見出し画像

Off Topic 2020年のテーマ:Attention & Trust Economy

自己紹介

Off Topicでは、ポッドキャストインスタグラムも更新してます。まだ購読されてない方はチェックしてみてください。

はじめに

2020年最後の解説系記事となります。Off Topicのnoteを2020年1月から始め、もうすぐ1年記事を書くことになります。公開した記事は47記事(この記事を含めると48)、うち18記事は翻訳記事、28記事はオリジナル解説記事、1記事は謝罪記事。オリジナル記事ではリテール、YouTuber、ゲーム、デザイン、社会問題、SNS、メディアなど様々な領域について書いた。

画像15

単純に興味が持ったトピックについてだけ書いているように見える一方で、実は意図はありました。実は全ての記事は大きなテーマに繋がっていて、今回はその大きなテーマと2020年に書いた記事がどう関連しているかを解説していきたいと思います。

2020年のOff Topicオリジナル記事のテーマは「Attention & Trust Economy」。

コンテンツ、ブランド、会社、色んなものがインターネットやスマホの発展によって増えている中で、人の変わらないものは時間。今ではどの会社も人の時間をどれだけ取れるかによって認知され、サービスを利用され、マネタイズできるようになる。同時にどんな手を使っても人のアテンションを取りたい会社やサービスは悪質、嘘、派手な情報やコンテンツを流すようになった。この影響で「clickbait」するメディアや「フェイクニュース」みたいな現象が起こり、人はアテンションを奪われるのに恐怖感と疑いを感じ始めた。そのため、今ではアテンションを獲得するには「信頼」も同時に売らなければいけない。それで生まれるのがアテンションと信頼の経済、すなわち「Attention & Trust Economy」。

このAttention & Trust Economyを理解すると、今起きているビジネスとカルチャーシフト、そしてこれから重要になってくるZ世代にどうアピールできるかが分かる。

Off Topicの2020年まとめや、これから話すトピックでOff Topicが気になっているサービスを知りたい方は、以下アンケートを回答していただくとOff Topicから2020年まとめのプレゼン資料を送らさせていただきます!

Off Topicが解説するAttention & Trust Economy

Off TopicではこのAttention & Trust Economyの理解と勝ち筋を少しでもヒント付けるために、色んな記事を出してきた。このAttention & Trust Economyを証明するために7つのトピックについて話してきた。

その7つのトピックとは:
・D2Cification of Everything / なんでもD2C化
・Linear Commerce / メディア・SNS・ブランド融合化
・Creator Economy / クリエイターエコノミー
・Cult Brand Emergence / カルトブランドの重要性
・The Metaverse / メタバース:次のインターネット
・Next-Gen Social Media / 次世代SNSプラットフォーム
・Gen Z and Cultural Shifts / Z世代とカウンターカルチャー

もちろん書いた記事は複数のトピックをカバーするものもあるが、切り分けるのであれば以下のような図になる:

画像14

この7つのトピックを実は4つのパートに分けられる。

パート⓪:背景とビジネス変化の裏付け
これからのビジネスや社会の流れを知るためには、今の若手世代を知らなければいけない。2020年ではZ世代が好きなブランドや会社を紹介しながら、Z世代の思考や行動理由などを解説している。

・関連トピック:Gen Z and Cultural Shifts / Z世代とカウンターカルチャー

パート①:現代のビジネストレンド
D2Cやカルトブランドを作ることは新しい話ではない。特にここ数年の間では大手企業もD2C化したり、カルトブランドを作るための試行錯誤をかなり行っている。このパートでは今起きているトレンドについて話している。

・関連トピック:D2Cification of Everything / なんでもD2C化、Cult Brand Emergence / カルトブランドの重要性

パート②:次世代ビジネスの作り方
どの会社もD2C化しているが、次世代のブランドの作り方の戦略、いわゆるコンテンツファーストやクリエイターファーストに置いているブランドはまだ少ない。このパートでは今起き始めていること、そして次の1〜3年で主流になることについて解説してます。

・関連トピック:Linear Commerce / メディア・SNS・ブランド融合化、Creator Economy / クリエイターエコノミー

パート③:将来のビジネスの姿
最後に今のトレンドから出てきている影響で変わるSNSプラットフォーム、そして場合によっては10年〜30年後の未来、インターネットの次の大規模なインフラの進化について話します。

