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音楽よもやま話-第13回 フィロソフィーのダンス-陽気なアイドルが地球を回す

メジャーデビュー

8月6日のオンラインライブ「5 Years Anniversary Party」にてメジャーデビュー日が告知されてからずっとソワソワしっぱなしだった。本当は、このコロナ禍がなければきっともっと早く、もっと違った形で発表され披露されていたんじゃないかと思ったり。与えたがりの、サービス精神いっぱいの彼女たちのことなので、ファンいっぱいのライブハウスの中、フルバンドセットで花びらや金テープが舞うような中で喜びを知らせたかったかもしれない。でも「本当なら」とか「たとえば」といった苦労を取り越しまくって疲弊するのも、おおよそ無駄な行為にほかならないのだろう。


メジャーデビューシングル「ドント・ストップ・ザ・ダンス」の音源がいざMVとともに解禁されたとき、コメント欄では実に賛否両論の感想が飛び交っていた。メジャーデビューというのはやっぱり往々にして、バンドだろうがアイドルだろうが、強烈なアンチとファンの論争センセーションを巻き起こすことが世の理なんだなと冷静に受け止めた。確かにインディーズ時代のいわゆる「宮野ヤマモト楽曲」がフィロのスの太い柱にあったのだろう。それは往年のファンはもちろん、当のメンバー4人だって強く感じていたようだ。


でも僕はいつだって思うのだけれど、変わることを望んでいかなければ、そこに前進はあり得ないのではないかと思う。特にこんな忌々しいコロナ禍になってもう半年以上経ってしまった。ここまで環境が激変していく中で、問題を見つめず、課題を捉えず、変わろうとしない者がどれほど世間とのズレを生んでしまっているのかは身に覚えがあると思う。それが彼女らの音楽とどう関係があるのかって? 彼女らも我々と同じ世界に生きて生活してるからこそ大いに関係あると思う。要は、僕らの声は、それがどんな色であっても十分彼女らに届いているし、彼女らはそれを受け止めたうえで活動をしているということだ。後はその変化を受け止める・受け止めないはこっち側の責任なんじゃないの? 

とかなんとか燻っていたら、十束おとは(以下おとはす)が最適解を呟いてくれていた。

清々しいほどに彼女らはメジャーシーンへダンスステップしていっているのが分かるから、着いていかなくちゃ!となるファンの端くれである。

わらばレビュー

さてさてさて、そのメジャーデビューシングル「ドント・ストップ・ザ・ダンス」の中身だけど、やっぱり素晴らしかった。


M1.ドント・ストップ・ザ・ダンス

MVと合わせてみるのがとても楽しい。相変わらず変な振り付けのダンス。キラキラな笑顔やセクシーな表情でパフォーマンスしているかと思えば、箱の中でヌーディナチュラルメイクでアンニュイな表情を浮かべる。おもちゃ箱をひっくり返したかのように色んな音や仕掛けが曲のなかで散りばめられていて飽きることがない。何より歌声に表情が見えてくるのが凄いなと思った。
メンバー自身がハルちゃんの歌唱力に全幅の信頼を感じているからこそ、歌割的に多めにフィーチャーしているんだろうなと感じる。昨今のアイドル界の画一一辺倒なユニゾン・ヴォーカリズムに殴り込みに行くなら、やっぱり特攻隊長的にはハルちゃんなんだな。かっこいい。
「私のフローチャート マチズモで決めないでよ」「ずっとオンナノコ」「ありのままでいい」女性や自分自身をエンパワーメントする歌詞が、圧倒的肯定力を持つ彼女たちの歌声でグングン届けばいいな。
あんぬの「女性アイドルの寿命という概念」をぶち壊したいという想いはそれすなわち、大げさに言ってしまえば間接的にもアイドル音楽界の無意識的男性優位主義も変革し得ると思う。


M2.なんで? 

