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みんなの話、友達の話、飛距離の話

「みんな持ってる」「友達の話なんだけど」にツッコミを入れつつ、本題は夫婦の性の話をする。

みんなって誰だよ!?

子供が「友達みんな持ってるから」とモノを欲しがると、「みんなって誰だよ?」の具体例を求める。たとえ名前を列挙されても、それが「みんな」なのかを問う。本当にみんなが持っていたとしても、親の立場を利用して「他所は他所」と言うたりもする。

これが夫婦の性問題となると、「具体的にどの夫婦だよ?」と突き止めるのは野暮すぎる。たとえ他所やみんながどうだろうと、夫婦関係においては2人で歩み寄って折り合いをつける問題となる。...とは言え、参考までに他所のことも気になる。

そのデータは信頼できるのか?

性に関するメディア(例えばエロ本)が独自にとった統計だと、サンプリングの偏りが気になる。よくある「インターネット普及率100%(※インターネット調べ)」みたいな話で、もし性に関心が強い読者を対象に調査していたらデータが偏るんじゃないかとは気になる。サンプリングが正しかったとして、母集団を推定するのに十分な数なのかも気になる。

それなりに信頼できるデータという意味では「国立社会保障・人口問題研究所」の公開している、「出生動向基本調査」が面白い。

この調査は、国内の結婚、出産、子育ての現状と課題を調べるために、当研究所がほぼ5年ごとに実施している全国標本調査です。夫婦の方への調査と、独身の方への調査を同時に実施しています。それぞれの政策的な課題を社会科学的な立場から探ることが主な目的です。

2021年実施のようなので、ちょうど回答を集めたりデータを取りまとめたりしているのだろう。生活様式が変わっての変化も気になるところではあるけれど、今参照できる最新は2015年の統計情報となる。

夫婦による避妊の現在実行率は39.8% !!?

国立の研究所がこんなこと調べてるんだ!と意外に感じたのが、「第3章 妊娠・出産をめぐる状況」のだった。

内訳として「追加出生予定あり」夫婦の避妊実行が平均「26.1%」と低いのは理解できるけれど、「追加出生予定なし」でも「45.7%」に留まっているのは意外だった。半分以上の夫婦は出生予定もないのに「とりあえずナマで!」なのか!!?

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...んな訳はなく、ちゃんと読むと以下の記載がある。

追加出生予定がない夫婦においても避妊の現在実行率が大きく減少しており、セックスレスが広がっている可能性もある。

つまり、「追加出産予定なし」のうち避妊実行していない「100.0% - 45.7% = 54.3%」の実情はセックスレスなのだろう。

逆に、避妊実行中の夫婦の避妊方法別割合をみると「性交中絶(膣外射精)」が避妊方法の17.7%を占めている。これは避妊法に含めて良いのだろうかと心配にはなる。

友達の話なんだけど...

どんな神経で「性交中絶(膣外射精)」を選ぶのだろうか。亜鉛&マカのグミサプリを推していた友達から聞いた話。

週7でイケる話に対して「そんな元気ならサプリに頼る必要があるのか?」と聞くと、「飛距離がのびる」と言うてた。「飛距離って何だよ!」とみんなが一斉に突っ込む。

既に二人の子供がいて、次を積極的に狙う訳ではなく、かと言って完璧に避妊するわけでもなく、天に任せて授かれば産む。そのプロセスにおいて飛距離を追求するという話。

運に委ねる場合は「追加出生予定なし/あり」のどちらに集計されるのだろうか。そのようなパターンがあること自体が、統計からは抜け落ちる。それにしても「友だちの話なんだけどさ...」の前置きって何なんだろうか。

トライアンギュレーションしつつも夫婦が主

「うちは1.96人の子供を育てている」という平均的な家庭なんて何処にもない。実際は1人っ子か兄弟なのだ。どの家庭にも個別の事情があって、統計では拾いきれない。

とは言え飛距離の話なんかは「そんな特殊な例を出されても、個別の話にしか過ぎない」と言ってしまえばそれまでである。頑張ってN数を増やしても同じである。

定量にも定性にも欠点はある。様々なデータを組み合わせるトライアンギュレーションによって把握するのが社会科学の知恵である。

そうやって巷の性事情が把握できれば、全体の中での位置が掴め、話をするキッカケくらいにはなるだろう。かと言って、むやみに他所や普通に合わせる必要はない。夫婦お互いとってちょうど良いならばそれが一番なのだ。

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