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#4 懐かしい場所に行くのは、60歳からが適齢期でしょう

先日、朝日新聞の夕刊に載ってしまった。
土曜日の夕刊の「いいね!探訪記」という記事。
と言っても、コメントが少し紹介されただけで、記事の主役は東京都北区赤羽台団地のスターハウス。

■昔住んでいた住居が文化財になった!


赤羽台団地のスターハウス3棟を含む4棟が「我が国の住生活環境を示す文化資源」として、団地としては初めて国の登録有形文化財になったという記事なんだけど、そのうちの1棟のスターハウスに、かつて住んでいたことがあったため、「都内のライター、浅井郁子さん(60)は中学1年から高校2年まで、保存されるスターハウスの5階で暮らした」と紹介されてしまったのだ。

(朝日新聞の記事はこちら→2020.7.25朝日新聞夕刊「公団住宅の真ん中にY字形の建物、その名もスターハウス

(文化財になったというプレスはこちら→UR都市機構「旧赤羽台団地の「ポイント型住棟(スターハウス)」を含む4棟が団地初の登録有形文化財(建造物)に登録へ」

いやはや、自分が住んでいた住居が文化財になろうとは。
すごくうれしいことだけど、それだけ年月が経ったという証よね。
過ぎた年月の長さをしみじみ思ってしまう。

この記事は写真もよくて、さすが全国紙だけあってヘリを飛ばしているのね。
空撮写真が新聞紙に印刷されると何とも言えない趣があって、3棟のスターハウスだけが時が止まっているかのようにたたずんでいる。
その写真の自分が住んでいた部屋を見つめていたら、ちょっと胸がズキンとした。
記事を大切保管したくなり、額縁を購入してリビングに飾った。

■60歳になり、懐かしさだけに浸るぶらぶら歩きをしてみたくなった

赤羽台団地に遊びに来てくれたこともある高校の同級生で作っているLINEグループに、記事のことを知らせた日は、しばし思い出話に花が咲いた。
昔の同僚からもメールをいただいたり、近所の人からは「あれってもしかして浅井さん?」と声をかけられたりね、けっこう皆さん読んでいるのね。
「一緒に見に行きたいね!」と言ってくれる友もいて、温かい気持ちになった。

実は、60歳からやりたいことの1つに「懐かしのぶらぶら歩き」がある。
東京に生まれ、東京で育ち、今でも東京に住んでいるので、育った家にも青春を過ごした場所にも、大人になってから住んでいた街にも、懐かしい場所には簡単に行くことができるから。
これまでも行けたわけだけど、懐かしい場所に行くのって60歳になってからが適齢期だと思ったのだ。
その理由は2つ。
1つは、人生の暦が一周した還暦を過ぎたら、どんな過去も過去は過去と思えるようになったので、かつて住んでいた家や街をぶらぶら歩くのは、懐かしさだけに浸れる感慨深いものになるだろうと思ったこと。
もう1つの理由は、60代ならまだまだたくさん歩けて動けること。

ちなみに私の場合、記憶にない1歳までの住まいを入れると、これまでに首都圏で8カ所移り住んでいる。
こんな感じ。

・0~1歳(1年間):田無市(現西東京市)のひばりが丘団地
記憶はない。当時皇太子だった平成天皇と美智子様が訪れたときに住んでいたらしい。

・2歳~11歳(10年間):世田谷区等々力の公務員住宅
すぐ隣にあって毎日遊んでいた野毛公園内の大塚古墳も、今や東京都の指定史跡という。

・12歳~16歳(5年間):北区赤羽の赤羽台団地
住んでいた建物(スターハウス)がこのほど国の登録有形文化財になった。

・16歳~17歳、20歳~29歳(計12年間):調布市つつじが丘のマンション
 高校時代の2年間と、社会人になってからの20代を過ごす。

・18歳~19歳(2年間):鎌倉市二階堂の音大の寮
 初めて親元を離れた2年間の寮生活は楽しかった!

・30歳~33歳(3年間):調布市つつじが丘のアパート
 初めての一人暮らしは、モルタル2階建てのアパート

・34歳~48歳(15年間):府中市是政のマンション
 分譲マンションを購入して、シングル人生が確定した?!

・49歳~現在(12年間~):都内某所のマンション
 父親の介護のため20年ぶりに親と同居し、現在に至る。ここが終の棲家となるのか思案中?!

現在の住居を除いても7ヵ所も訪れる場所があるなんて、歩きがいがあるっていうもの。
かつて暮らしていた街をぶらぶら歩き、住んでいた家(建物)、遊んでいた公園、学校や図書館、商店街、知り合いの家等々、過ごした場所を訪れてみたい。
新型コロナウイルスの感染状況が終息したら実行しようと思う。

■自分の歩んだ人生を肯定しようと思えるのが還暦を迎えるってこと


人生の振り返りは、40代の頃から始まった気がする。
でも、過去に後悔することや辛いことがあっても、自分の歩んだ人生を肯定しようと思えるのが還暦を迎えるってことじゃないかな。
だとすると、60歳を過ぎてからの振り返りが“ほんまもん”ではないだろうか。

この先、もしも長生きしたら、きょうだい、親族、友人、知人などを先に失う経験をしていくこともあり、その喪失感から孤独は高まるだろう。
それを薄めるためにも、そして60歳からのシングル人生を有意義なものにするためにも、自分の歴史をたどる「懐かしのぶらぶら歩き」をしたくなったのだ。
きっとそれは、過去を宝物にできる思い出の小旅行になるんじゃないかなと思っている。


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