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ウズベキスタン旅行⑤ 感動の再会(かもしれない)

ブハラさんぽ

 4日目。前日かなり早めに寝たこともあり、翌朝も早くに目覚めました。

 ブハラでは「Komil Boutique Hotel Bukhara」という、ブハラの豪商の伝統的な邸宅を改装したホテルに2連泊。ウズベキスタンで泊まったホテルはどこも良かったですが、居心地の良さはここが一番好きでした。コミルさん一家が家族運営しており、ご夫婦ともに英語が堪能でフレンドリーなこともあって、2日間ともに欧米人の団体ツアー客で満室のようでした。
 伝統的な建築のダイニングホールで朝食と食後のお茶をいただきつつ、今日の予定を立てたり乙嫁語りを読み返したりします。ウズベキスタンに来るまであまり地理感覚がなくてわかっていませんでしたが、乙嫁語りの舞台、ブハラ近郊なんですよね。

 この日の夕方、ようやく先輩と合流する予定になっていました。合流後に一緒に観光する予定なので、この日は予習も兼ねて1人でのんびりお散歩してみることに。

荷物置き場の猫と鳥


なんでもないけどかわいい街角


羊肉屋さんの前の猫(後ろにあるのは肉の量り)


昨日に引き続きレトロ遊園地

このミッキーもどきになぜソ連みを感じるのだろう……とおもってよくよく思い返してみたらHBOのドラマ「チェルノブイリ」で似たようなやつを見たからでした。このミッキー、ソ連で流行ってたの??


広々とした朝のカラーン・モスク(相変わらず朝は誰もいない)
一方、廃墟と化した名もなきマドラサ(グーグルマップには「Forgotten Madrasa」と書かれていた)

観光スポットはヒヴァに引き続き混み出すのが遅めで、朝は静かな中で自由に散歩できました。これ本当に不思議なんですが、どの観光地も必ず昼くらいになると中でオバチャンたちが土産物売り始めるんですよね。展示スペースの看視員のオバチャンもみんな内職でなんか作ってて、「日本人?買って!」って言ってきます。そういう副業的なのありなんだ……自由だな……。
それはそれで活気があって楽しいのですが、静けさのある史跡で歴史を感じたいのであれば人の少ない早朝に行くのがおすすめです。昼間は日差しが強いしね。

そう、太陽との距離感が近すぎる国なんですよ、ウズベク……。

ブハラの素敵な街並みを1人で楽しく散歩していましたが、昼頃になると、とたんに再び襲い来る気だるさ。ひ、日差しがつらい……。
ということで、ある程度堪能した後は早々に宿に撤収。もはや恒例となった午後のお昼寝をしたり、宿の中庭で読書をしたり。

居心地が良かったホテルの中庭(奥にいるのは同じく読書していた他のお客さん)


旅人の再会の地オアシス


昼過ぎの暑さの中、ホテルで出してもらったジュースを飲みつつうとうとしていた頃、部屋の呼び鈴が鳴りました。

「Hi! 君のお友達、やっと着いたよ!」

宿のご主人にそう言われて開いたドアの先、でっかい90Lのスーツケースを持った先輩がニコニコ顔で立っていました。わーーーーん!会いたかった!!!

昔安住紳一郎のラジオで言ってました。砂漠の向こうから自分と同じ人間がやってきたとき、人間の脳には恋愛した時と同じような脳内ホルモンが出るって。
いやわかる、めっちゃわかるわ。

たぶん異性だったらあの瞬間先輩のこと好きになってましたね。めちゃくちゃうれしかった。オアシスの街でうっかり恋が生まれる瞬間だった。

先輩も、2日間思いがけずソウルに滞在した挙句に、丸一日ウズベキスタンのローカルすぎる鈍行列車に揺られてずいぶん疲弊していたようですが、人間やはり仲間がいると元気になりますね。荷物を置いたら速攻で夕暮れのブハラに繰り出しました。


