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【仮説】営業スキルでものは売れると思う、場合によっては⑦

6章 現代に必要なものはマーケティング?

〇集客がいらなくなったベンチャー企業の話

ある30代の若手経営者に、
「一度、お会いしてみませんか」
と声をかけていただき、お話を聞いたときのお話です。
もともと、トップ営業だった人物が独立して、会社を設立したとのこと。
立ち上げてわずか数年で、全国に営業所があるくらいのスピード経営を実施しているとのこと。
「どんな営業の方が、活躍されているのですか?」
と試しに聞いてみました。
すると、
「うちでは、他の会社で活躍できなかった人ほど、うまくいきます。営業マンは集客しなくていい仕組みを作ったので、反響営業に徹することができるからです。
大抵の営業は、集客で失敗し心が折れてしまうのですが、うちでは集客は会社の役割です。
他でうまくいかないで辞めた営業マンがいたら、うちで働いてもらいたいくらいです」
と熱く語っておられたのが印象的でした。

〇WEBさえあれば、テレアポ会社もいらない

WEB集客に成功している会社の話を聞いたことがあります。
1席で10万円から、特等席だと100万円もする高額セミナーを販売するために、その会社が取った作戦。それは、セミナーのランディングページから、申込を募ることでした。
その会社には、たくさんの営業担当者も在籍しています。
しかしながら、
「その高額セミナーの価値を顧客(富裕層もしくは、経営者)に理解してもらい、申込まで至る」
ことについて、徹底的に考え抜き、集客方法をWEB集客に切り替えたとのこと。
営業マンの積極的な勧誘活動だけでは不十分と感じたのでしょう。
彼らは、ランディングページを製作するにあたり、何度も試作品をつくり、キャッチコピーに関しては約2か月もの間考え続けたとのことでした。
その結果、満席になるまで、そのページから応募があったとの話。
(彼らも、自分たちの集客ノウハウを自ら販売している立場上、多少なりとも話を盛っている可能性は否めませんが、事実に近い話であるという印象は受けました)
業種業態によっては、応用できない話ではあるかもしれませんが、WEBも“本気”で取り組めば、営業マンの代わりか、もしくはそれ以上の役割を担うように思うのです。


〇対面販売から、顔を合わせない商談に

私が在籍していた保険業界も、個人向け商品はWEBから加入できる時代になりました。
しかも、WEB加入の方が安いケースもあります。
そして、WEBだけではなく、契約期間の短いものに関しては、コンビニエンスストアでも加入できるようになりました。
(十数年前は、「営業マンや販売代理店を介せず契約するお客さんがどれだけいるか」と疑問視されていたのにもかかわらずです。世のなかの趨勢は、すぐに変化していきます)
対面の方があれこれと販売側とお話ができて、関係性を深められるように感じます。雑談などを通じて親しみも湧きます。長年のおつきあいにつながるのは、このパターンが多いとは思います。
その一方、お客さんの立場からすると、目の前にいる営業を前にドライに契約を打ち切りにくく、
「提案されている内容について疑問だ」
と感じても、率直に断るのは忍びないという心境に陥りがちです。
そういったことも一因となって、個人向けの契約については、WEBで加入するケースが増えたのだと感じます。
(ちなみに、アフターフォロー、アフターサービスも、営業を介さない方がその後の対応もいいことさえあります。各業界で、この傾向が続くようであれば、世の中全体の流れとして「個人で申し込めるものはWEBで」の流れが進んでいくと思われます)
高額の買い物でなければ、対面である必要がなくなってきているのが実感です。

〇量をこなせば上司に褒められた時代の終焉

「熱量」や「仕事を進める過程」、「成約に向けて、どれくらい行動したか」といったことが、人事考課で反映されることが今までの営業でした。
「(数字における)結果しかみない」
というドライなやり方も、完全歩合の世界では一部存在するものの、その他の営業は「頑張り度」で評価が変わることは、ついて回ったように思います。
「頑張り度」を示すわかりやすさが、どれだけ取り組んだかという「量」でありました。
人対人なので、そこには人情が入る余地が存在し、「頑張り度」で評価を上げようとすることは、ありがちな行動でした。
配属された先の上司に「弟子入り」するかのようについて回り、昼食や夜の飲み会も共にして、何とか自分を理解して、快く指導してもらえるように関係性を構築する。
「社外営業」の前には、「社内営業」の壁が立ちふさがっている。
そんなことを感じながら、過ごした日々の事は今でも忘れません。
「上司である師匠のいうことなら、何でも飲み込むぞ」
という姿勢が問われたのです。
それに対して、現代は「働き方」が問われる時代。
週刊アスキー特別号(2018.2.9)には、
『「働き方改革」を加速するITツール&キーワード』
という特集が組まれております。
中身は、ビジネス向けのチャットサービスを展開する企業「チャットワーク」が、自社では実際にどのような取り組みをしているかが紹介されておりました。
・オフィスには固定電話がない
・ペーパーレースを推進するために、プリンターもない
・引き出しのついた袖机もない
・営業も含めて、対応はメールとチャットのみ
という内容。
「電話は業務効率上を考えると悪(あく)」
という考えを徹底しており、美しさを感じます。
チャットでの業務には、やや不安を感じる面もありますが、営業職からすると、いつでもどこでもかかってくる携帯電話に比べれば、精神衛生上は楽になることは間違いありません。

7章 営業スキルの体系化に必要なものは

〇法人営業なのか?個人向け営業なのか?

