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タワンチャイ、ロッタン、シッティチャイが勝利~2024年6月8日のONE167、満員のインパクトアリーナから

格闘技団体のONE Championship は、6月8日にタイ・ノンタブリー県ムアントンタニのインパクトアリーナで特別興行の「ONE167~タワンチャイ対ナタウットⅡ」を開催した。

メインイベントではONEムエタイ世界フェザー級(ONEフェザー級=70キロ以下)チャンピオンのタワンチャイ・PKセンチャイ”スモーキン”ジョー・ナタウットと防衛戦を行い、判定勝ちで3度目の王座防衛に成功した他、セミファイナルではONEムエタイ世界フライ級(Oneフライ級=61.2キロ)王者のロッタン・ジットムアンノンデニス・ピューリックに判定勝ちし、昨年9月のスーパーレック戦以来の試合を白星で飾った。


ONE167の全カード、メインに予定のスタンプ・フェアテックス対デニス・ザンボアンガ戦は
スタンプの負傷で流れた。デニスはノエレとマッチアップされ、判定勝ち。

タイでの ONE Championshipの試合~インパクトアリーナ


ONE Championshipは、タイでは毎週金曜夜に開催のムエタイを中心としたフライデーファイト、月に1回土曜の朝開催のMMA、ムエタイなどを取り交ぜたファイトナイトがイベントの核で、それぞれをルンピニースタジアムで行っている。1万2000人収容のインパクトアリ―ナでの特別興行は年1回程度の頻度で企画される。

今回のONE167は、ファイトナイト同様に土曜の朝の開催で、アメリカの夜の中継に合わせた開始時間としている。しかし、バンコクの中心部に暮らしているものにとっては、朝7時の第1試合スタートに合わせて、隣のノンタブリー県、ムアントンタニのインパクトアリーナに行くのは、かなり早起きせねばならない。

朝6時過ぎだが、続々と会場に集まるファン

著者も現地観戦の為、バンコクを午前5時過ぎに出発し、アリーナに着いたのは6時過ぎだったが、会場にはすでに多くの人が集まっていた。朝6時半からはONEキックボクシング世界フライ級王者である、スーパーレック・キアトモー9と元ONEムエタ世界バンタム級王者のノンオー・ハマのサイン会も行われ、開始直後から長い行列ができていた。

スーパーレック&ノンオーのサイン会。ルンピニースタジアムの朝興行でも
スター選手のサイン会(6時半~)はよくセットされる。
インパクトアリーナ4階席からのケージの見え方

タイのONEのファンにとっては、朝の興行には、もう慣れているのか、チケットの売れ行きも良く、大会1週間前インパクトアリーナの1万2000席は「SOLD OUT」のニュースとも発表された。

シッティチャイ対野圦戦

シッティチャイ対野圦戦


全10試合の中のちょうど真ん中に組まれたのが、フェザー級キックボクシング3回戦のシッティチャイ・シットソンピーノン対元K1王者の野圦正明戦だった。日本からの注目も高い一戦だが、見ているうちにムエタイの試合を見ているような気になった。遠目からもシッティチャイは動きながら、自身の得意な距離を保ち、常に野圦をコントロールしていることが確認できる。

観客からのシッティチャイコールも目立つ中で、復調の判定勝ちを飾ったシッティチャイ。連敗を脱して、フェザー級王座戦線への復帰をPRした。「私はまだフェザー級で多くの強豪と戦わねばならない。ONEには強い選手しかいない。キックボクシングフェザー級トーナメントなど、いつでも誰とでも戦えるよう準備をしておく」と試合後のコメントがニュースサイトなどで発表されていた。

タワンチャイ対ナタウット戦


そして、この日のメインイベントは同じフェザー級のタワンチャイ対”スモーキン”ジョー・ナタウットのタイトルマッチである。この組み合わせは昨年10月にノンタイトル3回戦で既に行われ、タワンチャイが判定勝ちを収めているが、ジョーの奮戦に、大舞台、インパクトアリーナでの8カ月ぶりの再戦が組まれた。

