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関係人口は、地方の救世主になりえるのか?

1.関係人口ってなんだ?

 関係人口というキーワードが世に出て、6~7年がたった。もともとは、「東北食べる通信」の活動で有名な高橋博之氏や「月刊ソトコト」編集長の指出一正氏が2016年ごろに使いだしたのが最初とされている。その後、国が政策に取り入れたことで、地域再生の方策としてこの言葉が一気に注目されるようになった。
 ところで、関係人口とはどういった概念なのであろうか?高橋氏や指出氏は、移住や観光ではなく、都市部から地方へ訪問する人であるとの見解を示している。ちなみに、総務省は「長期的な『定住人口』でも短期的な『交流人口』でもない、地域や地域の人々と多様に関わる者」と定義づけしている(総務省,2018)。

 「関係人口の概念図」(出所 総務省,2018) 


2.多様に関わる者の難解さ

 では一体、国が示した、「多様な関わり」とは何なんだろうか?地域産品を購入する人、別荘を購入して週末だけ地域に入る人、「風の人」と称されるような、さまざまな地域を渡り歩くような人等々、とにかく地域となんらかの接点があれば関係人口と呼べるようだ。では、観光客や定住者との境界は何なのか?このあたりがグレーなので「なんでも関係人口」の様相を呈しているのが実情ではないだろうか?

3.地方自治体の迷い

 国は、いわゆる地方創生政策である、第2期「まち・ひと・しごと総合戦略」において、関係人口の創出・拡大に取り組む地方公共団体の数を、2024年度まで1,000 団体にすると述べている。実に全国の自治体の6割におよぶ数である。
 筆者は仕事がら多くの自治体関係者と接する機会が多いが、関係人口の創出・拡大に本格的に取り組む自治体はまだまだ少ない印象を持っている。この要因は、関係人口は地域と「多様なかかわり」をする人と、一くくりに解釈されているため、一体だれをターゲットにして戦略を打ち出してよいかわからないからである。つまり、地方自治体には「迷い」があるのだ。

4.観光客にターゲットを絞った戦略を!

 筆者は、従来の観光政策を、関係人口政策に転用すべきであると考えている。関係人口と、観光客を中心とする交流人口を切り分けて考える必要はない。確かに一部の観光客は、地域を消費の対象としか見ず、時には現地での振る舞いに対し、地域住民からは疎まれる存在になることもあるだろう。
 一方、新型コロナウイルス感染症の拡大を経験した我々は、観光客として、あるいは観光客を受け入れる側として、新たな関係性を構築する機会をうかがっている。観光のメッカ、ハワイでは、観光客の質を上げようと「レスポンシブルツーリズム(責任ある観光)」をポストコロナの観光戦略の柱としている。この流れを日本も継承すべきであると筆者は考えている。

5.観光客を地域の主体として受け入れる

観光客は、地域にとってのお客様、つまりお金を落として帰ってもらう存在。これはコロナ前の考え方になるであろう。多くのインバウンド観光客でにぎわった過去に戻ることを望むのではなく、観光客との新たな関係性を構築するのである。
 国は関係人口を「地域づくりの担い手」として期待する。人口減少時代に必要な考え方であろう。観光客を関係人口の候補者として捉え直し、彼らが地域の主体として地域の課題解決に尽力することを、これからの地域側は考える必要がある。






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