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FacebookがGiphyを買収する理由

自己紹介

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。これまで日本のVCで米国を拠点にキャピタリストとして働いてきて、現在は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。Off Topicでは、次世代SNSや最新テックニュースの解説をしているポッドキャストもやってます。まだ購読されてない方はチェックしてみてください!

はじめに

FacebookがGiphyを買収し、Instagramチームの一部として傘下に入ると発表があった。買収額は$400Mで、VCコミュニティでは話題になっている。

今回はFacebook(以下FB)がGiphyをどう言う風に評価して、何故$400M払ったのかを解説します。

TLDR

・Facebookにとってエンゲージメントを高めるツール
・Onavo以来のC向けアプリのトラッキングツールになる
・アプリだけではなく、ユーザーの会話データへ覗き見が可能に
・Snapchatへの対抗戦略

Giphyの実績

まず、Giphyの数字から見てみよう:
・DAU:7億人
・GIF配信数/1日:100億個
・前回調達時の時価総額:$600M
・提携プラットフォーム:FB、Instagram、Twitter、TikTok、Slack, WhatsAppなど
引用:Giphy

あとあまり知られてないかもしれないが、Giphyは去年ぐらいからマネタイズを始めていた。実際の数字は公開できませんが、広告モデルを試していました。

買収理由①:Facebookにとってエンゲージメントを高めるツールだった

プレスリリースでも出ましたが、Giphyの利用の半分はFacebook傘下のアプリ、そしてその半分(全体の25%)はInstagramからだった。これを考えると、Facebookにとっては重要なエンゲージメントツールである。

Facebook傘下内を跨ぐコンテンツ共有
FB CEOのMarkさんは最近よりプライベートグループ化する方向に向けて走っているのは明らか。そしてWhatsApp、InstagramなどFB本体のアプリのユーザーエンゲージメントを奪っていくアプリを見ると、FB傘下でのメッセージをしやすくする目的がある。

メッセージする際には多くのユーザーがフィルター、ステッカー、GIFを使う。フィルターやステッカーはFB内で開発してたが、GIFはやってなかったので、Giphyを買うのはわかる。

買収理由②:Onavo以来のC向けアプリのトラッキングツールとしての活用

FBは2013年に$200MでOnavoと言うモバイルアナリティックスアプリを買収した。OnavoはFBではスパイアプリとして起用され、エンゲージメントが高く、急成長しているアプリをモニタリング・トラッキングできるようにしてた。

FBはOnavoのデータをベースにWhatsAppを買収したり、Snapchatへ買収オファーをしていた。以下画像はFB社内で実際に使われた他社アプリとの比較するグラフである。

画像1

引用:英国議会資料

このグラフを見て、SnapchatやWhatsAppが伸びていることが分かり、FBは買収オファーを出した。WhatsAppの場合は、明らかにFacebookと比較されていた。

画像2

引用:英国議会資料

Onavoはこのようにデータ収集のために使われていて、それが後に公開されたので様々な調査などが入り、2019年にはシャットダウンされた。

GiphyはOnavoではないが、色んなアプリと連携している
GiphyはTwitter、Snapchat、Slack、Reddit、TikTok、BumbleなどFacebookの競合と連携している。そして今回のプレスリリースではGiphyは第3社との連携は止めずに、そのままアクセスを許すと発言している。

これは恐らく競合からのデータ収集ツールとして使われる。

トレンド中のGIFの活用法
他社プラットフォームであるGIFのコンテンツタイプが人気になり始めていれば、そのコンテンツタイプのGIFコレクションを作り、Instagramで出せる。

これでOnavoと同じようにエンゲージメントの数字やユーザー数がGiphyで分かるし、なおかつコンテンツのトレンドが分かる。

買収理由③:アプリだけではなく、ユーザーの会話データへ覗き見が可能に

メッセンジャー内の会話の内容はFBは見てはいけないし、見れたとしてもそれを広告のデータポイントとして使えない。ただ、Giphyのデータを取得出来れば、ユーザーの会話は見れてなくても、何のGIFを検索しているかが分かる。これによって今考えていること、感じていることのデータが取れる。

これは過去にFBとしては取りにくかったデータ。そしてFBとしてはマネタイズ出来るデータである。

買収理由④:Snapchatへの対抗戦略!?

以前Noteでも書いたSnapchatの戦略ですが、FBがかなり意識していそう。

Giphyの買収はSnapchatを倒す二つの要素が含まれている:
・Stories API連携
・FB版Bitmojiのフル活用法(デジタルアバター)

GiphyのAPI連携インフラをベースに、API連携できる機能を追加
SnapchatはSnapKitを持っていて、それでSnapchat上で作ったStoryを他社プラットフォームに流せる仕組みを作った。FBはGiphyのAPIの上にFB傘下アプリのStories APIを連携できるようにすれば、一気に自社コンテンツが他のプラットフォームにリーチすることになる。

他プラットフォームへリーチすると同時にBitmojiへ対抗する
FacebookはBitmojiの競合を最近リリースした。こちらも同じく他プラットフォームに出すときにGiphyのようなツールを活用できる。

そしてGiphyとFacebook Avatarを連携することによって、Giphyが連携している他プラットフォームで自分のFBアバターがGIFとして出たら、それを使う可能性が高くなる。

$400Mの買収とは良い数字なのか?

$400Mの買収と報道されているが、実態は$300M。残りの$100Mは従業員がFBに残るインセンティブ用のお金となっている(FB株、キャッシュなど)。公開された前回の調達ラウンドが$600Mと考えると、その半分とはかなり低く見える。。。

そして不思議なのは利用率は上がってたのにこの値段。2月から3月で利用率が65%アップ、3月から4月で13%上がっている。もちろんM&Aなので発表された大分前に決まっている可能性はありますが、コロナの影響で数字が上がっていたGiphy側は値段の再交渉をしなかったのが少し不思議。

結論

結論としてはFBはGiphyのエンゲージメントではなく、Giphyから取得できるデータとインフラ・リーチを買っているように見える。

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Written by Tetsuro | Edited by Miki


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