元々、「雑談だらけの人情営業」が苦手な私は、30代後半から大手のハウスメーカーで営業を始めたときに、おおいに苦労を強いられました。
十年近くやっていたの個人運営の販売代理店を閉めて、一念発起で再就職をしたものの「ノウハウ、人脈もない」状態で空回り。
WEB集客で集めた個人情報を元に、反響営業をやらされるのですが、何をどうやっても結果が出るようには思えません。
(在宅率が低く、インターホンを押しても反応がありません)
そもそも、初めて訪問した先が在宅していたとしても、相手の興味を引くような気の利いたことは、まったく頭に浮かんでこないのです。
それでも、エンドユーザーである個人のお客様を何とか接点を持つにはどうしたらいいのか。
いろいろ試行錯誤の末、粘って成果を出すまでには、相当心が折れます。
(結果、「法人開拓営業に専念し、そこから紹介受注をする」という少し毛色の違うスタイルに落ち着いたのが事実です。前職で特技にしていた方法に近いものを選択した形です)
その経験から、「自分の特徴・特技を無視しても成果にはつながらない」ということを痛感しています。

今回、巻末の付録に、「法人向け」「個人向け」「高額商品」「単価の低い商品」でマトリクス化した図を付けました。
こちらを参考にしていただき、ご自身は「どのジャンル」で精通されているのか。
ご自身でも、同じものをご記載いただけたら幸いです。
言語化することによって、見えてくるものがあります。
「自分をよく知り、自分の特徴を把握する」。
これが大事なポイントです。


〇営業マンのキャラクターを無視していないか?

第6章で、「営業の世界」は、「上司に弟子入り」する感覚に近いようなものだ、と述べました。
「師匠」をチェンジすることはできないし、「破門」になることも滅多にはありません。
そんな世界で、「師匠」のありがたい教えを盗み、真似て、けなされてもめげすに取り組む。
そんな中で、結果が出た日には「師匠」や周りへの感謝を込めて、壇上に上げられた日には、多少の演出を入れながら成功事例の発表をし、また頑張る。
アスリートの世界にも似た感じもあります。
しかし、そのスタンスは少しずつ古くなっている。
上司や、同僚、もしかしたら顧客とのやりとりすらも、メールかチャットの方がいい。
電話や対面で、「言った、言わない」のトラブルになるくらいなら、エビデンスとして残るコミュニケーションツールを活用したほうが、自分のためであり、相手のためだという時代も迫ってきている。
あなたなら、そんな時代背景で、どうやって部下や後輩を指導したらよいのでしょうか。

1つだけ、言えることがあるとしたら、
「自分の生きてきた常識をいちど捨てること」
でしょう。
部下、後輩は、進んであなたの下に配属されたわけではない。
たまたま、めぐりあわせて席を並べることになった存在です。
「今までの常識をリセットさせて、新たな自分を作り上げる」のは、今までは部下・後輩の役割でした。
その常識を、今後はあなたが捨てていくのです。
「部下・後輩」にあった指導法を、それぞれに提供し、個別の良さを引き出し育成する。
プレーヤーだった自分の成功体験の押し付けではなく、良きアドバイザーとしての役割が大きくなると感じています。



〇美化され脚色された武勇伝を見抜く方法

逆に「教えを乞う側」からすると、どのような心構えでいるべきでしょうか。
「師匠」である上司から学べるものはしっかり学び、盗めるところは盗むにしても、極力無駄を避けて、いやな思いをすることなく、「卒業」したいものです。
同じ話が2度3度登場する。そして、表彰された輝かしい経歴のみが語られる。
これらは、多少なりとも「盛られて」「いいところだけ」を、ピックアップして語られているケースだと思われます。
誰しも、
「他人から実物以上によく思われたい」
という思いがあるものです。
そして、
「高く評価されて、いい給料をいただきたい」
という気持ちもあるでしょう。
わが身を振り返っても、転職用の書類に、
「受賞歴」を記載することはあっても、芳しくない成績を残してしまったケースについては触れません。
そんな人間の心理を責めても仕方がありません。
どうせなら、相手の話を疑ってかかるよりも、自分にとってプラスになる部分を聞き取って、自分でも試してみるべきではないでしょうか。

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