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実録:お店づくり(6)レイアウトの基本

長期出張を挟んで間が空きましたが、今回からは設計編です。

初回の今日は、事業構想をどうやってレイアウトに落としていくかの話をしましょう。

まず、商売でお店を出す場合は考えられるパターンがいくつかあります。飲食店、物販店、サービス店舗、ショールーム・オフィスなどです。

それぞれ事業構想を形に落とし込む方法も様々ですが、基本的な方向性があります。

【レイアウトの基本】
1.法律を守る(避難動線の通路幅など)
2.必要な設備機器や機能を入れ込む
3.
顧客の体験行動を順序立てて設計する

この3つが基本的な抑えどころです。


1.法律を守る(避難動線の通路幅など)

もう、基本中の基本。ちなみに、法律といっても色々あるのですが、基本的には国の出しているものと、地域ごとに設定されている地域条例と別れています。重複しますが両方まもる必要アリです。

とりあえず、関連するやつをババっと書きますね。

・建築基準法および同施行令(内装制限、排煙設備、避難、シックハウス他)
・◯◯市建築基準法施行条例
・消防法および同施行令、施行規則
・◯◯市火災予防条例
・◯◯市消防施設指導基準
・危険物の規則に関する政令および施行規則
・バリアフリー法(旧ハートビル法)、移動等円滑誘導基準
・◯◯県建築物バリアフリー条例
・◯◯県まちづくり条例
・電気設備技術基準および内線規定
・食品衛生法
・環境衛生法
・薬事法
・医療法
・理美容法
・風俗営業法
・興行場法
・◯◯県食品衛生法施行条例
・ビル衛生管理法
・省エネ法
・屋外広告物条例
・廃棄物処理法
・製造物責任法
・健康増進法
・建設リサイクル法
・その他、地域条例などなど

・・・・はい。やばいですね、この量。

一見するとビビりますが、あくまでも基本にあるのは「安心・安全」であり、そのためにそれぞれがルールを作っているということです。

もちろん、僕らが専門家といっても、これらの法律を全て細かく把握しているわけではありません。

法改正で内容も微妙に変わりますし、地域条例は地域によってニュアンスが変わったり、担当者によって見解が変わるとかもザラです。お役所の人が4月で異動になって担当者変わって厳しくなる or 緩くなるとかもあります。

とはいえ、こういうものがあって、経験則としてこうしておく必要があるよ、というアドバイスをできるのが経験豊富なプロの役目です。

法規を意識してレイアウトを組むにあたって、特に意識しておくのは避難路と避難路の幅(幅員、と言います)あとは業種によっては車椅子・ベビーカー対応の有無などです。

特に飲食店の場合は火災時に逃げ遅れの発生する設計などは命に関わりますし、実際に死者が出て問題になることも多いです。ここら辺はモラルの問題ではすまないので、法令遵守は必須です。



2.必要な設備機器や機能を入れ込む

上の資料画像は保健所さんへの飲食店営業許可申請の書類の一部です。飲食店にしろ、理美容系のサービス店にしろ、基本的には保健所からの営業許可を受けてはじめて営業が開始できます。

そのためには、保健所の定める営業設備が必要です。これがないと許可がでません。

例えば、飲食店の場合は温度計付きの冷蔵庫、扉の閉まる食器棚、手洗専用の手洗器と食洗機もしくはシンク(手洗い1、シンク2槽で食材洗いと食器洗いを分けるのが基本)調理場と客席の仕切り、換気設備、トイレ、場合によっては更衣室などが必要とされます。

これがないと営業許可が出ないので、まず最低限レイアウトに落とし込みます。

ここからさらに事業構想に応じて必要な厨房機器や美容機器や什器なんかを入れていくわけです。

ちなみに、この保健所さんの書類って地域によって微妙に書式が違うんです。おまけに保健所指導の見解も地域ごとで微妙に違うので、事前協議は絶対行っておきましょう。許可でないと営業できないので。


3.顧客の体験行動を順序立てて設計する

で、実際にレイアウトを組んでみたのが上の図です。いわゆる初期段階の、ラフ平面図ってやつですね。

ちなみに今回はいきなり平面図を引いてますが、本来は図面化する前に大きくゾーニングというざっくりした機能ごとのレイアウトを組んでから、だんだんと解像度を上げて上記のような平面図に仕立てていきます。

これは路面1Fのカウンター飲食店+物販という設計なので、飲食店営業許可が必要な案件です。当然、保健所さんに相談するにあたって必須になるものをまず入れ込みます。

が、ここまで狭いとレイアウトの検討なんて選択肢がないので、ほぼ一択です。

・顧客動線(着席→トイレ往復→離席と会計)
・スタッフ動線(準備と調理、サービス、下げと洗い物、見送りetc)

この2種類の行動をそれぞれ考えて重ね合わせます。

あとはカウンターの幅をどうするか?

料理の提供内容と器の寸法を抑えつつ、ゆとりを持たせて高級感やくつろぎを演出するか、それともちょっと狭くして親近感を高めて席効率を上げるのか検討したり。

スタッフ動線も、600mm=60cmの幅が本当にベストなのか?

1名調理、1名サービスの場合、調理スタッフは火元と水回りと食材庫(冷凍冷蔵庫)の往復だけで完結し、サービス側と混ざらなければ50cmくらいまで縮められないか?などを検討します。

この時の1cmの差がチリツモで結構でかいので、設計者はまさに試行錯誤する部分です。


知識と経験と発想のパズル

レイアウトって楽しくもあり、苦しくもある、知識と経験と発想のパズルです。

絶対に変わらないの人体の寸法(ヒューマンスケール)と、機能寸法、商品寸法(SKU設計)がまずあり、必要を満たしつつそれ以上を生み出せるかを練るのがレイアウト。

今回は吉祥寺のレイアウトでしたが、次回はちょっとクライアントさんに許可もらってコンパクトな美容室のレイアウトも掲載できたらと思います。(諸々あって不可になったので、別件のを紹介します。)

ちなみにレイアウトの技術を磨くには経験しかないので、オススメの方法は「店舗レイアウトスケッチ」です。

これnote始めた初期の頃の記事なので、次の次あたりにもっと詳細に書きますね。積み重ねるとお店に入った瞬間にだいたいのレイアウトを頭の中に描けるようになります。

他にも写真を見ながら店舗レイアウトのどの位置から撮っているかを確認するなども練習になります。これもまた今度詳しく書きますね。

やっぱり自分の専門分野は書くこといっぱいで冗長になりますが、読んでいただいてこれ知りたい!あれ聞きたい!があればお気軽にtwitterなどで絡んでください。

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