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実録:お店づくり(7)内装デザインの基本-前編-

前回はレイアウトの話をしたのですが、今回は内装デザイン編です。

お店づくりにおいて内装デザインはすごく大事なポイントでして、僕はそこのプロとして10年以上ゴハンを食べてきました。

で、いきなりなんですが、端的かつ簡単に教えるよ!というのは無理だな、とも思っています。僕もここに来るまで10年以上かかりましたし、まだまだ先が長く深遠な世界です。

一番いいのは場数をこなすしかないと思いますが、人生において何度もお店を作るなんて人は設計屋さん以外にほぼいない。。。

なので、ここで触りだけでも説明してみるので、不明な点はお気軽にコメント欄などで聞いてください。


まず、店舗における内装の役割はその店舗の世界観の表現そのもの。さらに機能的な部分、予算との絡み、立地や地型による制約etc...

ある程度の勝ちパターンというか効果的な寸法などはありますが、これがベストだと言える正解はないです。ある意味ではいちばん自由で工夫のできる箇所が内装デザインだからです。


どうやってデザインを組み立てるのか?

お店を考える時の大きな要素は商品・空間・立地です。

このうち商品はおそらく最初に決まっているでしょうし、立地は出店候補地を探して見つける段階でクリアしている。

そしてだいたい最後に空間について詰めていく事になるのですが、この空間もさらにいくつかのトピックに分ける事ができます。

空間のトピックを大きく分けると、上記のような感じです。

本当はもっと細かいんですが、わかりやすくする為に絞りました。が、絞り切れてない?

建築や内装って本当に多種多様なパーツの集合体なので、いくら勉強しても足りることはありません。毎回まなびや発見がある。

これら細かいところを全部カバーしていくと100回くらいの連載になっちゃうので、今回はかいつまんで話していきますね。


世界観の作り方

まず、店舗デザインでいちばん重要なのが世界観です。コンセプトって言ったり、ブランド思想って言ったりもします。

要するに考え方の軸であり、ここがしっかりしていないと店舗デザインがめっちゃブレますし、しっかりしていると仕上げ素材(建材)の選び方から照明計画まで全てがバシッと決まります。

これは空間に対する思想そのもので、設計者本人が根源的に持っている思想と、お店や場としての思想、そして出店者さんの思想が混ざり合って醸成されるものです。

まぁ、一言で言うなら「どういうお店にしたいのか?」です。

ここがしっかりしていないと、あれもいいけどこれもいいよね、とトレンドの良さげなデザインのツギハギになってあっという間に劣化します。

つまり、そこに思想が宿っているのかどうか?という点ですね。

ここすごく重要ですが、思想を宿した設計というのはめちゃくちゃエネルギーが(お金も)必要なのが事実でして、こだわりと現実のバランスを工夫してキープするのは綱渡りのように繊細な作業です。

ここら辺は次回、中編で実例でお話しします。


素材の選び方

世界観を作るとなった時に、いくつか重要な要素があります。

その一つが「素材」です。

まず、ざっと建材と呼ばれる仕上素材を並べてみますね。

【仕上げ素材色々】
・木材
・陶器
・磁器

・天然石
・貝殻
・骨
・革
・砂、土(左官)
・樹脂
・ガラス
・紙
・布
・金属
・塗装

今パッと思いついただけでもこれくらいあります。

で、同じ木材でもベニヤから集成材などのエンジニアリングウッドと呼ばれるものから、木材を薄く削った突板や、かたまりの無垢材まで。

おまけに樹種や材料の取り方(木どり)でも木目や性質が変わりますし、そこに経年変化した古材などが混ざってくる。

木材だけでもこの多様さで、陶器や磁器や左官や金属それぞれがすごく多種多様に存在しています。

膨大すぎて選び切れないくらいあるのですが、その中から今回はこれが最適だろう!というものを選んで組み合わせる必要があります。


これに関してはもう、ある程度の選ぶ基準を自分の中で明確にしておく必要があります。そうじゃないと膨大すぎて選べない。

そこで僕が基準にしていることが三つあります。

OFFRECOでの仕上げの基準
・生の素材であること
・質感に意図があること
・時間が味方になること

■生の素材であること
これは、素材が素材としてちゃんと使われるかどうかということです。

壁を木で仕上げたいと思った時に、木目柄の壁紙を貼るのはNGで本物の木を貼る。コンクリート打ちっ放しっぽい壁紙とか、金属のドア枠に無理やり木目のシートを貼るのも非推奨。

いわゆる安易なスキューモーフィズムを良しとしないということです。

ただし、デザインの意図としてありえない箇所に木目のシートを貼り込んで見せるなどの技法としてあえて使うのはアリです。


質感に意図があること
質感が豊富であることと単調であることに価値の大小はないと思いっていますが、手触りや足裏の感覚は大事にしています。

例えば、一見するとフローリングっぽい木目柄の塩ビシートの床材。

でも、意識して歩くと薄っぺらさがわかるんですよね。

だから、木目にしたいなら床には無垢のフローリングを使う。

壁も机もスイッチひとつまで、その触感には選ぶ理由を持つべきだと、僕は思っています。


■時間が味方になること
多くの店舗デザインでは竣工時が最高の完成系であり、使い続けると劣化して価値が目減りしていきます。

でも、素材によってはメンテナンスと共に時間を味方につけることで、より美しく魅力的になるものがあります。

例えば神社仏閣によく使われている真鍮は、時間経過と共にくすんでなんとも言えない深い色になりますし、鉄板に生まれる錆すら見せ方次第では美しさや複雑さを表現できます。

時間を味方につけられる素材を使うことはかなり意識しています。


これら3つの基準に加えて、素材の製造工程と、実際の空間や商品の要素をリンクさせたりもしています。

例えば、レストランでグリル系の料理が売りであるならば、グリル=火で仕上げることから、同じく火で仕上げた素材である陶器のタイルやレンガなどを使う。

水を大切にしているブランドなら、水=透明感のあるガラス素材や、海辺や川を感じる流木などを使う、などです。


素材、本当におもしろいんですよね。

わりと素材マニア寄りの設計者なのでこのテーマは延々と語れますが、ひとまず前編はこれくらいで。

読んでいただいてありがとうございます。
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