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ぼったくりタクシーと学生時代の成績の話@クアラルンプール

海外旅行をして初めてぼったくりにあったのは
クアラルンプールでのタクシー乗車時だ。

学生時代、友人とマレー半島縦断の旅をしていて
クアラルンプールには都市間長距離バスで到着した。
到着したはいいものの、現在地どこだか場所がわからなかった。
当時はGoogleマップもiPhoneもない時代だ。

手元には地球の歩き方「東南アジア」しかない。
東南アジア各国を1冊で網羅しているガイドブックなので
当然1か国当たりの情報量は少なくなるわけで、
そこに掲載されているクアラルンプールの地図も限定的なので
地図上で現在位置を確認することができなかった。

私たちは同じ学力試験を受けて合格した級友なので
基礎学力にあまり差はないはずなのだが、
1次試験の英語は友人の方がはるかに点数が高かった。
(名誉のために言うが、私はその分数学の点数が高かった)

しかし、英語の点数が高いからといって英語が話せるわけではない。
ましてや友人は「なんとかなる」と鷹揚に構えるタイプだからか
自分から積極的に問題解決に向けて動くほうではなかった。
だから英語が苦手な私の方が言語面で四苦八苦しながらも
あれこれと手筈を整える担当だった。

つまり、現在地不明で二人で途方に暮れていても
友人は困ったと言いながら何も動かないこと山のごとし。
私がその辺にたむろしているタクシー運転手をつかまえ
ホテル名を告げて交渉することになる。いつも通りの展開だ。

タクシー運転手は、600円程度の値段を私たちに告げた。
日本でタクシーに乗ったら初乗りでそれぐらいだ(当時)。
友人も「安いね」と感心しながらタクシーに乗った。
そしてそのタクシーは300メートルほど進んで止まった。

「あそこの通りを歩いていけば、ホテルはあるYO」
ホテルの目の前ではなかったが、まぁどうにかなった。
で、私は思うわけだ。これで600円?
この国のタクシー初乗りはいくらだ?(当時60円とかそんな感じ)
もしかして、これはぼったくりじゃないのか??

友人は何とも思っていないようだったが
私はタクシー下車後に一人で怒りを爆発させた。

私は若かったので、その爆発エネルギーを
次からの自分の行動で昇華させることにした。

・タクシー乗車時にメーターを使うように必ず指示する
・運転手が目的地を知っているか確認してから乗る
・遠回りをされないように、タクシー内では地図を広げ現在地を確認する
・そもそも極力タクシーは使わない

後にUberやGrabといった配車アプリが世の中に爆誕するまで
私は自分自身にこの鉄の掟を課すことにした。


クアラルンプールぼったくりタクシー事件から8年後。
私はまた別の友人とクアラルンプールにいた。
ちなみにこの友人は高校の同級生で3年間同じクラス。
そして友人は1浪したあとに大変優秀な大学に進学した。

私たちの高校時代はさほど成績が変わらなかったので
「1浪したら〇〇大学(友人の進学先)に合格したかな?」
と現役でぱっとしない大学に進学した私が友人に言うと
「無理無理。🐈ちゃん(←私のこと)勉強嫌いじゃん」
と友人はあっさり答えた。その通りだ。反論の余地がなさすぎ。

私たちはその時、クアラルンプール中央駅に向かうときだった。
通りを行くタクシーを止め、乗り込んだ。
目的地を告げ運転手がうなずくのを確認した。
まあわかりやすい目的地だろう。

私と友人は後部座席に座り、すぐに話し始めた。
もちろん私は運転手がメーターを動かしたのを確認している。

タクシーは数百メートルを進んだだろうか。
私は友人と話しながらも気づいたのだ。
メーターの料金が上がっている。

おかしい。
この国のタクシーの初乗りの距離はもうちょっと長いはずだ。
それなのに、もう料金が上がっている。
なんなら今こうしている瞬間にもまた上がった。

夜間特別料金どころの騒ぎではない。昼間なのに。
どう考えても異常だ。
メーターが不正に改造されていて
頻繁に運賃が上がる仕組みになっているようだ。

私は友人と日本語で会話をしている。
きっと運転手は私たちが外国人であると
耳慣れない響きの会話から早々に気づき
バレないだろうと不正改造のメーターを使ったのだろう。

私は友人との会話をぶった切って
STOP
と運転手に向かって怒鳴った。

友人とは、高校時代の化学教師(しかも担任)が
しょっちゅう怒り狂っていて怖かった話をしていたが
(私が有機化学がどれだけ苦手だったかとかも話していたが)
まさかの私が今は怒りの英語教師と化して
運転手に英語で怒り狂うターンになっていた。

知ってるぞ。メーターはこんなに早く上がらない。
おまえ、ぼったくってるだろ。
運賃は絶対払わないぞ。
警察に電話するぞ。おまえの名前は何だ?

私は英語でまくし立てた。
普段は使わないFワードを大解放。
英語の成績は悪いがアドレナリンが出まくっているのか
こういう時には英語が割とすらすら出てくる。

私の剣幕に押されたのか
運転手は「ここで降りろ」と一言。
友人に促されて私たちはそのタクシーを降りた。

私一人なら間違いなくヒートアップして戦っていただろう。
しかし横では私をよく知る友人が私を制した。
優秀な大学を卒業し人格までランクアップしたらしい。

後から冷静になって考えると、タクシーがそのまま走行を続け
人気のない路地裏で私たちに刃物を向ける可能性だって
ゼロとは言い切れないのだ。
ここは外国。私たちは外人。安全第一。

去り行くタクシーに向けて
私は罵詈雑言を思いつく限り言い続けた。
悪徳タクシーはこの世から一刻も早く滅びればいい。
もれなくUberに駆逐されてしまうがいい。

↑と思っていたら後日インドのUber で痛い目に遭った…



ま、学生時代の成績は大人になると意味がない、という話です。
英語の成績がよかろうが悪かろうが、
結局はコミュニケーション能力なんだよなと痛感。
海外で、その国の人相手に日本語でゴリ押しして
意思疎通を成し遂げる大阪のおばちゃん最強説。

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