【仮説】営業スキルでものは売れると思う、場合によっては⑥

5章 各営業スキルの代行サービス

〇テレアポ代行サービスの有用性

駆け出しの営業マンが任されがちな業務の1つに、「テレアポ業務」があります。(業界にもよりますが、営業経験の年数を経るにつれて、担当をしなくなってしまう傾向があります)1日に数百本掛けないと新規顧客へのアポイント取得につながらないことも多く、楽しみを見出しにくいことも事実です。
そのため、「テレアポ」に真剣に取り組める人物は、根気と体力が必要です。
どうしても若手に偏りがちになり、効率を考えると外部にアウトソーシングしたくなる営業業務の1つです。
(経験上から言えるのは、テレアポに関しては、「テレアポスキル向上」に関する本を数冊購入して、比較検討しながら1日数百本の電話を変え続ければ、数か月後には見違えるようにうまくなります。その他の営業スキルと違って、プロセスそのものも体系化しやすく、巷に出回っているマニュアル本も有用性が高いというのが実感です。セールスのアプローチ部分のみスキルアップするのであれば、徹底的に取り組むのも決して無駄ではないかと思います)
世の中には、そのテレアポの部分のみを外部委託し、営業業務を効率化させようとすることもあります。
若手社員に半強制的に電話をかけさせて、営業の大変さを実感させるのも育成方法の1つではありますが、その反面ある程度の離職率を覚悟せねばなりません。
それであれば、つらさに直面せざるを得ないテレアポ業務は外に出して、営業マンが疲弊しないように配慮するのも、方法としてはありです。
しかしながら、テレアポ業務を受託する会社も、いい会社を選択するのはなかなか難しいのです。
受注につながるような“確度”の高いアポイントを取得してくれるような優れた会社は、ほんとにありません。
「アポが取れました」
と報告を受けて出向いても、行った先とコンセンサスがまったく取れていないということが多発する会社、2000社以上のリストを渡しても1件もアポイント取得できない会社なども実在するからです。
(それでいて、数十万円単位の支払いを求めてくるのが実情です)
アポイント取得を外部に託すのであれば、
「しっかりとしたトークスクリプトを契約前に完成させて、アポインターには自社の商品に関して、しっかり学習させること」
は、必須なのではないかと感じます。
そうでなければ、テレアポ業務をアウトソーシングするメリットは、ないのではないでしょうか。


〇クラウドソフトで、営業プロセスを管理すること

顧客ごとの進捗状況を社内で共有する目的で、クラウドソフトを活用することが多くなりました。
その一方で、昔気質の営業部長タイプは、
「こんなものがあるから若手の営業マンが伸び悩むんだ」
と熱く語っているのを見かけます。
果たして、こうしたソフトを使い倒すにはどうしたらいいのでしょうか。
クラウドソフトというのは、非常に便利で見込み客・既顧客が大量にいる場合、その進捗をメモしておくことができます。その便利さと使い勝手の良さから、近年重宝されているのだと思います。
その一方で、
「こんなものいらん」
という主張の側の論理を紐解くと、
「上司と部下が対面で、『この案件どうなってるんだ』とやらなくなるから、営業が弱くなるんだ」
と言います。
ほんとに、クラウドソフトはいらないのでしょうか?
クラウドソフトに入力したからといって、対面で案件ごとの進捗を吟味する過程を省かなければいいと感じます。
人間、手間なことは省きたくなるものですし、
「進捗は入力しておくから、社内の人たちは、記入内容を勝手に見て確認しておいてよ」
という状態になれば、先ほどの営業部長氏のいうところの“営業の弱体化”にもつながるのでしょう。

クラウドソフトを使う主なメリットは、以下の2点です。
① 担当者の持っている顧客情報を社内で共有できる
② 顧客情報を更新したことを上長にタイムリーに知らせることができる

であるならば、徹底的に使い倒す方をお勧めします。社内の信頼を勝ち取り、自分のやりやすい営業活動につなげていくのに使い倒せば、必ずプラスに働きます。

あくまで一例ですが、若手の営業マンに対して、テレアポ業務を強いる会社に在籍している若手の営業マンだったとします。
周りを見渡すと、多くの営業が電話掛けを行っているように見せかけながら、内情としては、ほとんど取り組んでいない。
そこで、あなたは担当顧客に集中的に電話をかけていくのです。
そして、その1件1件に対する結果を次から次へと入力するのです。
上長に報告メールが自動で飛ぶ設定になっていたとすると、あなたの活動はしっかりと認識されることになります。
このようにして、戦略的に使い倒し、最終的には「やってますアピール」だけではない成果につなげていく。
この方法が、ベストチョイスであると考えます。


〇IT化は、営業マンを楽にしたか?

