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黒いさくらねこと妹

関東に住んでいる身内に不幸があり、葬儀の用意の間妹がうちに泊まることになった。金曜の夜中にやってきて、月曜の朝まで滞在することになる。
妹はわたしとは10ほど年が離れている。現役の女子高生だが、生まれた頃から世話を焼いているのでいつまで経っても小さな子供という認識が抜けず、ついあれこれ面倒を見てしまうのでよくないと思う。

妹が暮らす実家では、2匹の猫を飼っている。父の知人の家から貰い受けたツン9割デレ1割の典型的な猫!といった白黒ハチワレと、妹が学校に捨てられていたのを拾ってきてしまった白猫。白猫は所々茶サバのような模様があり、白い子と呼んでいるが真っ白な猫ではない。いずれも雑種だ。
黒い子が来た当初、妹はやたら猫を怖がった。遠目から見て可愛がる分にはいいが、触るのも近寄られるのも怖かったようだ。それが1年後には学校の捨て猫を拾ってきてしまうまでになるのだからすごい。今や肥満気味の猫2匹に囲まれ眠るほどである。

というわけで、ルドンにも好意的に接していった。対するルドンも初めは少し人見知りするが、基本的には人間が好きな子なので2時間で距離を縮めた。泊まりに来たその夜、ルドンの姿が見えないので探したら、妹にあてがった部屋で妹と並んでベッドに座っていた。2日目には遊べとねだりに行くのだから慣れすぎだ。妹の開けっ放しのキャリーケースの中に座ったりもしていた。

一緒にいる間は、妹はやたらとルドンに「ぴーちゃんと同じ顔してる」「ぴーちゃんによく似てる」「ぴーちゃんの真似してる」と言った。ぴーちゃんとは鳥ではなく、実家に住んでいる白い子だ。ぴーちゃんは元々、飼い猫だったのを捨てられた子らしかった。拾われた当時は恐らく5~6ヶ月程度。人間にとても友好的で、拾われてきた初日にソファに乗り、父の隣であくびして眠り始めた大物である。どうすれば自分が可愛いかということをよく分かっていて、遊んでもらうのも大好きだけど(階段の上からおもちゃを投げてやると、わんこよろしく走り降りて取りに行って人間のところまで持ってきてくれる)、触られるのはあんまり好きじゃない子だ。
ぴーちゃんは小顔で美猫といった顔つきをしているが、そのあたりはルドンもたしかに同じ系統だと思う。そして同じく元捨て(野良)出身というのもあって、仕草や性格などは確かに似ているのかもしれない。
ぴーちゃんは実家に来たのは私が家を出たあとだったので、一緒に暮らしたことはないが、初対面私に全く物怖じすることなく抱かれてくれて(すぐ逃げたけど)、帰省する度玄関まで迎えにきてくれる最強に愛らしい猫だ。この玄関までのお出迎えを母と妹は「2秒で猫」と呼んでいる。

妹に「ぴーちゃんと同じ顔」とか「ぴーちゃんの真似してる」と言われると「血縁はねえ」「面識もねえ」と思わず突っ込みたくなるのだが、妹にとっての猫の基準はやはり身近にいる実家の猫2匹なのだろう。ルドンが何をしてもそれは全部実家の猫たちに落とし込まれる。ちょっと複雑な気持ちになるが、わたしも猫カフェの猫を「実家のてーちゃん(黒い子)そっくり!」と騒ぎ立てていたので同罪か、とは思う。

父と母は、やはり一緒に住んでいる実家の2匹が最強に可愛いと思っているので(特に愛嬌たっぷりのぴーちゃん)、るーの写真を送ると無言でぴーちゃんの写真を送り付けて「うちの子が一番可愛い」と無言の圧力をかけてくるのだが、妹は家族の中で唯一ルドンと一緒に何日か過ごした子なので、るーちゃんかわいいね、と素直に言ってくれる。てーちゃんは世界一可愛いし、ぴーちゃんは宇宙一可愛いが、るーちゃんは銀河一可愛い、と私は思う。

#猫 #保護猫 #コラム #エッセイ

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