見出し画像

メッセンジャー事業に至るまで

まず、メッセンジャー事業とは何でしょう?

・障害のあるタップメンバーがプログラムの案内役を担う
・平均的なことが基準となっている場に赴く
・違いは面白い!個のあり方を尊重しあうコミュニケーションは楽しい
・誰もが対等に価値のある存在であることが遊びながら体験できる
・この体験から障害の有無ではなく個人をみる目が養われる
・体験者が次のメッセンジャーとなる

このような目的の元、2018年と2019年、街中のイベントや学校の人権授業などに、おどるなつこと障害のあるメッセンジャー2〜3名が赴いて、パフォーマンスとワークショップを行ったものです。

画像1

東京新聞横浜版2018年9月7日

障害のあるタップメンバーとの関係性の変化

私おどるなつこは2010年より福祉施設内での毎月5コマ100名とのタップセッションでプログラムを開発してきました。このセッションと並行して、2011年東日本大震災以降は、福島県内の福祉施設、宮城県内の仮設住宅や保育所を訪問。
この後2012〜2018年には、仙台市芸術飛行船ARCT芸術家派遣事業(文化庁主催/被災三県対応版)に関東から参加し、小・中・高・支援学校や幼稚園、保育園、学童保育所で上記プログラムを重ねてきました。主に下記の構成で、ワークショップ部分に、施設のタップセッションで重ねてきた手法を応用しました。
・40分パフォーマンス 10分休憩 40分ワークショップ
・出演:おどるなつこ/タップ えんどうえこ/フラメンコ ほか関東のダンサーとミュージシャン
・制作 コーディネート テクニカルは仙台メンバー

画像2

テーマから少しそれますが、下記リンクは初期ARCTと呼ばれる、ARC>T(Art Revival Connection TOHOKU)が2012年までの東北で演劇関係者を核に行った活動のアーカイブです。冒頭の呼びかけ文が、震災10年目のコロナ渦中にも響きます。


上記活動を並行していた2017年夏まで、私は「参加する方をリラックスさせ、楽しんでもらえたら」という気持ちが強かったと思います。パフォーマンスが本業でしたので、それこそがプロフェッショナルだと思い疑いがなかったし、共演者のご協力のもと毎回楽しんでいただけてそれはそれでよかった。ただ、そのことで社会を変えられる気配はなく、モヤモヤもしていました。このままでは、アーティストの有償ボランティア活動なだけではないだろうか?

この活動の外側で、交流が深くなった福祉施設が、仙台の多夢多夢舎中山工房さんでした。仙台での制作打ち合わせによく多夢多夢カフェを利用していましたが、初めに深く関わったのは、小学校でのプログラム実施後に、多夢多夢カフェでもうひと公演した時だと思います。共演者も多く彩り豊かなプログラムでしたのでとても喜んでくださいました。

画像4

以降、来仙の折にはカフェに寄り、2015年の年明けには多夢多夢舎メンバーが山元町のイチゴ農家支援イベントに出演する際に客演させていただきました。

その2015年末にSENDAI KOFFEEで行なったライブ「まちのうた」にも多夢多夢舎メンバーのお顔がありました。普通に再会を喜んでいた私は「彼女は、お母さんに『クリスマスプレゼントは何がいい?』ときかれて『なつこさんたちのライブに行きたい』と答え、それで今日お母さんも一緒にここに来ているんだよ」と伺い驚きました。“ライブに行く”ということの価値の重さから障害のある人とアートの距離を実感した、忘れられないエピソードです。この方が郁美さんでした。

さて、2017年の秋。
ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017第2部で、通りすがりの親子などが多く参加した屋外広場でのワークショップ開催時に「障害のあるメンバーが踊ると平均的な人々の緊張がほぐれるのが早い」ことに気づきました。そして次のイベントを企画中に思い浮かんだのが郁美さんです。2015年の山元町イベントでも共演し、即興表現が素敵で対等に立てることを経験済みでしたし、ゲストに迎えられないだろうか?ゲストミュージシャン大和田千弘のピアノと出会ったら何が起きるかしら?

この頃多夢多夢舎さんでは「タムタムと、めぐるトワル」というプログラムで全国を巡られていたので、この打診はスイスイと実現に向かいました。まず支援者を通してテレビ電話をつなぎ、郁美さんに説明と打診をしご快諾いただき、「あしおとであそぼう!vol.4 あしおとの森 ヨコハマ・パラトリエンナーレ第3部」企画が固まりました。

画像3

障害のあるゲストの宿泊案件

当時私は鎌倉市内のシェアハウスに居住しており、郁美さんと支援者の宿泊も我が家にすることができました。あらかじめ支援者が下見訪問され、スケジュールや宿泊の注意などを打ち合わせ、宿泊する部屋の写真なども郁美さんに共有。気を配ったことは以下でした。
・1対1異性支援のため、宿泊部屋は別室、必要な時はおどるなつこがサポート
・保護者から体調についてのお手紙あり

そのようにして迎えた開催前日。仙台から横浜まで移動された後、まず会場入りして居場所やステージ環境を見ていただき、進行スケジュールも確認。他の出演者には会場写真とスケジュール確認の送付のみとしたため、顔合わせは当日のお楽しみになりました。翌日の本番をイメージできたところで、宿泊はリラックスして過ごしていただけるようにし、本番を迎えました。
この時の様子は、多夢多夢舎さんの報告としても上がっています。

長丁場にも関わらず、郁美さんが安心して力を発揮されたことが何より嬉しく、ホッとしました。
私はこの時初めて、障害のあるメンバーを共演者と考え、ゲストとして招きました。この経験から、やっと、私にとっての“対等”とはどんなことかわかったように思います。
郁美さんの即興はこちらでご覧ください。

このイベントは、ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017第3部に位置付けていただいたことで、多くの協力者・参加者があり、あしおとでつながろう!プロジェクトからの障害のある参加者も、施設の枠を超えた交流が始まっていきました。思えばこのイベントが、2018年度から本腰を入れることになる「メッセンジャー事業」の初めの一歩となりました。

・本人の意思や意欲を確認しながら進めること
・障害のある出演者の宿泊とヘルパーの存在
・前日夕方入りし現地確認〜宿泊して本番後当日帰りのスケジュール

核になる上記のことがすべてスムーズに行えていたので、翌年に初っ端からつまづくことになるとは思っていませんでした!
ということで、ここから2018年度メッセンジャー事業の報告に続きます。



いつも応援いただきありがとうございます。サポートは活動維持費に使わせていただきます。どうぞよろしくお願いします!