さて、ここ20年間の「実務」においては、どのような変遷があったかを、改めて振り返ってみたいと思います。
そもそも、昔は申込書作成など、手書きで行うことが多かったように思います。
度重なるプレゼンテーションの末、成約が決まったとすると、内容はすべて手書き。
業務量はある意味、目測で測りやすく、内容も簡潔でした。
ワード、エクセルの使用頻度は変わらなかったように思いますが、パワーポイント作成を行い、スライド形式でプレゼンテーションを行うことは、そんなに多くないという実感があります。
それが、徐々に社内向け資料にもパワーポイントが標準化され、資料作成するにも手間のかかる形になりました。
自分のプレゼンテーション資料だけならまだしも、上司や同僚の手伝いまで始めたら、「いったいいつ仕事が終わるのやら」ということも増えていきます。
手書きで素早く済ませられたことも、体裁にこだわり始めたが最後、とても時間を食ってしまい、事務作業への労力はとても増えてしまします。

また、メールへの対応も、時間と労力のかかる作業になりがちです。
ビジネス著者で
「拝受しました」
の一言を瞬間的に返信することで、相手に安心感を与えることを推奨し、自ら実践する方もいます。
かなり効率化しているメール対応方法なので、自分も取り入れたいと考えたこともありました。
しかしながら、宛名に始まり、「お世話になっております」の定型文、「宜しくお願い致します」で結ぶ形が定着している昨今、ビジネスメールを一言で返信するのには勇気がいるでしょう。
そこで、PCやスマホから返信するときにも、相手に乱暴な印象をあたえず、時間と手間をかけないようにするには、現実的にどうするかです。
その方法の1つですが、よく使う文言を登録しておき、一文字入力するとぱっと表示されるようにあらかじめセットしておくのが良いかもしれません。
また、ITに積極的な企業においては、ビジネスチャットの利用もよく見かけますが、効率的と感じる一方、言葉足らずでよくわからないと感じるシーンもあります。
対面に比べて行き違いが生じやすい気もしますので、どちらかというと伝言板の代わりなのではないかと思います。
(同じように会議を行うのであれば、オンラインミーティングツールの方が相手の顔が見えるだけ、意思疎通はしやすいのではないかと感じます)
「どのツールを使い、どの相手と、どのようなコミュニケーションをするか」
これをうまく考えて使うことも、営業マンのスキルであり、ビジネススキルになる時代であります。


〇名刺管理ソフトは、ブラック企業の営業を助けるか?

さらに、IT化の恩恵を被る企業のケースを考えてみました。
「営業の進捗をデータで残せるメリットがある」=「離職率が異様に高いケース」が思い当たります。
極端な事例になりますが、「ブラック企業」のケースです。
過去に、一度だけ「ブラック企業」の営業手法を生で体感したことがあります。
法人顧客を自社のフランチャイズ加盟に勧誘する企業でした。
展示会で見込み客に声をかけて、名刺を収集します。その後、1日に収集した名刺約500枚前後を、数人の営業マンが手分けして「会社名・部署・肩書・氏名・TEL・FAX番号」をエクセルに手入力し、その日のうちにFAX礼状を発送します。
そして、翌日には、アポイント取得の電話をエクセルデータの内容で、かけ続けるわけです。
入力作業をその日に終えなければ、礼状の送信が行いえないため、血眼になりながらも入力します。
そんな作業も、今なら名刺管理ソフトでスキャンしてしまえば、数百枚の礼状もメールで簡単に送信できてしまいます。(仮にAIやコンピューターの自動入力が当日中に追い付かないとしても、ある程度必要項目が埋まっているところに、手入力で情報を補完するだけで、送信用データが完成するはずです)
「今の時代だったら、あのつらい作業に追われることもないだろうなあ」
と思うことがあります。
法人向けの名刺管理ソフトであれば、顧客ごとの進捗も大まかに管理できますし、営業マンが次から次へと離職しても、名刺データを残すこともできます。
名刺管理ソフトも本来は、部署移動などがあっても「名刺」という会社の共有財産をうまく活用することを目的としたものです。しかしながら、数年たつとメンバーがそっくり入れ替わるような会社においてもっとも有効活用できてしまう。そんな側面もあるように感じるのです。

6章 現代に必要なものはマーケティング?

