなければいけない層。

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引用:Statista

Gen Zの世代は世の中がSNSで繋がっている前提で生きている。そして、今まで以上に危ない世の中に生きていると言うことを理解している。特にアメリカでは、ここ数年で学校での発砲事件の増加、より別れた政治環境の中でコロナ含めてなんでも政治化される世界になった。それ以外にも環境問題、差別問題、様々な社会問題を解決しない大人を見届けている。そして、それが怒り・フラストレーションに変わり、Gen Z世代が自ら解決しなければいけないことを理解し始めている。

今回の👁👄👁現象も同じ。警察の軍事化、壊れた社会システムを見ている中、テック企業のほとんどはClubhouseやHEYなど社会問題に対してのソリューションを提供してなさそうに見える。Clubhouseでは実際に黒人の差別問題の話や解決方法など話しているが、結局そこの会話に限られた人しか入れないので、Gen ZはClubhouseを社会的なソリューションと今は見なさない。逆にTikTokは今回のBlack Lives Matterでの情報共有と警察の暴力を暴くツールとなった。

Gen Zはこのような問題と対決しながら、周りの世の中より速いスピードで生きている。今日流行るものは明日には変わっている。この短期スパンでの流行がTikTokやSnapの人気に繋がる。そして、Memeも同じくそのスピードに追いつけるコンテンツフォーマット。ブランドとして、Memeマーケティング、Memeの活用とは今・未来の消費者であるGen Z顧客と同じスピードに乗ること。そのスピードに乗らない限り、いつでも「遅い・古い」ブランドと定義づけされる。

ここに追いつくのはかなり大変。VC側も必死に追いつこうとしていて、最近だとTikTokを出すVCも増えている。

今だと数十人の力で一つの業界を泳がすことが出来るのがGen Zの力。バイラル化の知識、Memeの作成、プラットフォームの理解、ネットワークマッピング、データ活用、そしてCanva、TikTok、Google Docs、Carrd、Kapwingなどコード無しツールを使いこなせる世代。将来のリーダー・起業家たちは今まで以上にスピードを持って世の中を変えていく。今後ビジネスで生き残るには、このMeme文化を理解し、今の流れを受け入れ、そして同じスピードで動ける準備をすること。

最近では、美術館もTikTok・Meme化し始めている。イタリアのウフィツィ美術館がアートをMeme化している。以下は有名な「メデューサ」作品をコロナと対決しているTikTok。

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引用:Insider

今世界では11美術館がTikTokアカウントを持っていて、展示品をTikTok化しているのが素晴らしい。まさにこのMeme文化を取り入れている。

@uffizigalleries

Save the date! #live @martinasocrate

♬ 4AM - BLVKSHP

アメリカの大統領選挙でもMemeを使って若手層にリーチしている人たちもいる。TikTok上で政治の話をする若手層がすごい増えていて、今ではワシントンDCで政治家のスタッフが匿名でMemeアカウントまで作っている。

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引用:Roll Call

最近だとトランプを支持する若手層がTikTok動画を多く出しているのも見かける。政治や社会問題の話をするにも、全てMemeフォーマットで語っているのは実に過去見たことなかった現象。

最近だとCMO(Chief Meme Officer)も出てきているらしい。。。

MemeからVibe Check:新しいSNS「Trash」

このMemeから生まれた言葉が「Vibe Check」。この言葉を最初に言ったのはデザイン会社Parent Company創業者のUmruさん。

この「Vibe Check」とは、新しい「最近どう?」と言う意味合いがある。人の今の気持ちや感情を表すための言葉。これをMeme化したのがコメディアンのDaniel Spencerさんで、彼はTikTok動画を通して、人の「Vibe Check」、いわゆる「イケているか」をチェックしている。

Daniel Spencerさんから始まり、2020年の春あたりから多くのユーザーがこのVibe CheckのTikTok動画を出し始めていた。

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引用:Hannah Donovan Medium

このMemeを一つのSNS機能として入れたのがTRASHと言うアプリ。TRASHはAIや機械学習を活用して自動動画編集を行うアプリで、最近ではSnapのアクセラレータープログラムに参加。そこで新しい「Vibe Check」機能を追加。

@danbanbam

Download The Vibe Check app by @thetrashapp now! Link in my bio. #vibecheck #vibes #vibe

♬ original sound - danbanbam

TRASHで作った動画をSnap Storyで共有する際に「Vibe Check」ステッカーを追加することが出来る。それを見た友達が「Pass」か「Fail」をスワイプで選べる。24時間後に結果が表示され、自分の動画がイケてるかどうかが分かる。

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引用:Hannah Donovan Medium

このウェブ版も作ったので、試してみたい方は以下リンクにて↓
(Pass = イケてる、Fail = イケてない)

TRASHアプリは元々からこのVibe Checkに凄く合った動画編集アプリ。色んな動画をとって、コラージュ的な感覚で一つにしていて、ストーリーではなく感情、いわゆる「Vibe」を伝えるのに向いているアプリ。

ここで、TRASHの話をする前に開示しなければいけないことは、私は前職でTRASHの投資担当だったこと。私がソーシングして、検討して、投資判断をしたので、かなりバイアスは入っているのは間違いない。ただ、TRASHがやっている「Vibe Check」自体は今のところ、誰もやっていない(今後Instagram、TikTok、Facebookがコピーしてもおかしくない)。

このTRASHのVibe Check機能は実際にどれだけ人気になるかは分からないが、このMemeをプロダクトの機能にするのはかなり面白いし、今後も他の会社もやっていきそう。今後もどんどん新しい感情表現のフォーマットが出ていく中で、TRASHが次に何をやるのかが楽しみ。

Off TopicがVibeであることを祈ってます(笑)。

最後に

最後に、個人的に好きなMemeを紹介したいと思います。VCのGarry Tanさんが人気アニメ番組「Ricky and Morty」からのシーンをスタートアップ起業家の人生に例えたが、まさにその通りな気がする。

ポッドキャストもおすすめです

Off Topicでは、米国を中心に最新テックニュースやスタートアップ、ビジネス情報をゆるーく深堀りしながらご紹介する番組です。

Spotifyからも聞くことができます。

Written by Tetsuro (@tmiyatake1) | Edited by Miki (@mikirepo)

引用:

https://techcrunch.com/2020/06/30/what-eye-mouth-eye-fm-means-for-silicon-valley/
https://medium.com/thetrashapp/vibe-check-3e3e6c3da86c
https://constine.substack.com/p/vibe-check-defining-social-media
https://notboring.substack.com/p/the-will-ferrell-effect


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