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障害のありか

自分ではなく、他者の障害について話すことは難しい、これは言わない方が良いかな、そんな風に思ってしまう時があります。しかし、それは、障害がその人にある問題だと思っていることになります。
その人に障害があるのでなく、何がその人にとって障害となっているかを、考えてみる必要があると思うのです。

補う方法

生まれ持った体の機能を変更することは難しいですが、例えば目が悪かったら眼鏡をかけるように、何かで補えれば、やりたいことができます。眼鏡を使うことで、学んだり情報を得たりすることができ、そのことから人生の選択肢が広がります。
また、加齢や体調の悪化で筆記が難しくなり、伴侶の口述筆記により多くの作品を残された三浦綾子さんのような作家も、昔からいらっしゃいます。生まれ持った条件だけでなく、人生の間に身体機能が変化することもありますね。何か困りごとがあっても、必要なことを補えればそれは障害とはならないのではないか?

人と人が補い合う

あしおとでつながろう!プロジェクトの現場で、男の子と女の子が出会い、友達になったことがありました。便宜的に分類するならば、男の子は視覚に障害があり、女の子は発達に障害があります。

大人も子どもも40名ほど混在するイベント内で、男の子は抜群のセンサーでその女の子に気づいたようでした。すぐに仲良くなり、次に見たときにはもう二人は手をつないでいました。すっかり意気投合、おしゃべりも盛り上がり、休憩時間になると、空いたスペースで二人は鬼ごっこをはじめました。

鬼ごっこはどちらが鬼になってもスムーズでした。鬼の時の男の子は、聴覚と空間把握力で女の子の位置を察知して追いかけ、逃げる時は女の子の気配から逃げ続けて大はしゃぎ。そして次に、遊びはかくれんぼになりました。女の子が片隅に隠れて静かにしたので、男の子は彼女の気配を見失いました。隠れるといっても、女の子はぴょこぴょこと顔を出し、男の子が見えている、それなのに男の子はなぜか自分を見つけられない。この時まで女の子は男の子が視覚を使っていないことに気づいていなかったのでしょう。しばらく様子を見ていた女の子は、ふと「キュルキュル〜」と声を出しました。男の子の表情がパッと変わり、「あっ、こっちかな?」と「キュルキュル〜」の方へ近づいていきます。女の子も、声を出すことで遊びが成立したのでとても嬉しそうで、「キュルキュル〜」と音を出しながら今度は別の場所へ移動しました。それを男の子が追います。新たな遊び、”音かくれんぼ”が始まりました。

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対等に補い合う経験

この二人の間で起きていたのは、支援ではなく、遊びを成立させるための対等な補い合いです。もしも大人が場を支配していたら、配慮してやめさせてしまったかもしれないかくれんぼ。遊びがちょっとつまづいたことから、ごく自然に”音かくれんぼ”に発展したのです。

この様子を見ていて、やはり”対等に遊ぶ体験が少ないこと”がさまざまな壁を生む要因なのではないか、と思いました。
子どもが、一人で自分のことをできるようになるために、自立の訓練も必要なことはわかります。それが、今後広い世界を知るために必要なことも。けれど、常に共に遊んで、自然にお互いを補い合う経験があれば、障害という壁は低くしていけるのではないでしょうか。そしてこの経験は、多国籍・多文化などでのコミュニケーションをスムーズにすることにもつながると考えています。

このように、イベントでの出来事から学びながら、「あしおとの輪」というタップダンスによるインクルーシブコミュニケーションのプログラムを、街中に広めていきました。2011年〜2018年までの記録はこちらに残してありますので、よかったらご覧ください。

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また、2018年のメッセンジャー事業「あしおとで遊ぼう!おどりの輪」イベントの記録は、イラストレーターのまえだなをこ氏の現地リポートをイラストブックの形でまとめてあり、日本語版(カラー製本)と英語版(白黒簡易印刷)を作りました。
「あしおとの輪」HOW TOとして、遊びに取り入れる際のコツなども掲載しておりますので、ご興味ある方は是非お求めください。

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タップダンスによるコミュニケーションプログラムを構築し、あらゆる人が対等に表現しあうための案内人“メッセンジャー”を設定、福祉施設のタップ…

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