2人なので心置きなくたくさん頼んで食べられる

翌日の午後にはブハラを発ってしまう予定なので、夕方でもいける近くの観光スポットを回りつつ、お土産もチェック。

土産といえば、私にはこの旅で買ってみたいものがありました。

そう、絨毯。

絨毯買うたん

子供のころ、母や祖母が「絨毯」や「カーテン」といった家を飾る布類を熱心に買い集めている様子を眺めて、なんであんなわけわからん柄の布がほしいんやろう……と理解できずにいました。
それが不思議なことに、アラサーに差し掛かったあたりから、地味やな~と思っていたあの布たちが、とたんに艶やかな光をまとってみえるようになったのです。本当に不思議だ……血のめざめ……?

ウズベキスタンで布を買った話をすると男性はまったく興味を持たないのに女性は大体興味深く聞いてくれるので、もしかすると布に対する関心というのは性差が分かれるところなのかもしれません。乙嫁語りでも布は女の仕事って言ってたし。

ということで、ブハラの絨毯屋さんに向かいます。

絨毯買うぞと息まいたものの、いざ店で大量の絨毯を目にすると、それは想像以上に大きく、お値段的にもトランクの大きさ的にも、そう手軽には買えないことに気が付きました。いやこれ持って帰るの……?
日和る私に、店のお兄さんは「大丈夫!この小さいのなら絶対に君のトランクに入るよ!」と、小さめの玄関マットくらいのものを何枚も出してきました。いや君、私のトランク見たことないやろ。

お兄さん「これをこう、こうしてね、僕がギュギュっと小さく梱包するから、そしたらこれは君のポケットにも入る!」
私「いやいやいや」

さすがにポケットはない、とは思うものの、確かに小さいサイズならどうにか持って帰れそうです。
見せてもらった絨毯で私の目を引いたのは、モスク天井の模様を象った、よく見るクラシックなデザイン。シルク糸が光を反射して、見る角度によって色が少し違って見えるのも素敵です。これがほしい!
ただ、私は実は値段交渉がものすっっっごく苦手。ネットで調べて準備したり手配したりするのは結構好きなのですが、打たれ弱いので対面交渉だととたんに押しに弱くなるのです。だからわけもわからないまま知らない人と写真撮ったり観光したりすることになるわけで……。

うーんどうしたものか、と唸っていたら、そこまで長距離移動でややグロッキーだった先輩が、おもむろに口を開きました。

先輩「どれがええんな」
私「これとこれ、2枚ほしいんですけど……」
先輩「ハウマッチ?」
店のお兄さん「○○ドル!」
私「ええ……」
先輩「いや、安くなる、いけるで。[英語で]ちょっと高いな~」
お兄さん「でも絨毯は最近どんどん高くなっていってるんだ。しかも手織りの絨毯は踏み込んで使うほどどんどん織目が締まっていい色になっていくから、アンティークになるほど価値が出るんだよ。今買ったら10年後には倍の値段が付くよ!」
先輩「2枚買うから」
お兄さん「うーん、でもこれ、1人の女の子が1か月もかけて織ってるんだよ。しかもシルクで、織目もこんなに細かいんだよ!」
先輩「でもこの子1人で2枚買うんよ。もうちょっと安くしてくれないと買えない」
お兄さん「あ、買うのは君じゃないんだ」

まぁそりゃそう思うよね。
そこから先、突然やる気を見せた先輩がなぜか私の代わりに果敢に攻めた値段交渉をしてくれ、気づけば私は当初の半値以下でお目当ての絨毯を購入していました。す、すごすぎる……。ちなみに交渉の結果、そちらのほうが安くすると言われたのでドルの現金払いになり、ここでお守り的に持っていたドルが活躍しました。

帰り道、「まだもうちょっと行けたな……」とストイックなスポーツ選手のように呟く先輩の横を、店のお兄さんが宣言通りギチギチに縛って梱包した絨毯を握りしめながら歩きつつ、人はみなそれぞれ違った才能を持っているものだな……と実感しました。心の底から尊敬します。

戦利品を抱えて眺めたミナレット(綺麗だけどまぁまぁ怖い歴史があります)

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