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熱い叫び:次世代に、何を残すのですか? 吉田 宏信 (著)

知らないと恥ずかしい「人権」

SDGsは人権とつながっていた

SDGsと人権。この2つには深い関係がある。
「どんな関係があるのか?」と思った人は、SDGsか人権のどちらか、あるいはその両方を正しく理解していないかもしれない。
知らないと恥ずかしい、国際社会で必須の視点「人権」とはーー。

マイノリティの問題と考えがちな日本

 長年人権教育に携わってきた著者が、人権について「世界次世代の会」の若者たちとともに学び、考えた内容をまとめた一冊である。

 本書の冒頭で著者は、日本人の人権意識の低さを提起する。たしかに学校教育の人権で触れられていたのは、同和問題や障がい者、外国人など限られた存在だったと感じる人も多いだろう。

 性的マイノリティの権利が主張されるようになったのは、割と最近の話だ。本来、人権とは誰もが生まれながらに持っている権利のことだが、日本人が想起する人権とは、多数派に対する「マイノリティの問題」として認識されている傾向が強いように思われる。

 ところが人権は、思っている以上に暮らしの近くにある。セクハラ、パワハラはもちろん、身近なところでは、長時間労働を許容する文化や、転勤と昇進がセットになっている人事制度などは人権に抵触するといえるだろう。

 健康で文化的な生活や、居住地・職業選択の自由は憲法で保障されている。ところが日本では、それが「普通だから」「みんなやっているから」と、人権問題として捉えられていないのが実情なのである。

外圧で問題を認識する日本人

 本書は、人権はSDGsと深く関係していると主張する。SDGsと人権との間にどのような関係があるのかと思う人も多いだろう。諸外国に比べて日本でSDGsに関心を持つ人は少ないと言われているが、その原因は環境問題に矮小化されていることにあるのかもしれない。

 環境問題や、貧困、教育などSDGsが解決を目指すさまざまな課題の背景には「誰かを犠牲にしても、自分さえよければ構わない」という価値観が通底している。下請けたたきや、サプライチェーン末端の配達員の労働環境は世界中で話題となり、日本でも問題視されるようになっている。日本で芸能界における性加害が社会問題化したのも、海外メディアが発端だった。これらの事例からうかがえるのは、日本が問題を認識するのは外部からの圧力があったとき、ということだ。

 本書は人権問題に対する著者の情熱や怒りが伝わるトーンで書かれており、読者に強い印象を残す。強い思いのあまり、感情があらわになる一幕もあった。これも筆者の熱意ゆえだろう。

 あえて言えば、日本人の人権意識が低いという主張はどのような基準やデータで裏付けられているのか。また、SDGsや環境問題に関心が高い国や地域ではどのような人権教育が行われているのか。人権意識が低い人を相手にするからこそ、海外との比較や分析など外部の話があれば、より説得力が増した気がする。

 他方、今や人権はお題目にとどまらない、国際社会で必須の視点となっている。社会に対して、あるいは従業員や関係者に対して、どのような対応をしているかは企業・団体の存続に関わる重要なテーマである。

 人権とは何か、どうすれば人権を守れるのか、という問題は私たち一人一人が考えなければならないものだ。世界で日本がどのように見られているかを知る上でも、本書は啓蒙の書となるだろう。

文・筒井永英

[著者略歴]
吉田宏信(よしだ・ひろのぶ)
1939年大分県生まれ。長年、教育委員会で人権教育に携わる。


アメリカ合衆国大統領   バイデン 様
中華人民共和国 主席   習 近平 様
ロシア連邦  大統領   プーチン 様
イギリス連合王国首相   ジョンソン様
フランス共和国大統領   マクロン 様


2022年4月1日  

世界次世代の会(W-UCG)  

代表   A・フランク



~次世代に、何を残すのですか?~


 「止せーっ!」

 「止めろーっ!」「…………!」

 「止してくれーっ!」

 「止めてくれーっ!」「…………!」

 この叫びは、何時、何処で、誰が発した叫び声か分かりますか?

 これは、ロシアがウクライナを侵攻した時、ウクライナの人々が発した怒りの叫び声です。また、ロシア軍がウクライナの原子力発電施設を砲撃した時、ウクライナの人々が発した恐怖の叫び声です。

 今、地球上は、文明の爆発的な発展に引き換えて、社会環境や自然環境の破壊が進み、弱い立場に置かれた人々や動物や植物や地球が悲鳴を挙げています。


 【そのような時、次世代に住む者から、現世代の為政者や権力者の皆さまに質問をします】

 貴方たちは、次世代や後世のことをどう考えていますか?

