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ChatGPTと はさみは 使いよう

chatGPTは講釈師

chatGPTは「見てきたような嘘をつく講釈師」とか「知ったかぶりAI」であるという話があります。

実際に嘘をつくことは多く「**さんについて教えて」と私の友人の名前を入れると、友人はみんな世界で活躍する経営者であったり、芸術家になってしまいました。

これじゃ「使えない」と思ってしまいますが、これは使い方を間違っているからで、うまく使えば、ものすごく優秀で、自分の能力を何倍にも高めてくれる秘書になるのです。

chatGPTはなぜ「見てきたような嘘をつく」のでしょうか。それではどう使ったら良いのでしょうか。以下のnote深津CXOの話が非常に興味深かったので、これにインスパイアされ、いろいろと考えてみました。

note深津CXOの話

あなたの仕事が劇的に変わる!? ChatGPT使いこなし最前線

生成AIがもたらすマスメディアの進化【ChatGPT/Stability AI】

chatGPTの仕組み

chatGPTはGoogleのような検索エンジンではありません。LLMとよばれる大規模言語モデルの一つです。そしてやっていることは単純そのもの。
入力された文章をもとに、次に続く単語の確率を計算して、最も確率の高い単語を、入力された文章につなげていく。
ただこれだけです。

例えば、ChatGPTに次のような命令を投げてみました。

「むかしむかし、あるところに」から始まる短い文章を10程度、作成してください。次の例のような文章です。
例:むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川へせんたくに行きました。

私の命令

これに対するChatGPTの答えは以下のようになりました。

1.むかしむかし、あるところに、小さな村がありました。村の人々はみんな仲良く暮らしていました。
2.むかしむかし、あるところに、一人の男がいました。彼は世界中を旅しながら冒険をしていました。
3.むかしむかし、あるところに、大きな森がありました。その森にはとても珍しい動物が住んでいました。
4.むかしむかし、あるところに、ある学校の教室で、生徒たちが真剣に勉強していました。
5.むかしむかし、あるところに、宝石店がありました。店には美しい宝石がたくさん並んでいました。
6.むかしむかし、あるところに、妖精が住んでいました。彼女は人々に幸せをもたらすために毎晩働いていました。
7.むかしむかし、あるところに、王国がありました。王様は国を統治するために、賢い顧問たちを雇っていました。
8.むかしむかし、あるところに、農家がいました。彼は農作物を育てながら家族を養っていました。
9.むかしむかし、あるところに、巨大な城がありました。城には勇敢な騎士たちが住んでいました。
10.むかしむかし、あるところに、神秘的な湖がありました。湖には美しい水の精霊が住んでいました。

chatgPTの答え

chatGPTの中には「文章を入れると、それに続く単語の確率を出力する関数」があります。上の例では「むかしむかし、あるところに」が入力です。これに続く単語は無数に考えられますが、関数には、命令にある例文から「昔話」という限定条件も入力されます。そこで関数は「昔話」という条件付きで次に続く単語の確率を全ての単語について計算し、出力します。

次の単語の確率を計算する関数のイメージ

この関数の出力から確率の高い単語を10個取り出し、「小さな村」「一人の男」「大きな森」などと続けたのが、上の結果です。

やっていることは単純ですが、このような関数を作るのは大変です。何十億、何兆という膨大な文章を読み込ませ、次に続く単語の出現確率が計算できるように、一千億以上ものパラメータを決める必要があります。
そのためには、できるだけ嘘の混ざっていない質の高い文章が大量に必要になります。その文章の内容もできる限り広い分野にまたがっていなければなりません。
そして文章が用意できたら、それをスーパーコンピュータ(具体的には何千台ものグラフィックボード)で、何週間も計算します。これでchatGPTの学習が終わります。

学習ができたら、使うのは簡単です。文章を入れたら、次の単語が出てくるので、それを繰り返すだけです。chatGPTは人間のように文章を理解しているわけでも、知識を持っているわけでもありません。
学習する時に入っていない情報について聞かれた場合でも、chatGPTには、その情報を持っているかどうかの知識はありません。機械的に関数の出す確率に従って文章を綴るだけです。
※あまりにも確率が小さいと「わかりません」と答えることがあります。

