小学校の頃の夢がいつの間にか叶ってた話。
私には小さな頃、大きな夢があった。
太陽系の外に行って、惑星を探索する大人になりたい。
それを大人(おそらくは両親のどちらか)に話すと、それは宇宙飛行士だよと言うので、
私はその時からしばらくの間、宇宙飛行士になりたいのだと
キラキラした目で語る大人が好みそうな無垢な少年になったのだと思う。
しかし、ふとした時に見た番組か何かで、
宇宙飛行士が話してるのを見たときに、
宇宙飛行士とは、ただロケットに乗り込んで、
地球の大気圏外にある宇宙ステーションに泊まりに行くだけで、現在は月にさえ行くことがなく、
何より宇宙に関する知識も、そこらへんに落ちてる情報を多少調べただけの小学生の自分と何ら変わりのない、偉そうなだけの旅人だと知ったとき、
私の夢はなくなったのだ。
今でこそ旅人は生き方としてカッコイイと思うので、その一環として宇宙飛行士はありだと思うが、当時は割とショックだったのだと思う。
そして、小学校高学年にして、新橋のビール飲みの様な目になった少年に再び夢を語らねばならない機会が訪れた。
先生が夢をかけと紙を渡し、皆それぞれ適当な夢を書いてゆく。
私は当然夢が無かったので、その場で思いついた『トイレ掃除のおじさん』と書いた。
子供ながらにこの回答は問題があるだろうとわかってはいただろうけれど、
長い事偽りの夢を語らされていた、行き場のない怒りをここに込めて、大人が怒りそうな夢を書いたのかもしれない。
計画通りというべきか危惧通りというべきか、やはり先生に呼ばれ、
職業に貴賎はないでしょ?何か問題あります?と用意してた言い分を通そうとするも、
本当になりたいのか?と問われれば、まぁ素直な少年だった私は、
「いいえ、別に」と答えざるを得ず、当然書き直しを要求された。
この時になって初めて、
第二の夢を考えさせられることになった私は、
まぁ頭を使う仕事はしたいし、宇宙に行けないならもう地球をぶっ壊しちゃえばいいやと思い、
真剣に考えた結果
『世界の滅亡を目指す研究者』と書いて再提出したのだった。多分イライラもしていたんだろうけど。
最初からこの答えであれば、おそらく問題にならなかったのかも知れないけれど、
前科があったこともあり、やはりまたしても呼び出される事となった。
今度は本当に目指してるのか?と問われても、
嘘偽りなく真剣に目指すことにする。
だから、問題は一切ないと自信をもって言っても、
今度はこれは真剣でも駄目の一点張りで、
私の方は私の方で、絶対にこれで提出すると引かなかった。
結局通りがかった友達に、俺と一緒に野球選手やろうぜと言われて、
野球選手と殴り書きをして不満ながらしぶしぶ納得したのだったと思う。
最近になってふと、魔王って世界の滅亡を企んでる研究者だよなぁと、この時のことを思い出し、
むしろ、当時の拙い言語能力で表現したその研究者よりも、魔王の方がイメージに近い事に驚きつつ、
世の中どんな形で夢が叶うかわからないもんだなぁとしみじみしている私でした。
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