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#0061 日本企業の海外企業買収事例

日本製鉄が米国の老舗鉄鋼メーカーであるUSスチールを約2兆円で買収すると発表したニュースは大きな話題となりました。


日本製鉄は、この買収により粗鋼生産量で世界第3位になるとともに、米国市場でのシェアを拡大し、環境規制に対応した製品の開発や販売に強みを持つとしています。

ただ、日本製鉄の株価や格付が下がるなど、ネガティブな反応が聞こえてきます。今日は過去の日本企業の海外企業買収事例を見ていきたいと思います。(1183文字)

○失敗事例とその要因

日本企業による海外企業の買収は、必ずしも成功するとは限りません。過去には、日本郵政が豪州の物流会社トールを買収したものの、巨額の減損損失を計上して撤退した事例、東芝が米国の原子力会社ウェスチングハウスを買収したものの、不正会計が発覚して経営危機に陥った事例など、失敗に終わったケースが多くあります。買収のニュースが出た翌日の12/19の日本製鉄の株価が下がったのもネガティブな受け止め方が大勢だったからかもしれません。

海外企業の買収に失敗する主な要因としては、以下のようなものが挙げられます。

①投資対効果が見合わない
②損害が発生する
③破産する場合もある
④のれん代の減損損失が生じる
⑤企業イメージが悪くなる
⑥M&A後に粉飾が発覚する

これらの要因を回避するためには、買収前にしっかりとデューデリジェンスを行い、買収価格や買収先の財務・コンプライアンス・リスクなどを正しく評価することが重要です。また、買収後には、買収先の経営陣や従業員とのコミュニケーションや文化の融合を図り、相乗効果を最大化することが求められます。LBOファイナンスの貸し手の目線からも同じことが言えます。

○成功事例

一方で、日本企業による海外企業の買収には、成功事例も少なくありません。例えば、以下のようなケースがあります。

ダイキン工業が米国の空調機器メーカーであるグッドマンを買収し、米国市場でのシェアを拡大した。
日本板硝子が英国のガラスメーカーであるピルキントンを買収し、自動車用ガラスや建築用ガラスの分野で世界的なリーダーになった。
ソフトバンクが米国の携帯電話会社であるスプリントを買収し、米国での通信事業を展開した。

これらの成功事例では、買収先の強みや戦略を尊重し、買収後の統合やシナジー創出に努めたことが共通しています。

○まとめ

以上のことから、日本製鉄のUSスチール買収は、日本企業による海外企業の買収の成功・失敗事例から学ぶべき点が多くあると言えます。

日本製鉄は、買収先の価値やリスクを正しく把握し、買収後の統合や相乗効果の実現に向けて努力することが必要です。また、買収先の従業員やステークホルダー、とくに労組との信頼関係を築くことも重要です。

日本製鉄がこれらの課題に対処できれば、海外企業の買収の成功事例となる可能性は十分あるのではないでしょうか。

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