美容師写真

手づくりする人。

インタビュー13:手づくりする人。

~何でもやってみる~

Tさん:
68歳の女性。神戸市在住。かつて美容室を経営していた。おでんの友人のお母さま。

インタビュー:2018年夏ぐらい

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●リリアンからリフォームまで。
おでん:お好きなことをお伺いしているんですが…。
Tさん:そうやなぁ…。こまこましたことが好きなんやなぁ。
おでん:手先を使うような、細かいことですか。
Tさん:そう…。絵を描いてみたり、パッチワークをしてみたり、小さなものをつくってみたり。あらゆることはするのよね。まあ、飽き性でもあるんだけど。
おでん:それは小さい頃からですか。
Tさん:そうね。なんやろ。私一人っ子なのよね。そうすると一人遊びが上手なのよ。
おでん:ははぁ。じゃあ、編み物したりとか…。
Tさん:編み物もしてたしね。当時はリリアンなんかつくってみたりね。あと、かばんつくってみたり。
おでん:へぇー。周りのお友だちもそんな感じだったんですか?
Tさん:周りはやらないのよ。だからつくってやるのよ。
おでん:友だちのために。
Tさん:うん。ふふふ。
おでん:「上手やねぇ」とか言われながら。
Tさん:上手や言われたらその気になるのよ。
おでん:ふふふ。
Tさん:いろんなことやってると思うわ。トレンド的なものを察知するのが、意外と速くてね。
おでん:クラフトの世界にも、いろいろトレンドありますもんね。
Tさん:うん。流行ってるって聞くと、すぐお店に走る。んで、ぱっと買ってくる。
おでん:早い早い。
Tさん:で、置いておいて、やりたくなったときにやればいいわけ。
おでん:なるほど。ちなみに、今取り組んでいらっしゃる作品はありますか。
Tさん:家具をつくろうと思って。
おでん:家具。
Tさん:私の母の嫁入り道具の桐のタンスがあってね。昔のタンスは三段になってるじゃない。あれを一段ずつ外してね。一つはこう、物入れみたいにするとか。和食器を入れる食器棚にするとか。茶箪笥にするとか…。
おでん:家具のリフォームですね。
Tさん:うん。今乾かしてるんやけどね。もうそろそろバラしていこうかなと。
おでん:へぇ~。
Tさん:で、まずはやすりで汚いところとか削って。悪いところは捨てちゃって。ほいで、補強しながら鍵を上手にいかして…。まあ、来年の春にはね。使えるように。
おでん:なんでそれをやろうと考えたんですか。
Tさん:今、あったかいところへ引っ越したいと考えてるのね。そうすると、荷物の整理がいるじゃない。だから、いらないものは捨てて。有効に使えるものは使って。
おでん:ああ、いろいろ片づけていらっしゃる途中なんですね。
Tさん:そう。お母さんにもろた桐のタンスでしょ。亡くなってるとね、捨てにくくなって。生きてたらきっと捨てたんだろうと思うんだけど。
おでん:小さくすれば一緒に暮らしやすいですもんね。