・関連トピック:Next-Gen Social Media / 次世代SNSプラットフォーム、The Metaverse / メタバース:次のインターネット

サマリー

結果としてこのAttention & Trust Economyは若手世代の考え方を理解するからこそ今の、そして今後のビジネス、マーケティング、ブランドトレンドが分かる。それを複数のパーツやトピックに分けて分かりやすく解説するために2020年は何本の記事も書いてきた。それを一つのAttention & Trust Economy図に表すと、以下のようになる。

画像15

上記が読みにくい場合は、以下リンクにてダウンロードください。

アテンションと信頼はアセットの価値としてどんどん上がってくる。それを理解すれば、会社の長期的戦略が変わる。

それでは、各トピックを軽く解説します。

Gen Z and Cultural Shifts / Z世代とカウンターカルチャー

アメリカではZ世代は他の世代と比べて最もダイバースであり、今現在27%の人口を占める世代。そして2026年には最も人口が多い世代となると言われている。

画像3

引用:Business Insider

Z世代の上の層は社会人になり始めた今、経済的影響力を及ぼす世代となってきた。インターネット世代と言われているミレニアル世代とは違って、Z世代はスマホ世代。どの世代よりもインターネットの中に溶け込んで、オンラインサービスやノーコードソフトウェアを使いこなし、新しいビジネスを作り出そうとしている。

そんなZ世代は常にスマホでコンテンツやブランドを見ていて、すぐにブランドを切り替える力を持っている。ブランドが約束を破った瞬間、ブランドビジョンと真逆なアクションを起こした瞬間にZ世代から信頼を失う。そんなZ世代を理解しなければ次の3年から10年間のビジネスへのインパクトが大きい。

そんなZ世代を理解するためにOff TopicではZ世代が好むMeme文化、ミレニアル世代が好む「インスタ美学」との違いで生まれたZ世代の「Domestic Cozy」文化、そしてZ世代がどの世代よりも高い意識を持つ社会問題(選挙、Black Lives Matterなど)について記事を公開した。

ここで一つZ世代で理解しなければいけないことは、Z世代が思うステータス・社会的地位の違い。昔はお金を持っていることがステータスになり、そのステータスの表現方法は高価なもの(例:Gucciのバッグ)を持つことで表していた。今はお金を持つことがステータスではなくなった。その理由はThe Real RealやthredUpなど二次流通プラットフォームが出てきたおかげで、誰でもGucciのバッグをある程度の値段で購入できるようになった。

画像4

引用:The Real Real

そうなると、お金ではなく、「アクセス」がステータスとなる。誰もアクセス出来ないレストランに入れるのか、限定商品へアクセス出来たのか、誰も入れないアプリ(Clubhouse)をダウンロード出来るのか、一般の人が知らない情報(環境問題)を知っているのか。そこにアクセス権を持っていない人はクールではなく、情報を知らないと分からず屋として見られる。Z世代の中で「sustainability」がキーワードになっているのは、もちろん一部の人間は実際に見て気にしているからでもあるが、多くの人はその情報を知るのがステータス、いわゆる学校で人気者になる一条件だからでもある。

さらにトレンドが速攻で変わるのに対応しなければいけない。TikTokでは毎週トレンドが変わるように、Z世代は今流行のダンス、音楽、TikTokスターを知らなければいけない。「OK Boomer」は誰も言わなくなったし、「Renegade」を踊る人はもういない。

そしてこの世代が憧れている人たちは今までの世代とは遥かに違う人たち。ハリウッドスター、俳優・女優を見ていた世代とは違って、今Z世代はYouTuberとTikTokスターに憧れている。

画像5

引用:Piper Sandler調査

アクセスがステータスになったり、Z世代が「blanding」しているD2C企業のデザインに呆れたり、インスタグラムからTikTokへ移行していること、社会問題に対しての意識の高さ、そして情報共有や憧れている人たちがクリエイターへ変わっていることを理解しない限り、この世代にリーチしてアピールが出来ない。Z世代が最もこのAttention & Trust Economyに浸透している世代であれば、この世代を理解することで将来ビジネスを加速させて拡大できる可能性がある。

そうするために、Off Topicでは以下記事を書きました:

