米国の "国別人権報告書"

ニュースで米国の "国別人権報告書" の内容を引用した報道をたまに目にする。ただし、その取り上げ方については少し気になっている。人権面で問題を抱えている国について、「ほろごらん。お父さんも怒っているよ」といったニュアンスで伝えているよう感じることがあるからだ。

そもそも、この "国別人権報告書(Country Reports on Human Rights Practices)" とは、米国国務省が世界の約200の国の人権状況について毎年議会に提出する報告書であり、一般にも公開される。

この簡単な説明文を読んだだけで、すぐにいくつかの疑問がわいてくる。思いつくまま書き出すと、

(1)約200か国だと国連の加盟国数より多いのでは?
(2)日本についてはどう書かれている?
(3)そもそも米国自体の人権状況についての記載はあるの?
(4)人権状況が悪いと書かれている国はこの報告書に対してどう反応している?
(5)人権状況が悪いと書かれている国の人たちはこの報告書にアクセスできるの?
(6)他の国も同じような人権報告書は出しているの?

最新版の人権報告書が国務省のホームページから閲覧できる。詳細に紹介する余裕は正直ないが、わかった範囲でまとめてみる。

(1)について、取り上げられている国名をチェックしてみた。ほぼ国連の全加盟国に対応しているが、国連に加盟していないコソボ(旧ユーゴスラビア)と台湾が入っている。逆に自国(米国)は入っていない。だから国連加盟国とは完全に一致しないというのが答え。

(2)については、日本に関する部分の日本語訳を在日米国大使館/領事館がホームページで公開している。法執行の手続きにおける人権上の問題、ヘイトスピーチへの対処、難民の扱い、マイノリティに対する差別など、かなりのページ数を割いて記載している。

(3)については、(1)で書いた通り、自国のことについては記載していない。これがあれば報告書の価値は上がるような気がするが。

(4)については、いくつかの国からの反応が報道されている。国内の少数民族の弾圧を「ジェノサイド」と非難された近隣国が反発しているという報道が先日あった。その他、複数の国からの反応が報道で確認できる。

(5)細かく調べる余裕はなかった。ただ、だいたい想像がつく通り、人権状況が厳しい国ほどインターネットのコンテンツへのアクセス制限があるなどの傾向があるようだ。報告書では、各国の報道の自由度やインターネットへのアクセス状況などについても記載している。

(6)あらゆる国について調べる余裕はなかったが、例えば、英国外務省は "人権と民主主義に関する年次報告書(Annual Human Rights and Democracy Reports)" を出している。少し古い版が手に入ったので見ると、日本の死刑制度について取り上げていた。国連にも "人権理事会" や "国連人権高等弁務官" などがあって、それぞれ報告書を出している。

どうも限られた時間内ではとても全容をまとめることはできそうもない。しかし分かったことは、少なくとも報道で引用されているのは、報告書のほんの一部を切り取っただけということだった。

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