 貴方たちは、次世代や後世のために何を残そうとしているのですか?


 【そのような時、次世代に住む者から、現世代の為政者や権力者の皆さまにお願いをします】

 次世代に住む我々は、戦争も、紛争も、テロも嫌いです。事件、事故、殺人、詐欺、横領、等々が多発する社会も嫌いです。

 次世代に住む我々は、核兵器も化学兵器も要りません。

 次世代に住む我々は、欲望と競争心が渦巻く社会には住みたくありません。

 次世代に住む我々は、荒廃した社会環境や自然環境は要りません。

 次世代に住む我々は、格差社会は要りません。


 地球上は、温暖化が進み、汚染が進み、資源の浪費が進み、気象変動が激しくなっていますが、我々は温和な地球に住みたいのです。


 「人民の、人民による、人民の為の政治」と言ったのは、第16代アメリカ大統領リンカーンですが、貴方たちは、「人民の為の政治」をしていますか?

 人類が第一次世界大戦、第二次世界大戦という二度の世界大戦を体験してから80年になります。

 世界各国は悲惨な戦争を大反省し、「もう、二度と再び戦争はしない」と誓い合いました。不戦の誓いを確かなものにする為に「国際連合」を創設し、「世界人権宣言」を採択しました。

 そして、貴方たちの五大国は常任理事国として、国際間における安全保障の責任ある立場を占めました。したがって、貴方たちは国際連合の精神を発揮して世界平和をリードする立場に在ります。その責任が果たせていますか?

 「世界人権宣言」は、全世界のすべての法の基準となるもので、本来は、これに矛盾するすべての法を無効にする力を持つものですが、「世界人権宣言」は極めて弱い立場に置かれ続けています。守られていません。

 全人類が平和に暮らすには、民主社会をつくる必要があります。そして、民主社会をつくるには、「世界人権宣言」が活かされなければならないと思いますが、いかがですか?

 世界人権宣言に定める「自由」、「平等」、「博愛」は、人類が民主社会をつくるために必要欠かせない指針です。

 しかしながら、人類はそのことを良く理解していません。

 人々は、「自由」や「平等」を権利として主張しますが、「博愛」という義務があることを頓着していません。忘れています。

 「自由」や、「平等」は、民主主義社会には大変重要ですが、これらは「水」と「油」のように相入れない関係にあります。その「自由」と「平等」を融和するのが「博愛」です。

 アメリカに代表される資本主義国は「自由」に固執し、ソビエト(ロシア)に代表される共産主義国は「平等」に固執しました。そして、博愛を忘れてしまいました。その結果、資本主義国は格差社会を招き、共産主義国は強制社会に陥りました。

 「博愛」とは、何でしょうか?

 世界人権宣言は、「博愛」を、「すべての人間は理性と良心を授かっており、互いに同胞の精神を持って行動しなければならない」と表現しています。

 「博愛」を具体的に云えば、人々が個人的利己心を克服すること、人種的偏見をなくすこと、宗教的・思想的束縛から解放されること、そして、国々は、国家的利害を克服することです。

 人類は、民主社会をつくるために最も大切な「博愛」を敬遠しているのです。

 人類は、全世界で人権学習を進めるべきです。そして、「自由」と「平等」と「博愛」をみんなで理解すべきです。

 国際連合の、そして、安全保障理事会の責任ある立場に在る貴方たちは、人類が民主主義の道を迷うことなく堅実に歩み続けられるように体制を整え、推し進めてください。


 【民主社会の綱領は、次のようなものではいけませんか?】

①すべての人間は、生まれながらに自由で、尊厳と権利とについて平等である。すべての人間は、理性と良心とを授けられており、同胞の精神をもって互いに行動しなければならない。