関連記事

D2Cification of Everything / なんでもD2C化

「D2C」と聞くとほとんどの人がリテール業界を思い浮かぶが、D2Cはただのチャネルと戦略でしかなく、色んな業界に適応できる。ディズニーが今まで映画館やテレビを通してコンテンツを提供してたのをDisney+を通じて直接ユーザーに届けるのもD2Cの一例、そしてアメリカの政治家がテレビやSNS広告ではなく、TwitchでAmong Usをプレーしながら配信者に政治情報を語って寄附金を集めるのもD2C化の一例。

画像6

引用:The Verge

直接ユーザーと繋がり、その繋がりがあるからこそ今まで出来なかったことが可能になることをD2C化と言う。多くのリテールD2Cブランドはユーザーと直接繋がることによって、コスト削減だけではなく、ユーザーのフィードバックループを早めてプロダクト改善・開発をするようにしている。GlossierやAwayはまさにその事例。ディズニーはDisney+を通じて初めて個人レベルでユーザーがどのディズニーキャラクターが好きか知れることによって、キャラクター専用のクルーズや別の高いマージンビジネスをレコメンドしてマネタイズに繋げている。政治家のAOCはユーザーと直接ゲームをしたり話したりして、信頼性を高めようとしている。

それ以外に映画会社のA24やAirbnbみたいに、直接ユーザーと繋がり、コミュニティーを作ることによってマーケティング費用の削減へと繋がったり、業界のリーダーとしてイメージ付されやすくなる。Airbnbがいる旅行業界では今までGoogle検索が非常に重要だった。Airbnbの競合であるExpediaやBooking.comは2019年には$11BほどGoogle検索の広告にお金をかけた。Airbnbはコミュニティーへのリーチを強くしたため、3分の2のAirbnbユーザーは直接Airbnbサイトへ流入する。

このように、D2Cとはリテールブランドが多く見えがちでOff TopicでもよくリテールD2Cブランドについて語っているが、それ以外の業界のD2C化も進んでいる。そんなD2C化しているブランドから学べる戦略や事例を以下記事にて紹介しています。

関連記事

Cult Brand Emergence / カルトブランドの重要性

直接ユーザーと繋がるだけだと足りない。そこにはブランドアイデンティティーやビジョンに共感してもらわなければいけない。それを実行するためにどの会社もカルトブランド化が必要になっている。どのトップ企業も初期はニッチを支配してからメインストリーム(一般化)して、最終的にはライフスタイルを売り込むようになった。

画像7

Ralph Laurenが「時を遅らせた」ように、急成長や売上だけを重視するのではなく、ユーザーに圧倒的な価値、コミュニティー感、インサイダー感を感じさせることによって良い、世代を超えるブランドが生まれる。

Z世代が「アクセス」を求めている中で、ブランドはアクセスとアクセス権を持っている人たちに対しての価値をコントロールすることによって好かれるようになる。B2B企業でもRoamやSuperhumanがこれをしっかりやっている。Supremeがロゴ付きのレンガを$30で売って二次流通で$1,000で販売されることも、MSCHFが水入りのスニーカーを売った瞬間に完売するのもカルトブランドであるからこそ成り立っている。

画像8

引用:SAYS

そんなカルトブランドとしての事例としてStepchickens、MSCHF、Off Limits、そしてカルトブランドの作り方について知りたい方は以下記事をご覧ください。

関連記事

Linear Commerce / メディア・SNS・ブランド融合化

直接ユーザーにリーチする会社が増えると、よりユーザーの時間の取り合いの競争になる。この取り合いを勝ち取るためには面白いコンテンツやネタが必要となる。商品を試してもらうには何かしら引きつけなければいけない。それを最も出来るのがメディアやSNS。そしてそのSNSの活用、自社メディアの活用、そしてマネタイズするコマースが融合し始めて、新しいビジネスモデルやコンテンツフォーマットを作っている。

画像9

どの要素を組み合わせても何かしらのコミュニティ、いわゆるカルトブランドを作るための必須項目となる。だからこそ今はOnlyFansやPatreonなど課金型コミュニティーツールが流行っている。

今後の次世代ブランドはオーディエンス作りから始める。GlossierやBarstool Sportsが最も強い事例。コンテンツでファン作りを行い、そのアテンションと信頼を活用してマネタイズに持っていくモデルが最も自然。良いプロダクトを持っていても一からオーディエンスを作るのと、既にオーディエンスを持っていて商品を売り込む違いは大きい。

