見出し画像

生成AIのことを振り返る, 2017年あたりは分水嶺だったと思う.

2016年あたりのインタビューの復習から入ろうか.
この頃はGANで色々作るのが流行った時代,私も研究者なのでそういったあたりの盛り上がりを感じてた頃.AIがレッドオーシャンになって,息が長い研究がしたいとなると実は文化面というのが当時の気づき.でも数学の研究をしろという人が当時は多かった(レッドオーシャンもすごかった)

今までのデカルト的世界観では、人間と自然を対義的なものと捉えて、自然を人間の言語で記述していこうとしたんですけれど、どうもそれが厳しいらしいってことが分かってきました。人間の言語でも記述可能だけど、それのみに限らず現象論的にコンピューターで観測した方がより守備範囲を広げられる。デジタルネイチャーは、自然、人間、そしてコンピューター自体も内側にふくんだ超自然をコンピューター機器で記述することで見える世界なんです。

超自然

落合: そうですね。デジタルネイチャーのデジタルって「バイナリ」という意味じゃなくて、「計測された」っていう意味です。極論すれば人間の持つ好き嫌いとか、言葉にできないふわっとした感情も数値的に計測できると思います。人はフィルタとフィルタの関係性が演算速度が速いので見えないだけなんですよね。だから、感情の数値化をしたからと言って感情の存在を否定しているわけではないんです。

キリスト教の世界がコペルニクス的転回で崩れたから、人間中心の世界で哲学を構築した。この後の我々は人間性が情報科学で崩れていくから、違う思考体系やパラダイムを探っていかないといけないだけです。歴史からすればそんな重大な問題でもないと思います。


人工知能によって人間の仕事を奪われることはない?

落合: 今の社会で人工知能の一番の問題は「人工知能怖い問題」なんです。人工知能の話題を出して、その5秒後には「人工知能に仕事が奪われる」って言う人がたくさんいますけれど、意味が分からんってやつですよね。

―― 仕事を奪ったり世界を滅ぼすかも?と怖がる人たちがいたり、逆に救世主のように過剰な期待をする人もいますよね。人工知能の議論は、どうしてこんなに人の気持ちをザワつかせるのでしょうか?

落合: 今までホワイトカラーが覇権を握ってきたからだと思います。今働いてる人のほとんどは身体ではなく頭脳が優秀だから仕事ができると思っている。でも、それ実は大きな間違いで、多くの人類は身体も相当優秀です。だから身体性に回帰すると結構良いんじゃないかなって思うんですけどね。職人たちは多分誰も人工知能のことを怖いって思ってないと思いますよ。人類は、ランダム性を生み出す「身体」というハードウェアの中に知能が入ってるから面白い。ただ知能が存在するだけだったら、きっとそんなに面白くないはずです。

仕事と機械の関係で言うと、前にインドに仕事で行ったとき、田舎の方にぶらっと立ち寄ったのですが、トイレのドアを開ける職業の人がいたので、その人に「自動ドアになったらどうするの?」って聞いたんです。そうしたら「自動ドアを管理する仕事をする」って言われました。別の所では、冷蔵庫の前で寝ている男がいたので「あなたは何をしているんですか?」って聞いたら、「俺は冷蔵庫を開けて、この中からコーラを出してお前に売る仕事をしている」って言うんですね。ああ、自動販売人間(機)か、って。

要はインドってヒューマンコンピューテーションが非常にされている国なんです。文明の発展とともに、業態も進化して変わってきたけれど、人間と機械っていう対応関係は変わっていません。どっちがえらいわけでもなく、その環境の中で機械の方が有利であれば、それのサポートに回る。なんかすごく自然ですよね。「機械や人工知能に仕事が奪われる」と言う人はいるけれど、仕事のコンビネーションの様態が変わるだけで奪われるわけじゃないんですよね。そういうことをインドにいる彼らは体現していて、そこが好きです。

