見出し画像

平沢進「AURORA」

1994年発売4枚目のオリジナルアルバム。前作から3年ぶりのオリジナルアルバムで本作はそれ以前のようなバンドサウンド的な作品とは大きく変わり、全体的にシンフォニックな作風となっているほかに、前作までゲストミュージシャンを招いた音作りだったのがすべて平沢の手によるものになりこのアルバム以降のソロ作品は全て平沢による独力となる。また本作は自身のバンドP-MODELと差別化を図る為、サウンドではなく歌を重視しているらしい。
次回作のアルバム制作時に平沢が訪れたタイに大きな影響を受け、以後自身のアルバムにタイ要素を現在に至るまで大きく取り入れていくため実質平沢がタイの影響を受けずに制作された最後のアルバムともいえる。
ちなみに平沢名物「インタラクティブ・ライブ」は本作のアルバムのツアーから始まった。意外と歴史が深い…。
余談だが、自分は平沢のアルバムの中で一番大好きなアルバムである。

収録曲

石の庭
作詞・作曲 平沢進
幻想的なまさにシンフォニックという単語が似合う全体的にハープのような音色がより神々しさを増す曲。歌詞は前世の記憶を思い出すという輪廻転生をテーマにしていると思われる。

LOVE SONG
作詞・作曲 平沢進
全体的な印象はシンフォニックな子守歌といった感じのサウンドで、風のような音が小さく鳴る感じが切なく、囁く様な歌い方がちょっとしたリラクゼーション的な曲。歌詞の内容は戦地にいる子供達を歌った平沢流ラブソング。終盤の淡々と歌われる歌詞の繰り返しがどんどん風砂の音に紛れて消えていくような様は戦地で亡くなった人たちがそのまま傷つき痛々しくなった肉体だけを残して魂が消えていくようなものを感じる。非常に美しい曲だと思う。
2003年に「LOVE SONG 2003」としてセルフカバーヴァージョンが無料配信された。おそらく当時勃発してしまったイラク戦争への抗議の意としてだろう。

オーロラ
作詞・作曲 平沢進
アルバム表題曲でサウンドは非常にスピーディーでゾクゾクと近づいてくる感じが最高に堪らない曲。歌詞は例えるなら、漫画やゲームなどの主人公が決意と覚悟を決めて旅立つ事を歌っているという印象を持った。そう考えるとやっぱりドラマチックでかっこいい曲だ。
「祈るなら今は 願いが叶うと」と「目をみはれ今は 夜が歌う時」の部分の歌詞が特にカッコよく、その部分のバックで流れる情熱的なメロディは鳥肌もの。
2001年にはセルフカバーアルバム「SOLAR RAY」に「オーロラ2」、2006年のライブ「白虎野」では「オーロラ3」という題でセルフアレンジされたバージョンが作られ、特にオーロラ3は以降のライブでも頻繁に演奏される。

力の唄
作詞・作曲 平沢進
民謡チックなメロディでどこか日本古来からありそうな昔の偉人が書いていそうな歌詞と曲という印象。個人的にはどこか都会から離れ、郷土的な職人達が力強く物作りに励むイメージが浮かぶ。
「月の夜は 虫たちの弟子となり」という歌詞が印象的でこんな表現普通は出てこない…相変わらず文才すぎる。

舵をとれ
作詞・作曲 平沢進
これまた力強いドラマチックなシンセのメロディと歌詞が特徴で冒険心に駆られる印象。心なしかこの曲の平沢の歌い方はソーラン節のあの感じのような力強さを感じ、特にサビの「舵をとれ」のループは応援とも捉えられる。あくまで個人的なイメージだが「オーロラ」の主人公が船を漕ぎだして激しい荒波と悪天候の中冒険に出るという続編的な繋がりを感じる。
間奏のストリングスはまさに荒波のような荒々しさを感じ、頭の中で勝手にムービーが浮かぶ。
ちなみに「BERSERK -Forces-」のもとになった曲。
2015年のライブ「WORLD CELL 2015」で「舵をとれ2015」として、2017年の配信「第6フォルマント」でセルフカバーされている。

スノーブラインド
作詞・作曲 平沢進
詩的の歌詞といい、幻想的な夜空か宇宙のようなサウンドといい、平沢の「イーハトーブ」といい、凄く宮沢賢治の影響が強そうな曲。個人的に「目を閉じて」の部分が大好きで、ここの左右から聴こえてくる宇宙的なサウンドがまた心地よく癒される。

風の分身
作詞・作曲 平沢進
アカペラから始まる全体的に賑やかで爽やかな曲。平沢流讃美歌といったところか。ちなみに平沢曰く「一度もライブで歌われていない曲」らしい。

広場で
作詞・作曲 平沢進
「風の分身」同様平沢流讃美歌という印象(むしろこっちの方がそれっぽいか)の曲。間奏は珍しくアコースティックギターによるギターソロとなっている。神々しい曲調とは裏腹に「デジャヴ」「ダメ」「バツ」と比較的くだけた言葉が割と使われているのが気になった。
2001年にはセルフカバーアルバム「SOLAR RAY」に「広場で2」として収録されている。
余談だが、基本的に自分はどのアーティストに対しても歌詞よりもサウンドを中心に聴くが、この曲はサウンドよりも歌を重視して聴いてしまう曲のひとつ。実際カラオケで歌うと結構気持ちいい。

トビラ島(パラネシアン・サークル)
作詞・作曲 平沢進
13分29秒という自身最大の大曲。二部構成のようなつくりになっており、枯れ葉が舞う様なSEから始まり、しばらくおどろどろしくゆっくりとメロディが流れ、囁く様な声で歌い逆にサビでは叫ぶように響かせている。そして終盤に差し掛かるあたりで静寂が訪れ、疾走感あるサウンドが徐々に迫る感じで挿入され、平沢がお経を唱える様な歌い方とスピーディーなテンポのメロディが駆け巡り、曲が終わると冒頭のようなSE混じりの静寂で終了する。終盤に差し掛かるあたりで登場する「パラネシアン・サークル」はまるで何かを呼び起こすような復活の儀式のように聞こえる。歌詞もどこかの国もしくは部族の野蛮な儀式のような内容になっており、少々物騒な感じ。
平沢曰く「タンジェリン・ドリームの真似」らしい。
ちなみにトビラ島は実在するらしく、鹿児島県奄美市住用町市集落沖という場所に市集落の正面に浮かぶ島らしい。
2010年発売のアルバム「変弦自在」にセルフカバーが収録されている。
自分が平沢の曲の中でもっとも大好きなのがこの曲で、最初に聴いた時のゾクゾク感は感動のそれに近く今でも覚えている。

呼んでるベル
作詞・作曲 平沢進
曲の雰囲気は宇宙といった感じで、まるでアトラクションを終えた後のエントランスのような雰囲気が漂う(「トビラ島」をアトラクションと考えるとちょっと納得)。最後は静める様な小休止的な曲でこのアルバムは終了する。

現在所有しているアーティストCD・音源(邦楽編)
https://note.com/odmssyw/n/n4d7ea2d38165

現在所有しているアーティストCD・音源(洋楽編)
https://note.com/odmssyw/n/n9e4b10ae1dce

現在所有しているアーティストCD・音源(その他)
https://note.com/odmssyw/n/n34964b507575

現在所有しているアーティスト DVD・Blu-ray
https://note.com/odmssyw/n/n47d6b0d7eb31

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?