〇集客がいらなくなったベンチャー企業の話

ある30代の若手経営者に、
「一度、お会いしてみませんか」
と声をかけていただき、お話を聞いたときのお話です。
もともと、トップ営業だった人物が独立して、会社を設立したとのこと。
立ち上げてわずか数年で、全国に営業所があるくらいのスピード経営を実施しているとのこと。
「どんな営業の方が、活躍されているのですか?」
と試しに聞いてみました。
すると、
「うちでは、他の会社で活躍できなかった人ほど、うまくいきます。営業マンは集客しなくていい仕組みを作ったので、反響営業に徹することができるからです。
大抵の営業は、集客で失敗し心が折れてしまうのですが、うちでは集客は会社の役割です。
他でうまくいかないで辞めた営業マンがいたら、うちで働いてもらいたいくらいです」
と熱く語っておられたのが印象的でした。

〇WEBさえあれば、テレアポ会社もいらない

WEB集客に成功している会社の話を聞いたことがあります。
1席で10万円から、特等席だと100万円もする高額セミナーを販売するために、その会社が取った作戦。それは、セミナーのランディングページから、申込を募ることでした。
その会社には、たくさんの営業担当者も在籍しています。
しかしながら、
「その高額セミナーの価値を顧客(富裕層もしくは、経営者)に理解してもらい、申込まで至る」
ことについて、徹底的に考え抜き、集客方法をWEB集客に切り替えたとのこと。
営業マンの積極的な勧誘活動だけでは不十分と感じたのでしょう。
彼らは、ランディングページを製作するにあたり、何度も試作品をつくり、キャッチコピーに関しては約2か月もの間考え続けたとのことでした。
その結果、満席になるまで、そのページから応募があったとの話。
(彼らも、自分たちの集客ノウハウを自ら販売している立場上、多少なりとも話を盛っている可能性は否めませんが、事実に近い話であるという印象は受けました)
業種業態によっては、応用できない話ではあるかもしれませんが、WEBも“本気”で取り組めば、営業マンの代わりか、もしくはそれ以上の役割を担うように思うのです。


〇対面販売から、顔を合わせない商談に

私が在籍していた保険業界も、個人向け商品はWEBから加入できる時代になりました。
しかも、WEB加入の方が安いケースもあります。
そして、WEBだけではなく、契約期間の短いものに関しては、コンビニエンスストアでも加入できるようになりました。
(十数年前は、「営業マンや販売代理店を介せず契約するお客さんがどれだけいるか」と疑問視されていたのにもかかわらずです。世のなかの趨勢は、すぐに変化していきます)
対面の方があれこれと販売側とお話ができて、関係性を深められるように感じます。雑談などを通じて親しみも湧きます。長年のおつきあいにつながるのは、このパターンが多いとは思います。
その一方、お客さんの立場からすると、目の前にいる営業を前にドライに契約を打ち切りにくく、
「提案されている内容について疑問だ」
と感じても、率直に断るのは忍びないという心境に陥りがちです。
そういったことも一因となって、個人向けの契約については、WEBで加入するケースが増えたのだと感じます。
(ちなみに、アフターフォロー、アフターサービスも、営業を介さない方がその後の対応もいいことさえあります。各業界で、この傾向が続くようであれば、世の中全体の流れとして「個人で申し込めるものはWEBで」の流れが進んでいくと思われます)
高額の買い物でなければ、対面である必要がなくなってきているのが実感です。

〇量をこなせば上司に褒められた時代の終焉

「熱量」や「仕事を進める過程」、「成約に向けて、どれくらい行動したか」といったことが、人事考課で反映されることが今までの営業でした。
「(数字における)結果しかみない」
というドライなやり方も、完全歩合の世界では一部存在するものの、その他の営業は「頑張り度」で評価が変わることは、ついて回ったように思います。
「頑張り度」を示すわかりやすさが、どれだけ取り組んだかという「量」でありました。
人対人なので、そこには人情が入る余地が存在し、「頑張り度」で評価を上げようとすることは、ありがちな行動でした。
配属された先の上司に「弟子入り」するかのようについて回り、昼食や夜の飲み会も共にして、何とか自分を理解して、快く指導してもらえるように関係性を構築する。
「社外営業」の前には、「社内営業」の壁が立ちふさがっている。
そんなことを感じながら、過ごした日々の事は今でも忘れません。
「上司である師匠のいうことなら、何でも飲み込むぞ」
という姿勢が問われたのです。
それに対して、現代は「働き方」が問われる時代。
週刊アスキー特別号(2018.2.9)には、
『「働き方改革」を加速するITツール&キーワード』
という特集が組まれております。
中身は、ビジネス向けのチャットサービスを展開する企業「チャットワーク」が、自社では実際にどのような取り組みをしているかが紹介されておりました。
・オフィスには固定電話がない
・ペーパーレースを推進するために、プリンターもない
・引き出しのついた袖机もない
・営業も含めて、対応はメールとチャットのみ
という内容。
「電話は業務効率上を考えると悪(あく)」
という考えを徹底しており、美しさを感じます。
チャットでの業務には、やや不安を感じる面もありますが、営業職からすると、いつでもどこでもかかってくる携帯電話に比べれば、精神衛生上は楽になることは間違いありません。

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