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コミュニティマーケティングとは?

最近「コミュニティマーケティング」という言葉をよく聞くようになりました。抽象的な概念でよく分からない人も多いと思うので、それを明らかにしていきたいと思います。

1. コミュニティとは?

コミュニティと聞くとみなさん何を思い浮かべるでしょうか?学校、職場、サークル、地域など色々あると思います。

「Community」という言葉は「共通・共同」を意味する「Common」に、性格や状態を表す名刺語尾である「ity」を付けてできている言葉です。

共同体意識を持って共同生活を営む一定の地域、およびその人々の集団。地域社会。

という定義が三省堂の辞書でされていますが、今ではそれがオンラインなどの仮想空間でも可能になっているため、近接性が必須ではなくなり、

共通の目的や関心を持ち、コミュニケーションを行う人々の集まり

という意味でも使われ始めています。


2. コミュニティの成立要件

ではコミュニティが成立する要件として何が挙げられるでしょうか?

目的、メンバー、活動、ルールの4つが必要だと考えています。

例えば、高校の野球部をコミュニティとして考えてみます。

①目的

多くの場合は、全国大会の地、甲子園に出場して優勝すること、すなわち高校野球で日本一になることを目指して、野球が好きな高校生が集います。

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②メンバー

新入生を毎年招き入れ、3年生で最後の大会が終わると抜ける仕組みです。基本的にその高校の生徒である限りは入会することができます。

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③活動

部員はほぼ毎日、選手同士でコミュニケーションを取りながら、目標の達成に向け、協力し合ってトレーニングを行います。

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④ルール

練習では声を出す、グランドを使い終わったら整備する、髪の毛は坊主にするなど部員が守るべきルールを監督を中心に定め、逸脱する部員がいれば、注意を促します。

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目的、メンバー、活動、ルールの4つが機能している場合は、コミュニティは続いていき、それがなくなると安定した運営が難しくなり、消滅する仕組みになっています。

例えば、下記のように様々な単位でコミュニティは存在します。

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コミュニティには所属のメリットが存在し、入会の理由になっています。

運営する上で特に難しいのは、普段の活動をどう設計するかです。野球部を例にとると、以下のような発展プロセスを辿ります。

・ある生徒が「野球部を作りたい」と考え始める。
・「甲子園を目指す」という目標を掲げる。
・ポスターを校内に貼り、練習の場を提供し始める。
・野球部に関心を持った学生に、会員として入会してもらう。
・入会後は毎日の練習を通して、会員同士の繋がりが出てくる。
・徐々にコミュニティの中心となる熱量の高いメンバーが出てき始める。
・「練習時間を増やそう」など活動の質を高める行動が自発的に生まれる。
・野球部を作った生徒が関与しなくても、運営できるようになる。

コミュニティは創設者による価値提供から始まります。最初は個別にコミュニケーションを取っていくため、1対Nの関係が成立します。

そこに、会員同士の交流が生まれる仕組みを入れ、1対Nの関係からN対Nの関係が生まれるように、コミュニティを徐々に進化させていきます。

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芸能人のファンクラブが、運営元から提供される情報だけでなく、ファン同士の交流があることが楽しみの1つになっていることから、N対Nのイメージは湧くと思います。

また、会員のコミュニティへの熱量や愛着が高まり、創設者(コミュニティマネージャー)が担っていた役割を代替し始めると、運営キャパシティの限界が無くなるので、コミュニティは自走し、大きく成長していきます。

3. マーケティングへの活用

このようなコミュニティの仕組みが、最近マーケティング分野で注目されています。

コミュニティマーケティングはコミュニティ運営に「マーケティング」の要素が加わります。

そのため、定期的な活動を通してコミュニティを維持をすればいいだけではなく、商品やサービスを売ることが前提になってきます。

商品を熱狂的に好きになってくれた会員をまとめ、その人たちがコミュニティの外へ向けて接触的にアウトプットする機会を作って認知を広げ、会員を増やす仕組みを作り上げる必要があります。

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従来のマーケティング手法と比較してみます。

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コミュニティの運営は、特にSaaSビジネスに効果を発揮します。ファンの存在によるリピート購買がLTVの向上に繋がるためです。

また、スタートアップ などが取り扱う新商材で使い方が分かりにくい場合にも、コミュニティを持っていれば、会員が教え合うことで、理解を促すことが可能になります。

一方で、一度に大量のユーザーへの認知拡大はできないので、販促のスピードは落ちます。

但し、影響力のあるオピニオンリーダーをコミュニティに招き入れられれば、ボウリングのピンを倒すように、その周辺に一気に拡散させることができます。

多額の広告費を必要とせずに取り組める施策です。


4. 具体的事例:AWS

ここからはコミュニティマーケティングの具体的な事例を見ていきます。(出典:ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング)