各業界の競争が激しくなるとともにこのLinear Commerceの概念はどんどん広がる。VC業界でもコンテンツ作りが必須になっている。B2B業界でも会社のコンテンツと従業員が出すコンテンツでファンを引き寄せる戦略を取っているRoamやFastがシード期で$100Mの時価総額を付けられているのはこのオーディエンス作りをしっかりしているから。

メディア企業がコマース領域、そしてEC企業やサービスを売っている会社がメディア事業を始める時代が来るのは間違いない。

そんなLinear Commerce事例や成長するための新しいプラットフォームの見つけ方などを理解するには、以下記事をご覧ください。

関連記事

Creator Economy / クリエイターエコノミー

ユーザーのアテンションと信頼を獲得するのが重要。2020年ではそのアテンションと信頼を最も得られているのはブランドではなく、クリエイター。Charli D’Amelio、David Dobrik、MrBeastはじめ、2020年は多くのクリエイターがフォロワーを増やし、そしてそのアテンションと信頼を活用してビジネス化し始めた年。

画像10

引用:Influencer Matchmaker

クリエイターはコンテンツ制作に特化した人たちで、良いコンテンツだけではなく、親しみやすい人格の持ち主たち。だからこそファンから信頼されるし、ほとんどのトップクリエイターはカルトブランド化出来ている。そんなクリエイターたちが次世代ブランド、そして最もD2C領域や他のサービスに対して競合になり得る存在でもある。

元々「インフルエンサー」と呼ばれていた人たちや業界はアメリカではかなり進化している。YouTube AdSenseやプロモーション案件だけでマネタイズするのではなく、自社商品やブランド作り、複数のプラットフォームへの移行、そしてスタートアップ投資などもするクリエイターが増えている。どちらかというと、「インフルエンサー」より「起業家」や「スタートアップ」と扱うべき。

大手ブランドもそれに気付き始めた。2020年ではマクドナルドやDunkin Donutsは大手クリエイター(Travis ScottとCharli D’Amelio)とコラボ商品を作り、大儲けしている。このチャンスを活かせるブランドがZ世代の心を掴めるようになる。

ローコード・ノーコードのソフトウェア発展のおかげで画像、動画、テキスト、ゲーム、アプリ、A/R・V/Rコンテンツ、サイト制作、ツールなど誰でもクリエイターになれる時代となった。そしてZ世代は自己表現やクリエイティビティーをどの世代よりも公開したい人たちが多い。そのため、会社としてクリエイターとコラボすることや、社内の従業員のクリエイター魂を自由にさせるのが重要で、ブランドの成長に繋がる。公共の場での成長は社内のクリエイターたちに任せるのがベスト。

そんなクリエイターエコノミーを支えるツールや実際成長しているクリエイターたちの裏情報を知りたい方は以下記事をご覧ください。a

関連記事

Next-Gen Social Media / 次世代SNSプラットフォーム

2020年はコロナの影響もあって、人のコミュニケーション方法が変わった。その中で加速したのがSNSの利用と、新しいSNSの登場。2020年はTikTokの爆発、そしてClubhouseやChalkなど音声SNSの登場、FortniteやRobloxのSNS化の年となった。

Z世代が求めているコンテンツや作りたいコンテンツはミレニアル世代とは大きく違う。そのため、今ではミレニアル世代が拡大させたInstagramからTikTokへ流れている。これはTikTokのアルゴリズムによって新しいクリエイターがバズることが出来る仕組みや、色んなニッチなコンテンツを受け入れる場所を求めていたZ世代がInstagramではそれが見つからなかったから。大体3〜5年スパンで新しいSNSが出てくる中、TikTokは明らかにアメリカではInstagramなどと並ぶ大きさになってきた。スタートアップ業界でもZ世代の起業家がサービスローンチする時にはTikTokで発表することが多くなってきた。

@joanna.shan

we been grindin😭 & matching is finally opennn— sign up at monetdating.com & meet some cool ppl on Monet!!! 🥳🎨 #tiktok #fyp #love #draw

