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スタートアップスタジオの課題とは?【Off Topic Ep179】

宮武徹郎と草野美木が、アメリカを中心とした最新テクノロジーやスタートアップビジネスの情報を、広く掘り下げながら紹介するPodcast『Off Topic』。このnoteでは、番組のエピソードからトピックをピックアップして再構成したものをお届けする。今回は「#179 今の時代に合ったスタートアップスタジオの在り方」。ユニコーン企業を輩出してきた「Sutter Hil Ventures」「Atomic」「Betaworks」を参考に、スタートアップスタジオのこれまで、現在、そして課題を踏まえて今後求められていくありかたを考察していく。


スタートアップスタジオとは?

スタートアップスタジオとは、事業アイデアとプロダクトを開発し、複数のスタートアップを同時並行的に立ち上げる組織だ。グローバルでは約400のスタートアップスタジオと、そこからスピンアウトした約1000社のスタートアップが存在するとされている。

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VCファンドやアクセラレーターとの大きな違いは、スタートアップスタジオ内部でアイデアをつくりあげたのちに会社を設立し、プロジェクトごとにCEOを採用する点である。起業家をEIR(Entrepreneur in Residence/客員起業家)として招いて、ともにアイデアを模索して共同で起業するケースもあれば、スタートアップスタジオがゼロイチの部分を担ったのちにCEOを採用して経営を任せるケースもある。後者の場合、スタートアップスタジオ側が一定期間経営を担ったのちにCEOを雇うこともある。CEO採用以降、スタートアップスタジオはインフラやエンジニアリング、営業、資本、調達ネットワークなど様々なリソースを提供してバックアップする。CEOには給与があるケースもあり、起業家やCEOにとってのリスクが低いといえる。とはいえ、CEO採用後もスタートアップスタジオが経営に介入する側面も強く、場合によってはCEOがリプレイスされることも起こり得る。

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「Sutter Hill」マイク・スパイザーの手法

スタートアップスタジオはいかにアイデアを考え抜くかがまず一番の重要なポイントになる。2018年にユニコーン入りを果たし、SaaS業界を代表するスタートアップとなったクラウドデータプラットフォームの「Snowflake」は、1964年に設立されたVCファンド「Sutter Hill Ventures」より設立された。同社のアプローチが興味深いのは、同社をリードするマイク・スパイザーが、設立したスタートアップに共同創業者として参画してアイデアや事業モデルを策定し、CEOを自身で約1年間務める点だ。その後、おおよそシリーズA、BラウンドでCEOの採用が行われる。マイク・スパイザーはCEOを退任した後は役員として残るだけになり、以降は営業や調達オペレーションを担当。開発プロダクトやチームの決定は採用されたCEOに一任される。

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