●美容師のおもしろいところ。
おでん:Tさんは美容師さんをやってらっしゃったんですよね。それもやっぱり、手作業がお好きだから美容師さんになられたんですか。
Tさん:ううん、ちゃうちゃう。たまたま両親が美容室を経営してたの。なりたくてなったわけじゃないの。
おでん:あ、そうなんや…。
Tさん:学校出て「教師でもやろうかな」って思ってたら、うちの父に「あんたは教師は向かん」って言われてね。「教師は向かんから美容師やれ」って言うんよ。で、「それもそやな」って思って。
おでん:そっか…。まあでも、手作業がお好きなら、やっぱり美容師さんは向いてはったんとちゃいますか。
Tさん:向いてたんだと思う。うん。向いてなかったらやってられないもん。
おでん:美容師は、どれぐらいやってらしたんですか。
Tさん:21歳のときから40代半ばぐらいまでかな。お店自体は、昭和33年から続いとった古い店でね。…昭和33てすごいやろ。
おでん:すごいですねぇ。
Tさん:時代も良かったと思いますよ。昭和20年が終戦やって、どさくさがあって30年代。そのときは高度成長期に入ってるじゃない。いろんな意味で活気がある。女の人もおしゃれしたくなってね。
おでん:お客さんも多かったんですね。
Tさん:そう。その頃ってね、今ほど美容室があるわけじゃないから。結構忙しかったよ。
おでん:楽しそう。
Tさん:いやでも、商売は大変。趣味でやるのは簡単だけどね。お金いただくのは大変よ。おもしろかったけどね。
おでん:何がおもしろかったですか。
Tさん:そうやなぁ、いろんな人に会えるし…。
おでん:いろんな人?
Tさん:そら美容室いうんはさ、普通のお客さんもいるんやけど、意外と水商売の人が来てね。
おでん:そんなもんですか。
Tさん:うん。うちとこは、10人おったら8人は水商売の人。場所的にね。福原が近かったから。
おでん:福原?
Tさん:知らない?遊郭があったの。そこのお客さんが割と多かったのよ。
おでん:へぇー。
Tさん:だから、おかまさんも多かった。店に来るときはこないして<肩をいからす>“男”で入って来はんねんけど、出ていくときはキレイにお化粧して、こないして<優雅な身ぶり>“女”で出ていきはんねん。ふふふ。
おでん:そうなんだー。
Tさん:あの人ら、女の人よりキレイだよ。お化粧も上手だしなぁ。
おでん:カミングアウトしてる方が多かったってことですかね…?
Tさん:いやいや、その人らは職業としておかまさんをしてはるから。お仕事。お商売。奥さんも子どももいはるねんよ。
おでん:ふーん。いろんなお客さんがいらっしゃったんですね。おもしろいなぁ。
Tさん:そらおもしろいわ。うちの美容室ね、店がガラス張りだったのね。だからその、夜はガラスに自分の姿が映るやない。
おでん:はいはい。ガラスが鏡みたいになるんですね。
Tさん:そう。で、おかまさんたちは、髪のセットが出来上がったら、ガラスの前にぴやーと並んでダンスの練習するの。
おでん:へぇー。
Tさん:「こうしたらどうか」とか、「ちょっとおかしいか見て」とか言うて練習してるんですよ。
おでん:ふふふ。
Tさん:他には、ママさんとかも来てたよ。
おでん:バーとかクラブとかのママさん。
Tさん:うん。ママなんていうたらね、ものすごい賢い。いろんなこと教えてもらったよ。人生のこととか。それを納得いくように話してくれるしね。思うに、ああいう水商売は、アホは絶対できないよ。
おでん:素敵なお客さんが多かったんですね。
Tさん:いい人ばかりじゃないけどね。十人十色と言うじゃない。だまされたこともあったよ、しょっちゅう。
おでん:そんな人もいるんだ…。
Tさん:あと、やくざ屋さんも来たよ。日本刀もってきてそこへ刺して、「したってくれ!」言うてね。
おでん:あわわ…。
Tさん:シャブ中の人もいたよ。ずっとカタカタ震えてね。トイレから出てこぉへんから見に行ったら、トイレにハマってはるねん。出すのが大変。
おでん:あわわわ…。
Tさん:いろんな人を見てると、「上見てもきりないけど、下見てもきりないなぁ」って思うんよね。そしたら、今の自分のことを「これでいいんや」って思えるんよ。やっぱり、いろんなこと知らないと分からないじゃない、自分の今の幸せが。
おでん:そうかもしれません。
Tさん:そう考えると、私は良い経験いっぱいさせてもらったかなぁ。

●今、一番つくりたいもの。
おでん:すみません、話がそれちゃいました。手づくりの話に戻るんですけど、今後つくってみたいものはありますか。
Tさん:あるよ。あのね、地ビール。
おでん:地ビ…。えっ?
Tさん:もう、ずっと地ビールつくろうと思ってる。ここ2、3年。
おでん:えっと、そもそも、地ビールって何でしたっけ。
Tさん:自分流のビールってことだと思うわ。神戸ビールもあるし、明石ビールもあるしね。結構あるのよ。
おでん:なんでまた地ビールを…。
Tさん:自分好みのビールがないから。
おでん:ああ…。
Tさん:どのビール飲んでも、ちょっとずつ足らない。
おでん:具体的に言うと…?
Tさん:泡が多いのがいい。泡がすごくおいしいビール。泡が半分ぐらいでな、液体は少しあればいい。あとは、苦くって、甘くって…。
おでん:ビールって、自作できるもんなんですか。
Tさん:<今いる部屋を指して>ここぐらいの大きさのタンクがあればいいみたいやねん。まあでも、なかなか許可取るのも大変みたい。そう簡単に、つくったらええってもんでもないみたいよ。
おでん:アルコールですもんねぇ。
Tさん:私もいろいろ研究するんやけどね、場所とお金がない。時間はあるけど。
おでん:うーん。
Tさん:なんか一つぐらい残しとかなな。地ビール残しといたら、ひょっとしたら、子はあかんかっても孫が何とかしてくれへんかなと思って。アサヒ、キリンに次ぐビール。…ダメでしょうか。
おでん:いや、全然ダメじゃないですけど(笑)。
Tさん:今年69になるんやけど、まあ、可能性はないとは限らへんで。
おでん:もちろんです。
Tさん:これができたらいつ死んでもええと思ってるんやけど。
おでん:…ていうか、ビールを自作するっていう発想がなかったです。
Tさん:そう!?なんで!?
おでん:なんでて…(笑)。
Tさん:ビール好きじゃないんちゃう。
おでん:いやぁ…。割と好きですけど、つくるもんやっていう考えがなくて…。
Tさん:そんなもんやろか。
おでん:んー…。……あ、私、ビール好きなんですけど、炭酸が苦手なんですよ。だから微炭酸のビールがあればいいなーと思ったことはあります。…でも、そこから「じゃあつくってみよう」とはならなかったです。
Tさん:あーそう。ほな、今度ビールつくるときに一緒につくったげるやん、それ。
おでん:え、いいんですか。やったぁ。楽しみやぁ。

<おわり>