♬ She Share Story (for Vlog) - 夕依

今Z世代ではInstagramとTikTok以外にSnapchat(日本だとZenly)、そして今後は音声SNSのClubhouseなどが出てくるのではないかと噂されている。実際にTwitterも音声スペースの開発を行っているので、音声領域が今後かなり注目されるのは間違いない。Airpodが2021年で1億台販売されると予想される中、常に何か聴ける状態になれば、音声SNSや音声メディアが広がるのは自然な考え。さらに子供の時からDiscordや音声だけを通して人とコミュニケーションするのに慣れているZ世代は仕事場にも同じことを求めるだろう。Slackが今Discordみたいな機能を付けているのは、Microsoft Teamsではなく、Z世代を捉えているDiscordを意識しているから。

画像11

引用:In Bed With Social Substack

Discordとともに伸びているのがゲーム領域。Discordを使ってFortniteやRobloxを友達と遊ぶ人が増える中、3Dのデジタル世界の世界に慣れていて、そこで新しい友達との出会いを望んでいる人が多い。コロナ前からこの流れになっていたが、FortniteやRobloxなどのゲームはスターバックスやモール、いわゆる友達と昔遊ぶ場所をリプレイスしている。

その変化に気づいているEpic Games、Microsoft、Robloxはゲームからソーシャルなプラットフォームへシフトさせている。Fortniteはシューティングゲームを遊ばなくても良い、色んなミニゲームを遊んだりTravis Scottのコンサートを体験できるスペースを用意したり、Minecraftではアメリカの大学の卒業式を実施したり、Robloxでは誕生日パーティーやLil Nas Xのコンサートを開催している。

今の各SNSプラットフォームの事情やClubhouseやTikTokに深掘りした情報を見たい方は以下記事をご覧ください。

関連記事

The Metaverse / メタバース:次のインターネット

2020年は色んなスタートアップニュースでキーワードが出た中で、「メタバース」が最も間違った形で使われたと思われる。インターネットの次なるインフラとされているメタバースは、1950年代から1990年代のインターネット前がインターネットを想像したと同じ状況である。それは何となくメタバースと言うコンセプトの概要やいくつかの特徴がわかるものの、実際のどう言う形で存在し、どう言う形で人が接するのかが分からない。

インターネットが想像される際にデジタルファイルやオンライン上でファイルの転送、リアルタイムコミュニケーションが実現すると言われていたが、誰も今のSNSの形、フェイクニュースの発展、そして新しいコンテンツフォーマットを想定していなかったはず。メタバースはReady Player Oneでも無ければ、Snapが作ろうとしているMirror Worldでもない。そもそもインターネットと同じように色んな会社が一緒になって作り上がるようなインフラや世界となるので、数社除いて「メタバース」を意識しているスタートアップは実は少ない。

場合によっては10年〜30年後にようやく実現するメタバースに投資できている会社はEpic Games、Facebook、Unity、Microsoft、Google、Snap、Roblox、そして後ほど説明するもう一社ぐらい。Robloxですら正直怪しい。次世代SNS候補としては将来的にメタバース候補者として上がる可能性はあるが、メタバースに必要な横断的プラットフォームではない。業界エキスパートの中でEpic Gamesが最もメタバースを意識していると言われているのはEpic GamesのUnreal Engineのマネタイズ方法と機能を見るとわかる。本当にメタバースの概念を信じなければ業界標準の30%のプラットフォーム費用を12%、場合によって7%まで落とす会社はいない。同時にFacebookも本気でUnityの買収をしようとしたことや、OcculusやVRに多額投資をしているのを考えると、FacebookのMark Zuckerburgさんも次の10年から100年のインターネットの進化を見ているはず。

以下はOff Topicが特に注目している会社:

Epic Games
Fortniteが最もメタバースに近いと言われている理由は、メタバース的要素がかなり多いから。色んな世界をブリッジできて、一社が全ての世界やパーツをコントロールしてなく、誰でも新しい世界やゲームを作れて、Fortnite内通貨が存在し、色んなIP(例:マーベルとDCコミックス)が一緒に存在しあって、プレーヤーは一つのアバターで全てを体験できる、マルチプラットフォームな遊び場。

