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経営ピンチを発信する休みがちなお店

近所の市場にある、休みがちなお店の話をする。食品販売と飲食店が併設したお店で、一律で昼くらいから開店して平日は夕方には閉まる。週末も21時には完全に閉まる。臨時休業だったり、お客さんが少ないのか早めに閉めている日もある。

市場にある食品販売店オンリーなお店であれば、夕食の買い物を終える夕方に閉店すること自体は納得感がある。

一方で、飲食店としては14-17時くらいに営業していても利用しない。それよりも、夜22~23時くらいまでやってくれる方が利用しやすい。ベッドタウンのため、繁華街からの帰りでフラッと寄るパターンも多い。

つまるところ、フラっと一杯ひっかけたい勢からすると、本題のお店は「あの店はいつも閉まっている」という評判だった。


一般人と同業者による評価の違い

休みがちなお店に対する評価は、一般人と同業者で違っている。あくまで私個人の実感や、私が見聞きできる範囲のお話として受け止めてほしい。

一般人はニュートラルに捉える

一般人の場合、お店が休みがちであること自体は「良い」とも「悪い」とも思っておらず、お店そのものの評価に直結する訳ではない。

予約してでも入りたい程のお店であれば、調べて日程を決めて予約する。行列のできるお店であれば並ぶ。一見さんお断りの店ならば紹介者を探す。

お店に入るために努力をして、その労力も込みで「並んで入るほどの価値のあるお店だったか?」を後から判断する。

が、思い立ってふらっと訪れたいお店の場合、「開いていると思ったのに閉まっていた」が続くと、無駄足になるのを避けるためお店選びの選択肢から外す。

来店したお店については良し悪しを評価するけれど、そもそもご縁がなく来店できなかったお店に対しては、判断の机上に挙がらない。プラマイゼロの無感情となる。


同業者は負の評価をする

飲食店を営んでいる人々のお話を聴く機会があり、別のお店に対して「あのお店は頑張っている/頑張っていない」という見方をしていることを知った。

同業者からすると、休みがちなお店ををよくは思わない。この捉え方が私にとって新鮮だった。

お店ごとに事情は様々だろうけれど、ものすごく単純化して会社員に置き換えてみると思い当たる節はある。遅くまで頑張って残業しなければならない人から見て、気楽に仕事して定時でサッサと帰る人は気に食わない。

休まず遅くまで頑張らなくてもパフォーマンスを出すという意味では、ある意味で「上手いこと仕事をしている」とも言える。無責任な外野だから言えることではあるけれど。


経営危機のSNS発信が他力本願

そんなある日、本題のお店が「経営ピンチ」「今月赤字」「皆さん、助けて下さい!」という旨をSNS投稿しているのを目にした。

休みがちでも成立しているなら、外野がとやかく言う事じゃないなと思っていた。でも、そうではなかった。成立してなかったんかい!

率直な感想、他人に助けを求める前に、まずは当事者ができることをすべきだろとは思う。具体的には、営業日や時間を宣言して、その通りに営業すること。定休日を減らして、遅くまで営業すること。

もちろん、長時間労働を美化する時代は終わりつつある。他の客寄せ策や、他の人に任せられる体制をつくり、無理なく働ける営業日・営業時間で売上げが確保できるような根本解決が望ましい。

でも、どちらの努力も足りないから経営危機なのに、自分自身を変えずに他力本願でお願いするお店を、足を運んで助けようとは思えない。


コアファンに頼るか範囲を広げるか

なるべくオブラートに包みつつ、「プロフに営業時間を宣言して、その通りにやっていると利用しやすい」「営業時間のばすと利用しやすい」ということを要望としてコメントしてみた。

くだんのSNS投稿のコメント欄は、ありのままのお店を応援する内容(擁護派)と、お店側も変わった方が良いんじゃないかという内容(批判派)に分かれていた。オブラートに包んだところで私は後者。

お店側の反応として、前者の擁護派は好意的なコメントを返しつつ、後者の批判派はスルーしていた。OK。スタンスは理解した。

擁護派に迎合する気持ちも理解はできる。実際、あまり来店しない客がアドバイスされても、良い気はしない。八方美人になって誰からも好かれないよりは、お金を払ってくれる人の意見を聞く方が賢明でもある。

理屈としても「ニハチの法則」がある。2割の常連が8割の売上をもたらしてくれるなら、批判的な8割よりもありのままを愛してくれる2割を大切にする方が理に適っている。…ということが「ファンベース」という本の中で述べられていた。

ただ、それが上手くいってないから本題のお店は経営危機なんだよね?とは言いたい。

ビジネスっぽい枠組みで捉えてみる

ブランディング

「ブランディング」を平たく言えば、お店側の「こう思われたい」と、顧客側の「こう思う」を一致させることだと捉えている。

「いつも閉まっている店」ではなく、「幻の店」と印象付ける作戦もある。「健康志向だから夜更かしせず早めに閉める」をアピールする手もある。

どういうキャラを目指し、対外的にどう情報発信するかは、クリエイティブ職が頭をひねるべきお仕事だったりもする。

でも本質的には、あるべき自分を描き、そう思ってもらえるように小さな約束を発信し、約束を果たし続ける積み重ねるしかない。

ターゲティング

この情報過多なご時世、万人受けしようとしても埋もれてしまう。自分のキャラを受け入れてくれそうな相手に絞って、愛してもらえるよう努力する方が筋がよい。

…と言うような内容はマーケティングの教科書にも書いている。が、実際にやっているのに経営破綻になるなら、何らかの策は必要となる。要素分解すると以下の通り。

  1. 既存のターゲット顧客から多くの売上を得る

    1. 常連さんの来店回数を増やす

    2. 客単価を増やす

  2. ターゲットを広げる

SNSのやり取りから受け取った印象として、本題のお店は「2.」を切り捨てて、「1.」で勝負する判断と読み取れた。それが良い打ち手なのかは、時間が経ち蓋を開けてみたら分かるだろう。


Win-Win or No Deal

「7つの習慣」の中でも、第4の習慣として「Win-Winを考える」が挙げられている。

私からすると、身近なお店がつぶれてシャッター街になるよりは、繁盛して街の活気に繋がることは「Win」である。お店にとっても、経営難を乗り越えて軌道に乗ることは「Win」である。

でも、「お店を助けなきゃ」という動機で、無理して延命のために足を運び続けることは自分にとっては「Lose」である。それなら、行きたい店に行った方がよい。

「Win-Win」「Win-Lose」「Lose-Win」「Lose-Lose」の4パターンに加えて、実は凄く大事だと思っているのが「No Deal」という選択肢。Win-Winにならないならば、他で妥協するのではなく関わらない「No Deal」を選ぶべしという教えがある。

お店側に変わろうという気概がなければ、私との関係は「No Deal」でよいなと思った。

どんな理論や志があろうとなかろうと、最終的な判断を下すのは市場原理である。本題のお店が今月を乗り切って無事に来月を迎えられるかは見守りたい。

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