労働者性について考える

今回は「労働者性」について考えてみたいと思います。
「労働者の法律」と言えば「労働基準法」ですよね。
その労働基準法の第9条に労働者の定義が書かれています。

労働基準法第9条
「この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」

労働基準法

法律には「要件」が規定されています。難解だなと思いながらも、それぞれの「要件」を分けて考えてみる必要があります。
一見短い条文に見えますが、この一文のなかには、

  1. 職業の種類を問わず

  2. 事業又は事務所に使用され

  3. 賃金を支払われる者

という3つの要件が浮かび上がってきます。

労働基準法上の労働者性の判断基準とは

  1. 労務提供の形態が指揮監督下の労働であること

  2. 報酬が労務の対象として支払われていること

です。
「1.労務提供の形態が指揮監督下の労働であること」については「仕事の依頼、業務従事の指示等に諾否の事由があるか」「業務遂行上の指揮監督の有無はあるか」
「2.報酬が労務の対象として支払われていること」については「報酬の性格が使用者の指揮監督の下に一定時間労務を提供していることへの対価と判断されるかどうか」がポイントです。

そしての判断を補強する要素として、

  • 事業者性の有無

  • 専属性の程度

が考慮されます。

最近はフリーランスの方も増えてきています。
企業も外注として業務を外部に委託する場合が多いでしょう。

しかし、契約の形態が「業務委託」であっても、実態が上記の労働者性の判断基準に該当する場合は、「労働者」と判断される可能性が高いです。

例えば、仕事の諾否の程度については、業務委託であれば「これは私の仕事ではありません」と断るのは受託者の自由ですよね。
また業務委託であれば、ある仕事の完成は受託者の裁量に任されているのであって、受託者の業務の進め方について発注者があれこれ指示をすることは通常考えられません。
報酬の性格も「1日8時間働いたから委託料1万円」というのは、8時間という「労働の対価」とみられるでしょう。
通常業務委託であれば、委託した業務が完成したらそれを引き渡せは報酬を支払うというものです。

契約は業務委託なのに、始業・終業時刻の出退勤が管理されているなどは、労働者としての働き方です。

判断を補強する要素「事業者性」についても、個人事業主であれば通常パソコンなどの仕事に必要な道具は、自分で準備するものです。
また個人事業主であれば通常は1社専属ではなく、仕事の依頼に応じて何社も契約を結んでいるはずです。
受託者が個人事業主であれば、確定申告も行っているのが通常です。

以上のような判断基準に該当しながらも、形態は業務委託でも実態が労働契約というのは、ときどき見受けられます。

労働者性の有無が問題となるケース

PHOTO BY 写真AC

労働者性の有無が問題となる場合は次のケースです。

まずは「労災が発生したとき」

受託者(フリーランス)がケガをした場合、実態が労働者であれば労災が適用されます。
しかしこれが業務委託で個人事業主だと、原則労災は適用されません(特別加入の場合は除く)。
次に、雇用保険に加入していないことで、失業給付(求職者給付)などの給付が受給できないということです。
新型コロナウィルス感染症が猛威を振るっているときに、雇用調整助成金の対象にならない、という相談がよくありました。

2つめの問題が「消費税」です。
業務委託で11万円を相手に払うときは、「報酬10万円、消費税1万円」となりますよね。
これが本来労働者への給与であれば「給与11万円」となり、事業主が支払う金額に消費税が発生することがないんです。
業務委託の外注とすることで、仕入れの分の消費税が控除できる形になります。

以上のことから、労務管理の部分と税の観点で「この契約は本当に業務委託なのか」ということが実態として確認されていくわけです。

「外注扱いにしたら社会保険も雇用保険も払わないでいい、消費税も控除できると聞いた」という安易な考えで雇用契約を業務委託契約に変えるのは、やめた方がいいです。

実際業務委託の働き方になるのであればよいとは思いますが、それでもフリーランス保護法など遵守すべき法律はほかにあります。

自社の業務委託は実態は労働者性を帯びていないか、今一度確認してみましょう。
本日も最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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