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P-MODEL「P-MODEL」

1992年発売通算8枚目となるオリジナルアルバム。1991年に解凍という名目で再結成され、前作「ONE PATTERN」から6年ぶりのアルバムとなる。この時期は解凍期と呼ばれる。平沢がソロとして活動していたポリドールから発売された。P-MODEL再結成に至った理由は平沢が「再びテクノをやりたい」と思い至ったかららしい。メンバーは固定メンバーである平沢進、休止前までバンドに加入していたことぶき光に加え、初期P-MODELのメンバーであった秋山勝彦、THE GROOVERSとして活動していた藤井ヤスチカの4人。
本作の特徴は何といっても「potpourri」以降控えていたテクノポップをまるで溜めこんでいたものを吐き出すようにテクノポップ全開となったアルバムとなり、初期P以上に炸裂し全体的に近未来感あるサイバーパンクのような仕上がりになっている。
余談だが、自分が初めて購入したP-MODELのアルバムがこれと「Big Body」である。

メンバー
平沢進・・・ボーカル、ギター、シンセサイザー
秋山勝彦・・・キーボード、ボーカル
ことぶき光・・・キーボード、ボーカル
藤井ヤスチカ・・・ドラム

収録曲

SPEED TUBE
作詞・作曲・編曲 平沢進
P-MODELの再始動を告げるのはイントロからすでに心地いい電子音が鳴り響き、全体的に不穏なサイバー感溢れたサウンドが展開される曲。この曲を聴くと近未来の夜の街をアニメ映画「AKIRA」の金田みたいな奴がバイクで駆け抜けるイメージが頭に浮かぶ。当然歌詞はそんな事を歌ってはいないと百も承知なわけだがw

2D OR NOT 2D
作詞・作曲 平沢進、ことぶき光
編曲 ことぶき光
平沢とことぶきの共作。電子音があちこちで忙しくテンポ早く鳴り響くスピーディーなナンバー。平沢が上下パート両方を歌っているのが特徴。サビのことぶきボーカルが目立つ大合唱のような部分とベースラインが特に好き。曲の締め方もテンポを緩めて名残惜しい感じがして良い。解凍期でこの曲のようなハイスピード感溢れるサウンドが展開されるのは間違いなくことぶきによる手腕が大きいと言えよう。

STONE AGE!
作詞・作曲・編曲 平沢進
近未来感あるピコピコ音が全体的に鳴り響くナンバー。Aメロの微妙にかすれ声での歌い方がどこか不気味な感じ。平沢の怒鳴るようなシャウトから始まる間奏のウミネコか何かの鳴き声にも似たような音が意味深。

WIRE SELF
作詞・作曲・編曲 平沢進
あちらこちらで鳴るSEのようなものと当時平沢が愛用としていたパソコンのAMIGAで作ったと思われる音声が飛び交う曲。間奏部分は平沢お馴染みのギターソロが聴ける。
何故か低い声で歌われる「バンジージャンプ バンジージャンプ」の部分が好き。それと「Ah」の部分が明らかに喘ぎのそれでエロい。というかこの曲は特に平沢の歌い方がエロいような気がする。

CLEAR
作詞・作曲・編曲 秋山勝彦
秋山による曲でサイレンから始まる全体的に大人しめな曲。このアルバム唯一秋山が歌唱を担当している曲で全体的に秋山は擽ったいぐらいに囁く様な感じで歌っている。サイレンの音もあってか、秋山が誰かに追われているようなイメージが浮かんだw

VISTA
作詞・作曲・編曲 平沢進
ズンズンと非常にノリのいいシンセサウンドと全体的にゲーム音みたいな音が響かせており、個人的に激しく堪らない曲。テクノ好きには間違いなく刺さるだろう。サウンドと平沢の歌い方も相まって初期P-MODELを彷彿する曲だと思う。3番目の歌詞部分の合唱が好き。

GRID
作詞・作曲・編曲 平沢進
全体的にどこか不穏なサウンドが響き、鳥のような鳴き声が度々登場する曲。間奏部分以外は一定のリズムが刻まれており、全体的に朴訥した感じ。

LAB=01
作詞・作曲 ことぶき光、平沢進
編曲 ことぶき光
スピーディーなテクノポップ。これまた平沢とことぶきの共作で、Bメロ以外はことぶきと平沢のほぼデュエット曲。Aメロは右(LAB=1)は平沢、左(LAB=0)はことぶきがツインで歌っているがお互い歌詞が異なる。こういう発想の曲はかなり好みだ。
間奏の「コイル男は」の部分はおそらくアルバム「IN A MODEL ROOM」収録の「アート・ブラインド」で使用されたヴォコーダーを用いていると思われる。
ことぶきは後に自身のソロアルバム「Desk Top Hard Lock」にて「ルルル男」としてまさかのアカペラでセルフカバーする(もしかしたら元々の原型がこれだったのかもしれないw)。

ERROR OF UNIVERSE
作詞 P-MODEL
作曲・編曲 平沢進
1分25秒と短い小曲でAMIGAの音声がボーカル代わりとなっている為実質インスト曲。イントロの叫ぶようなシンセ音が印象的。

GO AMIGO
作詞 平沢進、秋山勝彦
作曲・編曲 秋山勝彦
曲自体は秋山作曲だが、作詞に関しては唯一平沢と秋山による共同制作となるが、歌詞がどこかドラマチックな印象でどちらかというと秋山色が強い傾向。全体的にサウンドはこのアルバムの中ではおどろおどろしくなく爽やかなテイスト。

PSYCHOID
作詞・作曲・編曲 平沢進
これまたおどろおどろしく不穏なサウンドで「GRID」同様一定のリズムが刻まれている曲。歌詞はすべて何かしらのコードを歌っているような感じ。歌詞の「STARTOSPHERE」のシャウトの部分は果たして加工で伸ばしているのか、もしかして平沢本人の肺活量で伸ばしているのか…。

NO ROOM
作詞・作曲・編曲 平沢進
PSYCHOID終了した後の3分後に流れる所謂シークレットトラック。メロディは「美術館で会った人だろ」のセルフオマージュで初期メンバーによる曲のスタイルにほぼ近い。間奏は間違いなく元メンバーの田中靖美のキーボード裁きを意識している。タイトルは1枚目のアルバム「IN A MODEL ROOM」の多分否定形的な事だろう。歌詞はCDケースの繋ぎ目の部分(帯で隠れるところ)に掲載されている。
2002年に発売したボックスセット「太陽系亞種音」には12曲目として1トラックで収録されている。

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