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企業におけるカーボンオフセットの取り組みと情報開示の重要性について

我が国では、2021年5月に「2050年カーボンニュートラル宣言」を盛り込んだ「改正温対法」が採択されたことを受け、国、地方自治体、企業、国民が一丸となって2050年までにゼロ排出を目指して継続的に取り組むことが国の基本理念となった。特に企業においては、事業活動に伴うCO2排出量削減の積極的な取り組みや、削減を見える形(デジタル化)で情報開示することが、原則求められることになった。
1. 排出削減の取り組みとは
 排出削減の主な取り組みとしては、自らの努力による削減を行う方法(以下、自助努力削減)がある。自助努力による削減とは、省エネ及び再エネ設備の導入、また森林管理等によるC O2吸収を促すといった比較的大規模な取り組みから、削減目標の基準設定やリサイクル活動といった取り組みまで様々ある(以下、環境省「カーボンオフセットガイドライン」を基に弊社作成)。
- オフィスでのコピー用紙等のリサイクルの実施、リサイクル用品の使用
- オフィスの空調設定の見直しや休憩時間のオフィス消灯、従業員に対する公共交通機関の利用推進活動
- オフィスや工場における再生可能エネルギー由来電力の調達
- 工場、物流等の活動における環境負荷の低減
- 原材料調達により排出される温室効果ガスの排出量や、廃棄・リサイクルにより排出される温室効果ガスの排出量の削減
- エネルギーの使用の合理化に関する法律に基づくトップランナー基準において、一定の省エネ性能の達成
- ISO14001の取得等、環境マネジメントシステム、削減計画等の確立や実施ただし、こうした自助努力による取り組みだけでは事業活動に伴う排出量削減が困難な場合、実際に排出削減を行うことができる事業者の削減活動に投資をしたり、他の場所で削減された排出量をクレジットという形で購入することで、例えば、自社の製品やサービスに付帯し消費者に購入してもらうことによって、事業にかかる排出を削減する方法(以下、カーボンオフセット)がある。

2. カーボンオフセットとは
 カーボンオフセットとは、企業等のカーボン(炭素)をオフセット(埋め合わせ)する仕組みで、大きく分けて5つの方法がある。
①オフセット製品・サービス
- 製品の製造やサービスの販売などによる排出をオフセットする。
②会議やイベントによるオフセット
- 会議・イベントなどの開催による排出をオフセットする。
③自己活動による排出量のオフセット
- 事業活動による排出をオフセットする。
④クレジット付製品やサービスによるオフセット
- 対象商品にクレジットを付加することで、購入者の排出をオフセットする。
⑤寄付型オフセット
- 製品やサービスを利用する消費者にオフセット活動へ参加することを通してオフセット活動に寄付し、オフセットする。

例えば①〜③においては、製品の使用に係るエネルギーの効率的な使い方を広報する事や、イベントの参加者に公共交通機関の利用を促すなどによって、当該排出削減の取り組みを行うことができる者に対して、排出削減を促すものである。また、④〜⑤においては、消費者に対してカーボンオフセットに際しての排出削減の取組の重要性を伝える啓発を行う必要があるが、消費者のGHG排出量のオフセットを支援したり、カーボンオフセットの取組に消費者等が気軽に参加できる機会を提供する取り組みでもある。

3. カーボンオフセット実施の際の注意点
(1)オフセット量の決定
企業は、クレジットを無効化しなければカーボンオフセットは完了とならないため、注意が必要である。無効化においては、まず排出量を算定した上で、オフセットの対象となる排出量(オフセット量)を決定する必要がある。
例:上記①〜④におけるオフセットの場合(環境省「カーボンオフセットガイドライン」から引用)。
<例 算定した排出量が20 t-CO2の場合>
- オフセット量20t-CO2(オフセット比率100%)
- オフセット量25t-CO2(オフセット比率125%)

<例 クレジット付ボールペンを販売>
- ボールペン1本につき、購入者の1日当たりの排出量約6 kg-CO2を売上本数分オフセット
- ボールペン1本につき、購入者の15日間のテレビ視聴に伴う排出量2.6kg-CO2を売上本数分オフセット

例:上記⑤におけるオフセットの場合(環境省「カーボンオフセットガイドライン」から引用)。
<例 商品1個につき1円分をクレジット購入費用に充当する場合>
商品の販売数×1円=クレジット購入費用※
※ 全額クレジット購入代に充当しなくてはなりません。
<例 キャンペーン1アクセスにつき1kg-CO2をオフセットする場合>
アクセス数×1kg=オフセット量

(2)クレジットの調達と無効化
 クレジットの種類としては、国の制度下で発行されるJ―クレジットや都道府県などの制度下で発行される地域版J―クレジットなど様々な種類がある(詳しくは弊社のホームページを参照のこと)。なお、オフセット量の決定に必要となる排出量の算定から、クレジットの調達〜無効化までのプロセスにおいて、自ら各種制度におけるガイドラインに基づき、算定、クレジット購入〜無効化の手続きを行うことも可能であるが、弊社が提供しているオフセット支援サービスを活用して実施することも可能である。

(3)情報開示
カーボンオフセットの取り組みを行う際、取り組みの透明性や信頼性を高めるために、できる限り多くの情報を一般公開することが推奨されており、具体的には以下に示すような内容を情報開示することが望ましいとされている。特に、実際の事業活動に伴う排出量や、削減の取り組み結果などについては、より正確な算定方法に基づいた数値の開示や、よりわかりやすい形での情報提供がなされることが、今後、消費者や事業関係者に対する企業の信頼性を確保するために必要不可欠となっている。

全般
l   カーボン・オフセットの対象活動の内容
l   オフセット主体
排出量の認識
l   カーボン・オフセットの対象とする活動の範囲
l   対象活動内の温室効果ガス排出源
l   算定対象範囲
l   算定方法(算定式及び算定方法の根拠とした文書)
l   算定排出量
排出削減
l   温室効果ガス排出削減の取組内容
l   温室効果ガス排出削減を促す取組
埋め合わせ
l   オフセット量又は算定排出量に対するオフセット比率
l   クレジットを認証した認証制度名とクレジットの種類
l   クレジットのプロジェクト名(プロジェクト実施国・実施地域等の属地的情報を含む)
l   クレジットのプロジェクトタイプ (風力発電、木質バイオマス燃料転換、森林管理等)
l   クレジットの無効化(予定)日・無効化方法
その他必要事項
l   商品・サービス、又は会議・イベントのチケット等の販売価格
l   消費者の価格負担(料金への上乗せ)の有無
l   その他支払いに関する事項(申込みの有効期限、不良品のキャンセル対応、販売数量、引渡し時期、送料、支払い方法、返品期限、返品送料等)
l   販売事業者情報(販売事業者名、運営統括責任者名、連絡先(所在地、電話番号、e-mail)、ウェブサイトリンク先)

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