見出し画像

【はすおか船長とえほんの海】第6回 4歳からの絵本

こどもの本専門店「きんだあらんど」店主の蓮岡船長とともに送る、子どもにも大人にも読んでほしい心ゆたかになる絵本のお話。
第6回目は4歳頃のお子さんに読んであげてほしい絵本のご紹介です。

・・・・・・・・・・・・

4歳は人生における大転換期を迎える時期です。

幼児にとっては、それぞれの年齢、いくつもの一瞬自体がいつも大転換期ではあるのですが、4歳はそれまでの世界が全く違って見えるような転機が訪れます。

それは、「自分以外の人間は他人である」という事実。

他人と言えば少しぶっきらぼうですが、今までいた身の回りの人は、自分の世界に生きる人であったのに対して、これからの人は、「自分とは全く違う世界をもった人たち」になります。

画像5

「全部知ってる!」と思っていた万能感に対して「知らないことがいっぱいある」という不安感。
4歳の頃はまさに、この不安感を中心に、様々な感情が伸びていく時期とも言えます。

不安感から生まれるもの

0歳からでも不安なことがあれば、当然のように自分を守ろうとします。
漠然とした不安に対しては、身近で安心できる存在を求めますが、独りになった時には「自分は大丈夫」と思う気持ちが必要です。

この心を支えてくれるのが自己肯定感。

「誰かに自分は愛されている」「世界は自分を受け入れてくれる」そんな感情が心の中にあるからこそ、自分独りでも不安から立ち直り、先に進むことができるようになります。

自分の能力に対する不安

4歳になった頃の不安は漠然としたものではなく、他のものと比べて自分の能力を疑ったり、自分自身の力に疑問を抱いたりする具体的な不安です。

「自分にはできないだろうな」「あの先には怖いものがいるかもしれない」他人と比べて自分が劣っていると思ったり、身の危険を想像して恐怖を感じたり。

今までにない簡単な癒しの言葉では解決できない問題に対して、小さな人たちはどんな心を駆使してそれを乗り越え、「よし、やってみよう」という積極的な思いに転じることができるでしょうか。

一番身近なものの言葉

他人から感じた劣等感から立ち直るためには、自分もできるという具体的な意識が必要です。
大人だったら、過去の経験から自信を取り戻すこともできますが、幼児はまだ体験の幅も狭く経験も豊富ではありません。

そんな時に、立ち直るための自信を与えてくれるのは、身近で導いてくれるものの具体的な言葉や手助けです。

画像5

「こうやってみたら」「そうそう、上手くできている」

大人になっても身近な人たちからそんな風に言ってもらえたら本当にうれしくなりますね。
それは、自分の存在だけでなく、自分の思い切った行動が肯定されているからです。

「自分にもできる」そんな感情が少しずつ集まり、「ここまではできるだろう」という自信になり、「あれも、こんな風にしてやってみよう」という力になります。

「不安を慰める」よりも「不安の反対にある明るい感情を大きくする」

P D S の法則

P
:これできるかな?こんな風にしたらうまくいくかなあ
D:よし、やってみよう! 頑張るぞ
S:できた!こうやればいいんだ。じゃ、次はどうしようかな

Plane(計画) Do(実行) See(確認)

興味の過程はこの3つの要素がつながって、大きくなります。

そして、その展開が限りなく用意されている物に対して、幼児は興味の枝を伸ばし、さまざまに広がっていくパターンにもっともっととイメージを膨らまし、やる気や尽きることのない探求心を育てていくのです。

画像5

不安で立ち止まったら、まず「大丈夫」と余裕を持たせ、そして、その不安を押しのける3つの要素をそっと後押ししてあげるのが、身の回りの大人の役目。

自分の力で乗り越えることは、この先に続く大きな山や波に対しての大切な姿勢になります。
周りの大人は不安をただ取り除こうとすることよりも、自分で成長する力を伸ばすあそびの部分を大切にして、そっと手助けすることを大切にしたいですね。

4歳からの絵本

信頼できる身近な存在の行動を幼児はいつも見ています。

そして、言葉だけでなく、行動をまねて、「こうやっていけばいいんだ」という安心感が生まれます。
そして、それを守ろうとする時には戸惑いがあって、「あの人のようにやってみよう」という積極的な思いが生まれます。

これが小さな勇気の種です。

・・・・・・・・・・・・

『とべ!ちいさいプロペラき』

作:小風 さち
絵:山本 忠敬
出版社:福音館書店

画像2

ちいさな新品のプロペラ機。
エンジンも機体もピカピカで、今は格納庫の中で空に飛び立つ時を待っています。

そこに、大きなジャンボジェット機がやってきました。
「なんて大きな体だろう」そう思っていると、操縦士のおじさんが言います。
「おまえがてんとうむしにみえちまうな」。

プロペラ機は大きな機体とくらべて急に調子が悪くなりました。
今日はとても飛べないようなので、初飛行は明日になりました。

その夜、一人で泣いているプロペラ機に、ジャンボジェット機が声をかけます。

「きみはいいエンジンを持っているね」・・・・


・・・・・・・・・・・・


悩んだ時には、尊敬する大人の声が心を支え、心を安定させます。

何度もそれを繰り返すことで、練度があがり、今度は自分で乗り越えていけるようになります。

そう考えれば、不安や困難は、ちゃんと心を育ててくれる大切なチャンスとも言えます。

今までできなかったことに、挑戦してみる。
そして、それが出来た。「自分にもできたんだ、うれしい!もう一回!」

そんな4歳を味わってください。

ABOUT -この記事を書いた人ー

蓮岡さんプロフィール

蓮岡 修
子どもの本専門店「きんだあらんど」店主

島根県出身。
紛争地・被災地での人道支援活動を経て、2008年より「きんだあらんど」店主となる。
全国各地の幼稚園の選書請け負いや、雑誌のコラム掲載など様々な場面で選書を行う。
絵本に関する講演も多数。
大学非常勤講師/京都市内の子育て広場代表等多方面で活躍。

■きんだあらんど
家庭で読まれる絵本と読み物をコンセプトに、こだわりの選書で世界の名作を中心とした本を取り揃える。
毎月絵本の読み語りや絵本講座等のイベントも開催。

【店舗情報】
公式HP : http://kinderland-jp.com/
所在地  : 京都市左京区頭町351 きんだあビルディング2階
営業時間 : 10:00 ~ 17:00
定休日  : 水曜日、祝日(不定休)、年末年始
TEL   : 075-752-9275


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?