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らしさの武装と嗅覚 (小説)

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#始まらないはじまり

らしさの武装と嗅覚 3

まずかったな 左肩に薄い温もりと重みを感じながら、俺は久しぶりに悔やんだ。完全に体を預け…

苧環
2年前
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らしさの武装と嗅覚 4

したんだよね、私…キス。 されたんだよね、昨日。 信じられなくて、あれから何度も何度も反芻…

苧環
2年前
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らしさの武装と嗅覚 5

おめでとうと言われる。ありがとうございますとお辞儀をする。エレベーターホールで、通路で、…

苧環
2年前
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らしさの武装と嗅覚 6

膝の上に置いた光沢のあるグレーのショップバッグの中には、紺色のリボンが掛けられた箱。 昨…

苧環
2年前
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らしさの武装と嗅覚 7

長野君が結婚するらしい。 社内に彼女がいるのは知っていたけど…。この前お相手の植野さんが…

苧環
2年前
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らしさの武装と嗅覚 9

有給を消化して二日ぶりに出社した私が目にしたのは、空になった隣のデスクだった。もともと物…

苧環
2年前
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らしさの武装と嗅覚 10

私のせいかなって思って…… そう言う田中さんの瞬きの回数が半端ない。緊張してるからなのか、それともただの癖なのか、その区別が出来るほどまだ彼女のことは知らない。 田中さんのせいってことは、ないと思うよ。私の声に大袈裟に、こくんこくんと縦に首を振る。ですよね?そうですよね?と言う言葉の代わりみたいに。 ・・・・・・・ 彼女と知り合ったのは、2ヶ月ぐらい前だったと思う。遅めのランチに行こうとフロアを出たところで、真っ赤な目をした彼女を見掛けた。さっと通り過ぎるにはちょっと