②すべての人間は、能力の優劣に拘わらず、みんなで力を合わせて生産を上げる。上げた生産は、みんなで平等に分かち合う。


 どうか、次世代や子々孫々の為に「住みよい民主社会」を残してください。


熱い叫び
~次世代に、何を残すのですか?~


1.「世界次世代の会」(W-UCG)誕生


(1)無責任な現世代の人々


 2021年10月10日のことである。

 蒼汰は木村君に電話を掛けていた。

 「昨夜なぁ、太田さんから電話があったよ」と蒼汰は云った。

 「えっ! 太田さんから?」「夜中に?」「嘘だろ?」

 「だって、……太田さんは、フランスにいる筈だろ?」と、電話の向こうで木村君が怪訝そうに云った。

 「それが、さぁ! パリから電話を掛けて来たんだ」と、蒼汰は云った。

 「そうかぁ、……それで、何だって?」と、木村君が聞いた。

 木村君というのは、蒼汰が最も信頼している学友である。共に大学3年生である。

 「太田さんが、『大恥をかいた』と云ったんだ」と、蒼汰は云った。

 「パリの会議でかい?」「どんな大恥をかいたのだろう?」と、木村君が畳みかけた。

 「何しろ、パリは昼間でも、こっちは真夜中だろ」

 「眠いのに起こされてさぁ。長電話には参ったよ。でも、『大恥をかいた』と云うものだから、何事かと思って、我慢して聞いたよ」

 「そうか、……災難だったなぁ。それで?」と木村君は真剣そうな声になった。

 「会議の中で、東京オリンピックのことが話題になったのだそうだ。そして、森会長が女性蔑視発言をしたことが話題に上ったのだそうだ」

 そうだった。そうだった。そんなことがあった。

 東京オリンピック組織委員会会長の森氏が、「女性が多く参加する会議は、時間が掛かる」と女性を蔑視する発言をして、日本国内ばかりでなく、世界各国から顰蹙を買い、非難の言葉を浴びせられ、大会会長を辞任しなければならないという騒動があった。

 だが、それは、もう、1年余り前のことである。

 1年前のことが、今頃になって、話題に上ったと云うのである。

 そうだった。そうなのだった。

 日本は、世界中から人権後進国と看做されており、日本人の人権感覚の無さは、全世界の人々の注目の的になっている。その為に、日本人は、いろいろな国際会議に出席しても、「人権」で足を掬われるのである。

 そうした日本の過去の事情を知らない太田さんは、国際会議の場で、不覚にも、非難の洗礼を受けることになったというのである。

 それにしても、1年余り前に日本国内であった騒動が、この度の会議で話題になったとは、どうしたことだろうか?

 「太田さんは、困っただろうなぁ! 日本人の人権に対する無感覚さが、至る所で足枷になるんだよなぁ」と電話の向こうで木村君が云った。

 「それだけでは、済まなかった」と、蒼汰は云った。

 「ええっ! 他にも、何かあったの?」

 「何処かの国の出席者が、太田さんの方を向いて、『日本の同和問題はどうなっていますか?』と聞いたのだそうだ」

 「そんなことまで、……」

 「太田さんが答えに困っていると、すかさず、他の出席者が『狭山事件はどう解決しましたか?』と聞いたのだそうだ」

 「うーん」

 「太田さんは、一言も答えられなかったのだそうだ」と蒼汰が云った。

 太田さんというのは、太田修造さんのことである。

 彼は、活動家である。大学の途中で2年間フランスに留学し、日本に帰ってからは大学に復学して、「次世代の会」というものを立ち上げようとしている人である。

 そして、この度は、2021年10月1日からフランスで開かれている「世界次世代の会」の結成会議に日本を代表して出席している人である。

 大野蒼汰と木村佑輔は、2020年の春、フランス留学から帰国して間もない太田さんから勧誘されて、早々に「次世代の会」の会員になっているのである。

 太田修造さんについては特筆することがある。

 先ず、正義感の強い好青年である。

 語学を修得していて英語とフランス語が得意である。

 彼は、2017年に大学に入学したが、翌年2018年から2年間フランスに留学している。

 留学中に、彼にはフランス人の学友が出来た。

 その経緯はこうである。

 留学して間もない太田さんに積極的に近づいてきたフランス人の学生が居た。その学生は、何かと親切に太田さんの面倒を見てくれた。だから、太田さんは、親切にされるままに親しく付き合うようになった。

 フランス人の学生の名はA・フランクと云った。

 A・フランクは、ある目的のために、太田さんに近づいたのだった。

 ある時のこと、A・フランクは、太田さんを青年たちの集まりに誘った。

 その集まりには、大勢の学生や青年たちが集まっていた。フランス人ばかりでなく、イギリス、アメリカ、ドイツ、東南アジア、中東、アフリカの青年たちも居た。

 その集まりこそ、後に明らかになったのであるが、「世界次世代の会」を立ち上げようとする国際的な青年たちの集まりだったのである。

 青年たちは、みんな純粋だった。

 青年たちは、地球存続の危機を訴える科学者たちの声を本気で受け止めていた。また、地球環境破壊を止めようとして大きい声で訴えているグレタ・トゥンベリさんや青少年たちの声を本気で受け止めていた。

 科学者や若者たちの声に触発されて、フランス人のA・フランクや各国出身の青年たちは次世代を担う青年たちの世界的な組織を立ち上げようとしていたのだった。

 青年たちは、大人世代に対して、特に、世界を動かしている為政者や権力者たちに対して、「僕たち次世代や、後世に生きる者に、破壊された社会環境や自然環境を残さないでください。住み易い地球環境を残してください」と訴えようとしているのだった。

 A・フランクは、熱心な推進者の一人なのだった。

 そのA・フランクは、「次世代の会」を日本にも立ち上げる為に、太田さんに目をつけたのである。

 彼は、太田さんに自分の考えを話すと共に、熱心に太田さんを説得したのである。

 後に、太田さんは、A・フランクから説得された時のことを日本次世代の会で話している。太田さんは次のように説得されたのだった。

 ≪「太田君、君には、『悲鳴』が聞こえませんか?