以前は重たいサーバーを自社保有する場合が多く、企業向けにAWSの普及を目指していました。当時、営業の人数が限られており、ユーザーが自分達で学んで使い出すセルフサービスにしたいという理由でコミュニティ作りからスタートすることを選んだそうです。

まず初めに、2ヶ月程度かけて50人以上の人に会い、コミュニティの初期メンバーとしてリストアップしました。

そこから、AWSに好意的な反応を示してくれている人や、クラウドサービスに関する解説本を書いている人など、本当にコミュニティ作りを進めていきたい人を20人ほど選び、ミートアップを開催しました。

そこで「日本にAWSのユーザーコミュニティを作りたい」「AWSを使えばもっと楽に仕事を進めてもらうことができる」と伝え、具体的な目標として「AWSに関する情報が日本語で検索できるようにすること」を掲げました。

ユーザーの読解コストが大きく、コミュニティで導入時にハマった点などを共有できるようにしました。その結果、AWSやコミュニティの情報がネット検索で引っかかり始めるようになり、潜在ユーザーとの接点もできました。

Japan Amazon Web Service - User Groupという名前やサメのロゴを作りました。メンバーにはシールとして自分のPCに貼ってもらうなどして認知拡大の仕組みの1つとなっています。

AWSコミュニティは、3ヶ月に1回の頻度で以下のような勉強会をオフラインで2時間程度で開催していました。

・AWS側からのメッセージとアップデート情報の共有

・ユーザーによる事例紹介(メインのコンテンツ)

・ライトニングトーク(自由なテーマを持ち寄って発表)

勉強会が終わった後は、懇親会へ行き、ユーザー同士の交流を促すと同時に、コミュニティのリーダー候補を発掘していました。

また、オンラインではAWSのイベント情報や質問などを、Twitterでコミュニティ外に向けて発進したり、Facebookグループでメンバー間の交流をさせることでコミュニティを活性化させていきました。

コンテンツを配信する人は、受け取った側から「すごいですね、ありがとうございます」など感謝の言葉がもらえることや色々な形でビジネスリターンが増えるので、どんどん活動にハマっていく方もいたそうです。

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また、勉強会の様子を動画配信することで地方ユーザーへも認知を広げ、地方でのイベント開催も行われるようになりました。

コミュニティが大きくなってくるとマネジメントが難しくなってくるので、AWS初心者、セキュリティに特化、女性エンジニアなどグループが関心軸で自然に分かれていきました。

スタートしてから8年目にして、年間で勉強会の開催数は260回、参加人数は9300人に達しています。毎回新規参加者が40-60%くらいはいることでコミュニティの拡大を確認しています。

AWS以外の他社クラウドの話もしたいという提案もあったそうですが、そういう動きについては「コミュニティの名前や場所を変えてやってください」と伝え、コミュニティが歪まないようにルールを設けていました。


5. 具体的事例:ヤッホーブルーイング

コミュニティマーケティングはAWSのようなサービスでなく、商品でも活用することができます。

ヤッホーブルーイングは軽井沢のクラフトビールの製造会社で「よなよなエール」を商品として販売しています。

年に1回、全国から軽井沢に5000人以上が集まるイベント「超宴」を開催しています。

ここでは、クラフトビールの試飲に加えて、ビールの好きなファン同士で繋がって盛り上がることができます。食事、音楽、オリジナルグッズを作るワークショップ、商品についての解説などのコンテンツも用意されています。

イベントへの参加者は「このイベント楽しい」「このビール美味しい」などとSNSにアップすることで「自分も試してみようかな」と思う人を増やしてくれます。

超宴KV

これらのイベント企画はやッホーブルーイング の社員ではなく、熱量の高いファンを中心に行われています。

イベントを始めたのは、ユーザーインタビューを通して、熱狂的な自社のファンがいることに気づいたことが、きっかけだったそうです。

2-3年にわたってハーレーダビットソンというバイクのブランドのファンコミュニティを研究してイベント開催に行き着きました。(出典:https://agenda-note.com/brands/detail/id=651&pno=0)

2010年に40人規模のファンイベントを初開催し、徐々に規模を大きくし、今では5000人まで増えています。

ファンの「感動した!」「こんなの見たことない!」「すげえや!」という感動を大事にしていて、好き嫌いが如実に表れるのがいい、記憶に残らないのが一番ダメ、賛否両論あるのはかえって良いという発想で商品開発をしているそうです。

商品価格は、競合他社のおよそ2倍、大々的なマス広告は一切展開していない状況で、日本市場で右肩上がりの成長を続けています。

6. まとめ

今回はコミュニティマーケティングについて見てきました。導入手順をまとめると下記のようになります。

①質の良い商品やサービスを作る

②熱狂的なファンを獲得する

③ファン同士で交流しながら、商品/サービスの「体験会」や使い方の「勉強会」ができるイベントを用意する

④イベント参加者をSNSでグループ化する

⑤イベントの様子をSNSで参加者に拡散してもらう

商品やサービスの展開においてぜひ活用してみてください。


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