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行政の成果主義

人事評価・事業評価の現在

行政が人事評価に成果主義を導入して久しいですが、実際のところ、どれくらい変化が出てきているのでしょうか。
私が入庁したころには人事評価に成果指標が加わっており、それこそ具体的な数字が求められました。

成果主義や具体的指標に基づく評価というのは、なんとなくや自己満足的な予算の使い方を見直し、また、明らかに成果が出ていないものを切るきっかけにもなります。
人事評価に限らず、事業評価や予算編成などにおいても重要な視点だと考えます。

しかし、一部の民間企業的な評価方法を真似るだけでは意味がありません。
私が考える行政の役割の1つとして、「資本主義における利益がでないが、必要なことをする」というのがあると思っています。
これとガチガチの成果主義はミスマッチではないでしょうか。

種蒔き事業との関係

私の体験

私は介護保険担当部署におり、現在取り組んでいる事業に、介護人材の確保があります。
少子高齢化の中で、100%介護人材が不足します。
私のような公務員は、それこそAIに取って代わられるでしょうが、介護士や保育士、看護師などは人が行う需要は高いままでしょう。
ドラえもんレベル、すなわち、今よりも数十段上のAIと高い機動力・安全な質感を備えたロボットができれば別でしょうが。

子供たちが将来を考えるうえで、「その業界を知っている」ということはとても大切です。
ということで、小中学生に介護や保育などの福祉業界を将来の選択しに加えてもらえるような事業を実施しています。
いわゆる種蒔き事業です。

しかし、上司から「こういった事業はお金をかけてもリターンが見えてこないし、成果が出ても10年20年先になる。それにコストをかける意味があるのか。」と言われてしまいました。

社会課題への向き合い方

そのとおりです。
コスト、それも大事な税金を使うのにリターンがないのは、成果主義の視点から言えばさっさと切るべきです。

では、こういった事業を誰かがやるでしょうか。
リターンが得られにくい事業は、民間企業が行うことはないでしょう。
社会福祉法人や一般社団法人、あるいはCSRの一環として企業がやることはあるかもしれません。
しかし、明らかな社会課題を行政が知らぬ存ぜぬはいかがなものか。
コスパで片付けられないのが行政の仕事ではないでしょうか。

行政というのはどうやっても消費主体にしかなり得ません。
民間は基本的に、自己資金・融資・借金などを元手に新たな資産・利益を形成します。
対して行政は税金や社会保険、公債によってお金を集めますが、それを使って更なる富・キャッシュは生み出しません。お金を使うこと=消費活動を行うだけなのです。
※住民満足度や経済効果的なことは除外して考えてください。

成果主義は民間企業を参考に導入されたものですが、こうなると、同じ物差しでは測れないと思います。

行政における成果と失敗の位置付け

成果主義は人事評価にも繋がるもので、1会計年度の中で具体的な成果(予算に見合ったリターン)が目に見えなければ、評価されないのが現状です。
悪い方向で考えれば、自分の評価・昇進に得のない事業は、長期的な社会課題への投資であっても、切られてしまう可能性があります。

また、予算・決算の際には必ず議会での説明が必要になります。
当然リターン的なことを聞かれますが、失敗や「まだ分からない」と言えれば簡単ですが、予算を執行したからには成功したという答弁しか許されないのが現実なのです。
国会中継などで、のらりくらりとした答弁を見ることがありませんか。
これは1つに行政に失敗は許されない、もっと言うと行政が失敗するはずがないというマインド・プレッシャーが過剰にあるからだと思います。

こうなると、仕事のモチベーションでも、地域社会や将来の市勢のためではなく、上司のための仕事、怒られないための仕事となります。
公務員の在り方自体に疑問が生じるものです。

成果主義の在り方

鎖のような成果主義

成果主義が悪と言いたいのではありません。
行政に全くなじまないとも思っていません。

事業の見直しや、見切りをつけるきっかけにもなります。
なぁなぁで継続するのではなく、限られたリソースをどのようにあてるか、どういった計画・企画で行うかを判断するよい指標です。

しかしながら、選挙や人事異動でトップや幹部が変わる行政では、自分の時に成果が出ず、将来、別の人間の時に出てくるみたいなことに、なかなか腹をくくれません。

「それって意味あるの?」
「今の課題を今解決できないなら無駄だろ」

こう言われてしまうとこちらは何も言えません。
結果、即効薬的な事業ばかりで、私としては行政職員としてのモチベーションが上がりきりません。

今の状態は、どこか成果主義に縛られているように思います。

適切な使い方・距離感

今の課題は未来の課題でもあります。
人の体も病気になったら、即効薬で直し、体質改善で健康を維持することが必要です。
行政もその両輪で取り組むことが必要で、それができるのが行政の強み・社会におけるポジションだと思います。

仕事は、全部が全部、数字で測れるものではありません。
特に行政はキャッシュでの評価をしにくい仕事です。

昔も今も「公務員は生ぬるい。成果主義を徹底しろー」と言うお声は絶えないように思います。

しかし、成果主義はあくまで評価の1ツールでしかありません。
導入すればいいというものではなく、正しく、組織や事業に則した使い方をしなければならないと思います。


最近、写真を撮れていませんし、編集もできていません。
なので、みんなのフォトギャラリーから拝借しました。

また撮りに行こう。

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