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本当の話 娘売ります

人々よ。

紹介しよう。

昭和7年3月、東アジアに忽然と出現し、昭和20年5月に跡形もなく消え去った人造国家、満州。国土面積は日本列島の3.4倍にものぼる。

昭和初期の大不況によって、「娘売ります」の看板を出さなければならないほど経済的に追い詰められた東北の農民たちにとって、五族共和、王道楽土を標榜した満州は、貧しさを脱するきっかけとなるかもしれない新天地だった。

阿片密売の総元締めとして、満州における莫大な闇利権を一手に差配し、関東軍から国民党までの信を得た里見甫。阿片王の名を欲しいままにしたその生涯を掘り起こす一冊。

極東国際軍事裁判、いわゆる東京裁判では民間人第一号のA級戦犯容疑者として法廷に立つ。

戦前、戦中とフィクサーとして暗躍した里見は、偏狭なナショナリズムとも、狂気に通じるパセティックな情熱とも、不毛なイデオロギーとも一切無縁に過ごしてきた男だったらしい。

阿片王と呼ばれながらも、私欲に頓着しない人間だからこそ、軍部にも重宝されたのか。

たった数年しか存在しなかった国家の満州だが、知れば知るほど面白いな。日本の高度経済成長を生むきっかけですらと思えてくる。

しかし、著者の取材力にはたまげるな。構想10年というのも頷ける。
ブックオフで100円で買ってごめんなさい。

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