サックスをフィーチャーした、恋愛ソング。これまでにあったようでなかった感じがする。後ろで鳴るギターのカッティング、ホーンアレンジとコーラスのグルーヴワークがとってもオシャレである。歌割のバランスもよくて、特におとはす・あんぬの進化を肌で感じ取れると思う。おとはすは、一曲の中で自分の声の浮遊感をコントロールして強烈なフックを作り出している(3:26)。あんぬは、ここまで感情を露わにして歌うことなんてあったろうかというくらいの表現力で驚いた(2:28)。シスターの2番Aメロのときからさらに進化している。さてはこの曲、凄まじく難しい歌なのでは…?


M3.オプティミスティック・ラブ

岡村靖幸というか初期プリンス的というか、MJの曲にもあったような、そんな陽気で楽観的なパーティファンクソングが彼女たちに似合わないわけがない。ライブの2曲目か3曲目くらいで聞きたい。M2.でもそうだったけど同じメロディラインを4人が個々に歌いこなすというのが聴いててほんとに楽しい。歌詞も奥津さんが良く言う「ジャパンを明るくさせる」という言葉を体現するかのよう。奥津さんの底知れぬ陽気な明るさって元気出るよね。3:30からのハルちゃんのロングトーンフェイクがしびれる。

M4.ドント・ストップ・ザ・ダンスwith DEZOLVE

フュージョン・ジャズバンドDEZOLVEをバックにしたM1の別バージョン。DIRTY LOOPSを思い出した(あちらはフュージョン・ポップ)。J-Pop界でも新機軸となるのではないかと思う。そもそもフィロソフィーのダンスという存在自体がそもそも新機軸そのものなので、やっぱり彼女らは革命派だなとほくそ笑んでしまう。曲を出すたびにその音楽的高クオリティと従来の世間的アイドルイメージとの間に、アイドルなのか、アイドルじゃないのかの哲学的論争を巻き起こしてきた。そしてやっぱりこれからも巻き起こっちゃうんだろうとは思うけれど、「もうそんなことどうでもよくね?」と我々が吹っ切れた時がとても楽しみである。どんどんロッキンなりRSRなり参戦して自称音楽通を唸らせてほしい。日本の音楽界なんて究極的にはJ-popかJ-rockにしか分かれないのだから。

最後に

あらためてメジャーデビューおめでとうございます。
インディーズから応援している人たちが大きなメジャーシーンに直面するというのは、ほとんど初めてのことなので浮足立って期待しているのもそうだし、将来的な不安だって正直な所ちょっとある。でも、僕がこれまで応援してきているゴスペラーズもポルノグラフィティも、メジャー以前以後やその他紆余曲折ありつつも、メンバー本人たちが矜持を以て音楽に取り組んできていたからこそ色んな人を魅了することができている。彼らの存在にあやかってもっと言ってしまえば、いい人間の周りにはいい人間が集まるんだと思う。同じように、これまで以上にフィロソフィーのダンスの手綱を4人が握っている以上、色んな人が、色んな作詞家が、色んな作曲家が、バラエティに富んだ高品質な音楽を4人に歌って踊ってほしい聴かせてほしい見せてほしいと集まってくると思っている。ベストフォーの4人の存在そのものの魅力が人を抱き寄せ、世界を照らすのだから。アイドル・フィロソフィーってそれだと思う。

最後まで読んでくれた人で暇な人はぜひ9/23、19時からの無料ライブを一緒に見てほしい

(配信放送後記)⇒マイクトラブルもマイクリレーで繋げて流石のベストフォーだった。5年間の場数が違う。「どんなステージ立っても怯むわけもない」し、あそこで音源がストップさせなかったのも英断だった。「なんで?」から「アイムアフタータイム」の繋がりがとてもよかった。歌割りが音源から変化していること、当人たちの努力も垣間見れて良かった。「ライブ・ライフ」の股抜けや「ダンス・ファウンダー」のラインダンスが復活していたのもよかった。皆楽しそうに歌っていたことが何よりもうれしいことだった。オリコン2位もとても華々しい!メジャーデビューおめでとう!

ちなみに以前の

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