画像12

引用:New Rising Media

ただ、理解しなければいけないのはFortniteはただの検証プラットフォームでしかないこと。Fortnite自体はメタバースにはならない。Epic GamesはFortniteの大量のトラフィックと人気を活用して、色んなコンテンツフォーマット(コンサート、映画、その他アクティビティー)を試して、デジタル世界だと何ができて何ができないかを試している。Epicの本当の強みはFortniteを支えるゲーム開発エンジンのUnreal Engineと顧客情報とソーシャルグラフを作れるEpic Games StoreとEpic Online Services。

Epicは誰でも新しい世界や体験を作り、それをどのハードウェアやプラットフォームでも体験できるようにしたい。その繋がりが一つのインフラで作られるほど、後に全てを一つのメタバースの下に繋ぎやすくなる。今現在、Epic Gamesはメタバースのインフラに最も近い会社である。

Roblox
Epic GamesのFortniteと似たような立場として見られるRobloxだが、Fortniteと比較すると人気急上昇中なのは圧倒的にRoblox。特に13歳以下の子供たちから絶大なる人気を誇るRobloxは賢く大人向けのデザインや制作も可能にしている。

RobloxもFortniteと違ってメインゲームはなく、完全クリエイター寄りになっていて、ゲーム内経済がFortnite以上に成り立っている。ただ、RobloxはRoblox上でしか作れないゲームエンジンを持っているため、クリエイターに限りが出てくる。Unreal EngineやUnityの良さは、色んなゲームプラットフォーム、そして最近だとそれ以外の領域でも体験を作れるツールとなっている。そのため、Roblox内でしか世界が発展しないため、ある一定のスケール、いわゆるメタバースレベルのスケールまでたどり着くのが難しい。誰も一社がメタバースをコントロールするのを嫌がるため、Robloxもどう言う形で将来のメタバースに当て込めるかを見極めなければいけない。

Snap
オンライン上の3Dデジタル世界を作っているEpic GamesやRobloxとは違って、Snapはメタバースで重要となってくる「オフラインとオンライン」と「常にライブで同期している」の役割を果たそうとしている。Snapは過去の記事で書いたようにBitmojiと言うアバターにフォーカスしているのは将来的にデジタルアバターが広がって、色んなプラットフォームに同じアバターを出す必要性が見えているから。これはいかにもEpic Gamesの戦略と似ているが、SnapはEpic Gamesが今手を出せないスマホアプリ領域に入り込んでいるので、Bitmojiが普及すればするほど今後かなりのアドバンテージを持つ。

画像13

引用:Techcrunch

そしてSnapはさらにEpic GamesやRobloxが入り込んでいない領域、A/Rを支配しようとしている。これをMirrorworldとも呼ぶ。

こちらを実現するにはオフライン世界をデジタルマッピングする必要がある。この技術自体は既に存在するSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を活用していて、Snap以外にもGoogleなどが活用している。これで何が可能になるかと言うと、Fortnite上で行われたTravis Scottのコンサートがオフラインの世界でどこでも実現可能になったり、SnapのSpectaclesなどをかけるとオフライン上にデジタルアバターが歩き回る世界が訪れるかもしれない。

特にSnapはGoogleと違ってインドアの写真も獲得できる。恐らくアウトドアとインドアの写真を両方とも取れるアプリはSnap以外にはInstagramみたいなSNSか、Nianticみたいなゲーム。ただSnapは圧倒的な写真数を誇るプラットフォームなので、アドバンテージがあるのは間違いない。Snapのほとんのユーザーはアメリカにいるので、全世界のデジタルマップを作るのにはSnapだけだと難しいが、その解決方法を作っている。

Snapの最もすごいところはこのA/RのMirrorworld、Spectacles、Bitmoji、そしてSnap Kitが全て繋がり、スケールできること。SnapはBitmojiなどを通してSnapのインフラであるSnap KitやSnapがリーチできているZ世代などを色んなアプリに売り込み、同時にSnapが開発したA/R機能を色んなアプリに入れ込むことによって、他のプラットフォーム上で撮った写真データを吸い込んでSnapのデジタルマップに貢献する仕組みが出来上がる。他のアプリを使って世界の3Dモデルをクラウドソーシング出来る会社は少ないが、そのアセットは今後のメタバースでは必ず必要となってくる。