これが「平気で嘘をつく」仕組みです。
ある文章の次に続く可能性の高い単語をつなげるだけなので、嘘をついているという認識も、知らないことを聞かれているという認識もないのです。

chatGPTは文章の意味を理解しているわけではありません。しかし、この単純な仕組みによって、意味を理解しているとしか思えないやりとりが可能になります。見方によっては、学習した結果のパラメータが知能であると言えるかもしれませんが、人間とは違うことは確かです。

もしかしたら、人間が理解していると思っていることも、このような単純な脳神経の条件反射かもしれませんが。。。

chatGPTで検索してはいけない

仕組みの説明が長くなりましたが、「chatGPTは可能性の高い文章、つまりもっともありそうな文章を作成する」ということを理解することは、ものすごく重要です。

chatGPTは知識を何も持っていません。単語のつながりを知っているだけです。したがって、chatGPTに知識を求めてはいけません。

「**について教えて」という質問をしても、まともな答えは返ってきません。wikiにあるような一般的な答えか、あるいは嘘が返ってくるだけです。

知らないことを調べるのなら、ググるのが一番です。chatGPTで検索してはいけません。

chatGPTには命令する

chatGPTは有能な秘書です。文章を自由自在に操ることができます。例えば次のようなタスクをこなすことができます。

  • 書きたい文章の構成や筋書きのアイデアを出す

  • あなたの書いた文章をチェックし、より良くするための提案をする

  • あなたのアイデアをもとに文章にする

  • 文章を要約し、タイトルを決める

  • 企画のブレーンストーミングの相手になる

  • コーディングする

  • 翻訳する

例えば、あるテーマについての企画を行う場合、chatGPTに100の企画を出させて、次にそれの優先順位とその理由を出させることも可能です。普通ならいじめとしか思えない命令でも、文句一つ言わずにやってくれます。

深津式プロンプト・システム

上の対談で深津氏はchatGPTに仕事を命令するテンプレートを公開しています。
#命令書 :などと#から始まり、:で終わるのが指示の内容を示すマークアップ言語です。その中身をやりたいことに応じて変更します。

深津式プロンプト・システム

ポイントは以下に示す通りです。

深津式プロンプト・システムの説明

明確な指示が難しい場合や、よりよい結果を引き出すためには、下に示すように、chatGPTに逆質問をさせることも有効です。
このような指示を付け加えることで、chatGPTは回答に不足している情報をあなたに逆質問してきます。これに答えることで、より明確な結果を引き出すことが可能になります。

深津式プロンプト・システム 追加説明

ミケランジェロ

大理石の中にダヴィデが眠っている

深津氏によるとミケランジェロは次のような事を言ったそうです。
大理石の中に天使や女神が入っている。これを削り出すのが私の仕事だ。

仏像などを制作した仏師も同じようなことを言っていました。

chatGPTからoutputを引き出すのも、これと同じです。
chatGPTには何千億、何兆という文章から学習した、ほぼ無限と言える可能性が詰まっています。そこから望む回答を削り出すのが、あなたの仕事です。

どうやって削りだすのでしょうか。

それは可能性空間を限定することです。深津式プロンプト・システムで示されているように、条件をつけることで、目的にあった範囲から、文章を生成することができます。

ぼんやりとした曖昧な聞き方では、広い可能性空間から、確率の高い文章を生成するので、当たり障りのない、常識的、一般的な文章が返ってくるだけです。

chatGPTに逃げ道を与えると、ぼんやりした文章しか返ってきません。条件をつけて逃げ道がないように限定してやると、より望ましい文章が返ってきます。やりすぎると嘘が返ってくるので、そこは調整が必要です。

まとめ

chatGPTは入力された文章に続く可能性の高い単語を、次々につないでいくことで、回答の文章を作っています。人間と同じように文章を理解しているわけではありません。知識も持っていません。しかし文章を構成する単語の相互関係について、誰よりも詳しい文章のプロです。

chatGPTを検索エンジンとして使ってはいけません。検索にはGoogleを使いましょう。

chatGPTは有能な文章能力がものすごく高い秘書ですが、知識は持っていません。なので知識を聞くのではなく、命令して仕事をさせましょう。そのためには、どのようなアウトプットを求めているのかを明確にして、回答の幅を限定することが有効です。

限定するのに、深津式プロンプト・システムなどのテンプレートが役立ちます。


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