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データで見る沖縄県民の生活: 稼いでも、 稼いでも、 ラクになれない沖縄

ご存知の通り、沖縄県は深刻な貧困県です。貧困率は34.8%で全国平均の約2倍、ワーキングプア率は25.9%で全国平均の約3倍、子供の貧困率は37.5%で全国平均の約3倍となっています(参照)。県が取り組むべき重点施策として「子どもの貧困対策」を挙げた沖縄県民は42.1%と最も多く、次点となった「基地問題」の26.2%を大きく引き離しています(参照)。

下図は、2007年から2019年の、勤労世帯の家計支出と世帯収入の増減(棒グラフ)と、前者を後者で割った生活コスト指数(折れ線グラフ)です。沖縄は北海道に次いで世帯収入が増加した地域ですが、家計支出がそれ以上に増加しており、全国で唯一生活コスト指数が100%以上の地域であることが分かります。つまり、沖縄は「稼いでも、稼いでも、ラクになれない地域」なのです。

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この12年間に起こった沖縄の経済と社会の変化による世帯収入の増加

2007年といえば、リーマンショックに端を発する不況が起きる前年です。2011年の東日本大震災を経て、2012年から始まった円安の効果によって沖縄の観光客数はハワイと同規模の1,000万人まで増加。それに伴う民間投資や公共事業の拡大などもあって、沖縄の経済も2019年までの長期間に渡って全国平均を上回る成長率を叩き出していました。

加えて、沖縄の生産年齢人口(15〜64歳人口)が2012年から減少に転じたことで人手不足も加速しました。有効求人倍率と最低賃金は上昇し、永年に渡って沖縄の経済と社会を悩ませ続けてきた高い失業率は本土復帰後の最低値まで一気に改善されました。下図を見ると、労働者数も世帯員全員の収入も増えており、世帯主の収入増だけでなく、共働きが増えたことも分かります。こうして沖縄の世帯収入は増えました。

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世帯収入の増加率を超えてしまった家計支出

世帯収入の増加(109%)以上に増えたのが家計支出です(110%)。「稼いでも、稼いでも、ラクにならない」のは、収入が増えた以上に支出が増えたからです。下図は、2019年の沖縄の勤労家庭における項目別の支出金額とその全国比です。沖縄の生活コストは全国平均より2割ほど低いのですが、住居費や水道光熱費、食費の支出額は全国平均とあまり変わりません。その一方で、娯楽費や保健医療費、被服・履物費の支出額は全国を下回っています。つまり、娯楽やお洒落などを控え、身体のケアを後回しにして生活費に充てている様子がよく分かります

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