よって、Snapは将来的にデジタルアバター領域で負けても、上手く誰よりも精度が高いデジタルマップを作れるとメタバースを立ち上げる一員として残れる。

Tencent
最後は今までの記事では一切話さなかったTencent。Off TopicではメタバースのインフラはEpic Games、デジタルマップはSnapでも、最もメタバースから利益しそうな会社はTencentだと考えている。Tencentが自社開発したプロダクトだとWeChatぐらいしかメタバースに当てはまらないように見えるが、Tencentのゲーム領域の強みと投資先を見ると、明らかにメタバースを意識しているのが分かる。

Tencentはメタバースを作る上で必要なプラットフォーム(インフラ)とコンテンツ(体験)にしっかり投資している。最もメタバースのインフラに近づいているEpic Gamesの40%をTencentが保有している。そしてさらにA/R、Mirrorworld、そしてデジタルマップを保有するかもしれないSnapの12%も保有している主要株主。それ以外に音声プラットフォームとしてSpotifyの9%を保有したり、Discordにも投資している強者。そしてもちろんコミュニケーションはWeChatだったり、決済やリテールソフトウェアにも幅広く投資している。

そしてコンテンツ領域ではRiot Games、Roblox、Activision Blizzardなどのトップティアのゲーム会社に投資したり、Pinduoduoみたいなソーシャルコマース企業にも投資している。それ以外に中国版Twitchの大手の大株主であったり教育形スタートアップのByjuにも入れている。

Tencentはどの会社よりもこのメタバースを見て、そこの関連する領域に貼っている。

画像14

引用:Packy McCormick Twitter

メタバースとは何か、そして大手企業が何故メタバースに注目してどう言う行動を起こしているのかを知りたい方は、以下記事をご覧ください。

関連記事

結論

新しい世代の考え方や違う思いがあると同時にインターネット上でのコンテンツとブランドの量が増えた影響でオンラインでは大きな行動シフトが行われている。人を引きつけるアテンションだけではなく、ブランドを好きになってロイヤルカスタマーを作る信頼性も同じぐらい重要視しなければ行けない時代となった。

何故このアテンションと信頼が重要なのかを理解するためにOff TopicではZ世代の考え方やプライオリティーに置いている社会問題についての記事を書き、それ以外に今起きている大きな流れ、これから起きる流れ、そして将来的に起きるシフトについて2020年記事を書き続けた。全てはこのAttention & Trust Economyを軸に考えたネタや話であり、各事例はこの大きなテーマを証明するためのパーツだった。

今後皆様がビジネスをする際にはこのアテンションと信頼のシフトを考えながら、長期的にどう言う戦略や行動をすると次世代の人たちから支持を得られるのかを決めていただきたい。2020年で書いたOff Topic記事は恐らく次の12ヶ月〜36ヶ月間の有効期限があるので、早めに活用した方の方がベネフィットを得られると思われる。アメリカの事例ばっかりですが、少しでもヒントになれたらと思います。

2020年まとめプレゼン

今回の記事と、各トピックでOff Topicが選ぶ注目のサービスをスライドでもまとめました。そちらにアクセスしたい方は、以下アンケートに回答していただくとOff Topicからスライドをお送らせていただきます!

最後に

2020年にはじめたOff Topic noteですが、これが今年最後の解説記事となります。コロナの影響もあって、noteにかなりフォーカス出来た年だと思いました。noteというテキストフォーマットのコンテンツ制作のおかげで新しいファンを作ることが出来て、音声では難しい転載などを行ってTechcrunch JapanなどにもOff Topicの記事が出ました。いつもコメント、いいね、ツイートなど支えてくれるOff Topicファンの皆様に感謝しております。

正直、2021年はどれくらいの頻度でnoteを書くのか決めておりません。そもそも書くのかも何も決めてないです。2019年はポッドキャスト、2020年はnoteとInstagramと毎年新しいチャネルに挑戦しているOff Topicからすると、もしかしたら2021年は別のコンテンツフォーマットに投資・挑戦しているかもしれません。ただ、引き続き、Off Topicが思った面白い海外のテック・カルチャートレンドやニュースを深掘りしながら届けるクリエイターとしてありたいです。

目指しているビジョンはまだまだ遠いですが、Off Topicを好きでいてくれている方々と一緒に成長していきたいと思います。どうか、今後とも宜しくお願い致します!

Written by Tetsuro (@tmiyatake1) | Edited by Miki (@mikirepo)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?