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たま「さんだる」

1990年発売たまのメジャー1枚目のアルバム。各々ミュージシャンとして活動していた知久寿焼、石川浩司、柳原幼一郎(現:柳原陽一郎)が1984年に結成した伝説のバンドである。1986年に同じくミュージシャンとして活動していた滝本晃司がベースとして加わり4人による活動をスタートさせる。インディーズでナゴムレコードから「でんご」と「しおしお」を発表した後、深夜の人気番組であった「三宅裕司のいかす天国」に出場し見事14代イカ天キングに輝いた事により、一夜にして大ブレイクを果たした。そんな中発売されたのがメジャーに進出しアクシックから発売された本作である。本作のアルバムに収録されている曲の多くは過去にインディーズから発売したレコードに収録されていた曲のリメイクである。
たまの特徴はメンバー4人が各々の楽曲を制作し持ち寄り、たまとしての音に変える点であろう。また4人全員が各々メインボーカルを担当する点も魅力的であり、あまりこういうスタイルのバンドはいないと言っても過言ではないだろう。
ジャケットはメンバーの知久寿焼によるデザイン。

メンバー
知久寿焼・・・ボーカル、ギター、ハーモニカ、マンドリン、リコーダー、 プロペラ、ホイッスル、パーカッション、コーラス
柳原幼一郎・・・ボーカル、アコーディオン、オルガン、ピアニカ、ピアノ、リコーダー、プロペラ、コーラス
石川浩司・・・ボーカル、パーカッション、リコーダー、ラッパ、コーラス
滝本晃司・・・ボーカル、ベース、プロペラ、コーラス

収録曲

方向音痴
作詞・作曲 知久寿焼
ナゴムから発売されたレコード「しおしお」に収録されていた曲のリメイクで、原曲のイントロはボーカルの前にアコーディオンのフレーズが入る。
軽妙なテンポとメロディが特徴だが、それとは裏腹に歌詞はなかなか物騒でちょっと悲しい雰囲気が漂う。
最後の「やんやんやややややーん」の部分が楽しそうで和む。
後にシングル「星を食べる」のカップリングとして収録される。

おるがん
作詞・作曲 知久寿焼
知久曰く、病気で死にそうな子供が頼んでもいないのにオルガンを弾き始める祖父に対して嬉しい顔をしようとするという歌らしく、非常に悲しい詞となっており、特に最後の歌詞がかなり切ない…。
最後の「うれしい顔がちゃんとできない」の部分の知久と石川が一緒に歌う
後に遅れて柳原と滝本が一緒に歌うところが好き。

オゾンのダンス
作詞・作曲 柳原幼一郎
たまの中でもノリノリな感じなテンポでつい体を揺らして踊りたくなるような曲。石川の合いの手が非常にたまらない曲その1。「しおしお」に収録している曲のリメイクで両者比較すると歌い方が異なる部分がある。
イカ天出場3週目に披露された。後にシングル化もされた。

日本でよかった
作詞・作曲 滝本晃司
スローテンポなオルガンのリズムと歌い方も相まってなんかエロい曲。
滝本曰く、市役所で戸籍謄本を取りにいったときに「日本でよかった」と思ったことがきっかけで制作されたらしい。

学校にまにあわない
作詞 石川浩司
作曲 たま
このアルバム唯一の石川歌唱曲。8分2秒もする曲。テンポが割とコロコロ変わる曲で石川曰く、周囲の大事件よりも目先の瑣末なことが気になってしまうという状況を表現する意図で作った曲らしい。曲の中盤あたりには語りが入り、特に最後の語りの内容がよく考えなくてもゾッとする。石川のひょうきんな人物像とは裏腹に「明るい狂気」的な曲が多い。サビにあたる部分のカラスが叫びすぎて声を嗄らしたかのような声での歌い方が好き。

どんぶらこ
作詞・作曲 柳原幼一郎
たま結成時から存在する曲で、昔の西部劇で流れてきそうなギターのジャカジャカとした音と語るかのような歌い方が雰囲気感が出ててなんかかっこいい。元々音頭的な曲調だったのが今のようなカタチになったらしい。

ロシヤのパン
作詞・作曲 知久寿焼
歌詞はなんとも微笑ましい母子家庭(登場するのは僕と母親と姉だけで、歌詞には父親の存在は歌われてない)の風景が伺える曲で知久曰く、エロチックな曲。ロシヤのパンの詳細は不明だが、当時のファンからよくピロシキが送られてきていたとか。
最後の歌詞の「いつまでもこのままでいたかったのに」が切ない。
イカ天出場4週目に披露された曲。

さよなら人類(オリジナル・ヴァージョン)
作詞・作曲 柳原幼一郎
たまの代表曲の1つで特にこの曲は最大の人気を誇る曲。全体的にゆるやかなピアノが主体の曲。ピアノの音色と個人的にはパーカッションの桶のとことことした音も好き。石川の合いの手が非常にたまらない曲その2、特に「着いたー!!」「着いた着いたよヤッホー!!」は邦楽の歴史に刻まれても罰は当たらんだろうレベルの素晴らしさ。またそこからの盛り上がりはもうトゥルーエンド的な感動がある。
アルバム発売前のシングル曲でシングルヴァージョンとは大きく異なる。主に両者の違いはイントロ、全体的にオリジナル版にはないストリングスや子供のコーラス等の音が追加、2番目のサビの後(さるーの部分)の歌詞の変更等がある。個人的にはオリジナル版の4人だけの演奏バージョンが好き。
イカ天出場2週目に披露した曲。

ワルツおぼえて
作詞・作曲 滝本晃司
全体的にパリのイメージが強いタイトル通りワルツ調のおしゃれな感じの曲。歌詞の「観光団体が一列になって口笛を吹いた」の部分がサウンドも相まって特に好き。3分34秒から聴こえる謎の囁き声はジュテーム橋本(柳原)による映画「エマニエル婦人」のテーマ曲を口ずさんでいる。
後にシングル化された「オゾンのダンス」のカップリング曲。

らんちう
作詞・作曲 知久寿焼
結成されたばかりの頃からあった曲で、らんちうとはランチュウという金魚の一種の事。
古の歌謡曲のような和チックな雰囲気が堪らなく、外人アーティストはおろか国内アーティストですらなかなか出せないこの独特なテイストはまさしく『たま』にしか出せないものだと改めて思う。
絶対多くの日本人に是非聴いてもらいたい1曲だ。
石川の合いの手が非常にたまらない曲その3、特に「1、2、3、4」「ぱんぱんあぱんぱんぱぱ」「ハイッ(謎の低音イケボ)」が個人的にツボ。
アルバム発売前のシングル曲。シングルバージョンとは最初と最後の「いよ~」の部分と柳原の語りが異なる。
イカ天初出場の時に披露した曲であり、たまの出世を大きくさせた曲と言っても過言ではないと思う。

れいこおばさんの空中遊泳
作詞 柳原幼一郎
作曲 たま
アルバムの締めはどこか沖縄風味な曲調で歌詞がなかなかシュールで軽妙な曲。この曲では柳原と知久のデュエット。サビの「れいこ~」の巻き舌がツボ。0分47秒の石川の「はやい~はやい~」は自身の曲の「リヤカーマン」を意識しているのだろうかw
れいこおばさんとはもしかして霊魂(れいこん)の捩りだろうか…w
なんかもう頭を空っぽして聴きたい曲である。

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