神童と呼ばれ、連勝を続けてONE Championship の顔となった25歳のタワンチャイ(132勝31敗、ONE・8勝1敗)に対して、34歳のジョーのこれまでの戦歴はタイのファイターの中でも異質と言える。一度は引退したが、2013年よりアメリカに移住し、現地のムエタイ団体、ライオンファイトで現役に復帰、ライオンファイトのチャンピオンに就くなど活躍した。これまでの戦績は72勝11敗、ONE・6勝5敗、2018年よりONEに参戦し、6年をかけて、この日のタイトルマッチにたどり着いた。

観客席からは長身でハンサム、スマートな貴公子のようなタワンチャイを応援する女性ファンの黄色い声と、色黒で、いかにも男臭いジョーを応援する男性たちの野太い声と、両極端な応援が聞こえる。初回から拮抗した試合だったが、4回にタワンチャイのミドルキックから左ストレートにダメージがあったかのように見えるジョー、勝負の行方が見えてきた。

タワンチャイ対ジョーは2回目の対戦
2戦目となる今回も一進一退の攻防

最終5回はタワンチャイが流して抑えた印象で、小差だがタワンチャイ勝利のように見え、オフィシャルは2-0でタワンチャイを支持した。ただし、著者とは別のゾーンだが、会場で観戦していた知人の現役選手は見方が異なり「ジョーが勝っていた」という意見だった。

タワンチャイは勝利者インタビューでは歓声とブーイングを浴びながら「何も話すことはない」とコメント。腫らした左目については初回にジョーのヒジを被弾したもので「(腫れで)全然見えない」とした。「ごめんなさい。そして、応援してくれた人、皆さん、ありがとう。何も話すことはないです」と言葉少な目だった。

この日のヒーローは試合を盛り上げた”スモーキン”ジョー・ナタウットだったようで、イベント終了後の話題は、タワンチャイ対ジョーのパート3となる再々戦が実現するかどうか。ネットニュース、SNSでもジョーが勝っていたとの意見が多かった。

ロッタン対デニス戦


そしてこの日、セミファイナルの出場のロッタン・ジットムアンノンは39歳のデニス・ピューリックに判定勝ちを収めたが、前日計量は3.5ポンド(1.4キロ)のオーバー、更にONEの独自のハイドレーション・テストについてもパスできなかった。ハイドレーションテストは水抜き減量を禁止する為に尿比重を確認するもの。最終的にはハイドレーションテストはパスしたと報道されていたが、契約体重は61.2キロから64.7キロに変更され、試合は実施された。

ロッタンは昨年9月のスーパーレック戦では、スーパーレック側の5ポンドオーバーを喰らっていたが、再起戦となる今回は、逆に体重オーバーをしてしまい、インパクトアリーナでの大イベントに水を差してしまった。実際の試合は強引な攻めが目立ったロッタンがデニスを崩し切れず、3回判定勝ちに留まった。

全体を通じて荒さが目立ったロッタン。前戦(ス-パーレック戦)のほうがキレがあった。
2023年9月のスーパーレック戦の後は、負傷により東京大会の武尊戦をキャンセル。
6月に入ってようやく戦線復帰。

ロッタンは26歳にして、既に300戦以上(272勝43敗)を経験し、ONEでの戦績は15勝2敗となった。試合後のインタビューでは「1年近く試合ができず、体重も増えていたが、この3か月しっかり準備してきた。しかしこんなこと(体重超過)になってしまい、昨夜はどうしたら良いのかと(涙声)、、何とか勝つことが出来ました。応援してくれたタイ人の皆さん有難うございました」そしてインタビュアーに今後のことを聞かれ「武尊、準備は良いか?武尊、やるぞ!(英語で)」と武尊戦の実現を訴えていた。

↓ ↓ ONE167全試合の動画



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