 僕には、あちらこちらから悲鳴が聞こえて来るのです。

 まず、人々の悲鳴が聞こえます。動物たちの悲鳴が聞こえます。植物の悲鳴が聞こえます。そして、地球の悲鳴も聞こえます。

 この地球上で、人類が、大変危険な存在になっています。

 人類は、今や、加速度的な勢いで破局に向かって進んでいます。大切な地球環境を破壊し続けています。

 地球は、人類や動物や植物が生存する為に必要欠かせない場所ですが、人類は、その地球環境を破壊し続けています。

 太田君、地球が人類にとってどんなに大切なところか、考えてみてください。

 地球は、46億年という永い年月を掛けて、人類や動物や植物の生存に適した自然環境を造っています。

 地球は自転しながら太陽の周りを廻っています。自転するのに1日を掛けます。太陽の周りを廻るのに365日を掛けます。そして、どうした訳か自転軸が僅かに傾いています。そのことによって春夏秋冬という四季の変化をつくっています。

 そして、地球を取り巻く大気は、人類や、動物や、植物のために欠かせない大切な役割を果たしています。

 そうした自然環境を、人類は破壊し続けているのです。地球が保有しているあらゆる資源を浪費し続けているのです。地球が保有している水質や土壌や大気を汚染し続けているのです。

 科学者や有識者たちが警鐘を鳴らし始めてから、随分年数が経ちます。

 警鐘を鳴らし始めてから久しいけれど、何時の世も、為政者や権力者たちは、その警鐘を聞こうとしませんでした。警鐘を聞く耳を持ちませんでした。ですから地球環境は今も破壊され続けています。歯止めが掛かりません。

 為政者や権力者が地球環境破壊を見過ごしている理由は何でしょうか。破壊や、汚染や、浪費が進むのを許している原因は何でしょうか。

 その理由は、欲望や競争心に駆られているからです。

 その原因は、地球環境破壊を軽視しているからです。

 地球環境は、社会環境と自然環境とに分けて考えられますが、社会環境破壊と自然環境破壊とは連動するようにして進んでいます。

 社会環境破壊は、例えば、軍備拡張、化学兵器開発等によって進んでいます。危険な核兵器開発競争によって進んでいます。

 太田君、次世代に住む我々は、「破壊された地球環境」に満足できますか?

 僕は、「破壊された社会環境、自然環境」には住みたくありません。そのような地球環境は、欲しくありません。

 でも、今、我々次世代が黙っていれば、次世代や後世代は、間違いなく「破壊が進む自然環境や社会環境」を受け継ぐことになります。

 何故なら、現世代の人たち、特に為政者や権力者は、欲望や権力欲に任せて、無責任に自然環境破壊や社会環境破壊を続けるからです。

 太田君、次世代の我々が、団結して、現世代に訴えようではありませんか。

 全世界の若者が、団結して、大人世代に強く要求しようではありませんか。

「貴方たちは、何のために働いているのですか?」

「貴方たちは、現世代のことしか考えないのですか?」

「次世代や後世代のことを考えてくれませんか?」

「次世代や後世代の為に、責任を持ってくれませんか?」

「次世代に住む我々は、核兵器やミサイルは欲しくありません」

「次世代に住む我々は、破壊された地球環境は欲しくありません」

「次世代に、住み易い地球環境を残してください」

 と、このようなことを、我々次世代が現世代の為政者や権力者に向かって、大声で訴えようではありませんか≫

 A・フランクは、熱心に、太田さんを説得したのだった。

 A・フランクから説得されたとき、太田さんは少しも異論は無かった。

 彼は、最もだと思った。

 日本国内でも、社会環境や自然環境が破壊され続けている現実を知っているし、彼は、環境保全の為に役立つことがあれば、何でもしたい思いだったのである。

 太田さんは、2年間の留学を終えて日本に帰ってから、日本に「次世代の会」を設立しようと動き始めたのだった。そして、苦労をして、日本に「次世代の会」を立ち上げようとしているのだった。

世界各地でも、熱心な同志たちの努力によって、「次世代の会」が生まれようとしていたのだった。


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