実際、産業革命以後、エンジニアはそこそこの時間を割いて、工作機械のお守りをしてきたわけですが、それが知的機械のお守りをするだけですよ。あまり変わらない。

僕たちはいつも「ぼんやりと」会話をしてきた

落合: 例えば象ってどんなぼんやりしたものなんだろうというのを、絵に描いていく手法が出てくると、コンピューターが言語を理解できるようになるんですよね。今例えば、DeepCNNとかで絵を作るプロジェクトが複数あるじゃないですか。我々って言語をイメージしたときに、頭の中で形態素解析を用いて辞書参照なんてしていない。象って言われたら象をイメージするんですよ。しかもその象は写真のような象じゃなくて、なんかぼやっとした灰色の固まりで、ちょっと鼻が長くて、でかくて、肉の塊っぽいやつをイメージするかもしれません。

僕らの会話ってその曖昧なイメージを言語を用いて重ね合わせながらやっている。そういう曖昧なイメージをコンピューターが持てるようになると、コンピューター同士で会話ができる可能性がだいぶ高まりますよね。この点はよくイメージと物質っていう言い方で「魔法の世紀」とかでも書きました。

専門的な会話や目的ベースの会話をするときはゴールがあるので、そういうイメージの重ね合いはあまりしない。だけど日常会話するっていうのは完全に同じデータを共有して意思疎通するのではなくて、ぼんやりとしたイメージで話すってことです。だからコンピューターがイメージからイメージを検索して言葉で返せるようになると、人間とコンピューターは自然言語を使って、なんとなく噛み合ってそうで噛み合ってないようなユルい会話ができるんですよね。

―― 体験を実際にできないから、VRで体験するということですか?

落合: そう。VRで体験する。VRっていまは両手離しで喜ばれてるものなんだけど、将来それが加速していってやがて問題になるだろうなあって思いますね。テレビより没入感があるうえに、個人に提供してくれる。意外と人間の歴史の中では最低ですよそれ。完全にマトリックス。でもね、それが最低じゃない価値観に移行するかもしれないし、選択しちゃう人は多いよ、たぶんね。

だって、誰もが主体的に自己実現していかないといけないようなマッチョで人間性をすり減らす世界観ってかなり疲れるじゃないですか。僕は人間性を削っていくことが好きで気持ちいいからやってるけど、多くの人はそんなに好きじゃない。しかも無駄な努力や環境破壊も多いかもしれない。

そして、人間中心主義が崩れていくっていうことは、多様な価値観を生んでいくってことです。何かを成し遂げることより、清貧な、そして慎ましく地球を破壊せず暮らしていくことのほうが重要だという価値観が生まれてくるかもしれない。そうなったら貧者のVRは有利だよ、だって質量もないし身体もない、データとソフトウェアの世界で自己実現していくことはロハスだし、環境に優しいし、競争主義じゃないし、何より個人の幸せに寄り添う世界だからね。清貧の意味がVRで再定義されていくのかもしれませんね。

貧者のVR

大学のうちの研究室(研究センター)が生成AIの研究を始めたのは6年くらい前だと思う.まず画像生成を元に人間の介在をその枠組みに入れていくような研究が流行った.

Deep Yohjiを始めたのも2017あたりだったような気がする

2017年には最初のペーパーが出たくらい.Ars Electronicaで展示してたのも2017年だった気がする.(加藤奈津実, 大曽根宏幸, 佐藤大哲, 村松直哉, 大森功太郎, Ooi Chun Wei みんなありがとう)

研究内容
AI技術による個人最適化技術と空間視聴触覚技術の統合を通して、人機一体による身体的・能力的困難の超克を目指します。音響提示装置や義手義足などの支援ハードウェアに,ユーザ特性のモデリングやユーザ自身による認識タスク定義を通した適応的な学習機構を組み合わせることで、多様なニーズに応えるAI基盤を提案します。障がい者コミュニティ等との連携を通して、具体的なユーザとタスクに特化したAI技術の社会実装に取り組みます。


Arsで生成AIファッションでノミネートされたのは2018年あたりだっけ?

科研もらってた頃が懐かしい.2018年.

こういうのの社会実装(という言い方も古いけれど)

2020年には商用化して壁紙作ったりシャツ作ったり色々やってた記憶がありますな.

文章生成も弊ラボ大曽根君がやり始めたのが2018-2019あたりだった気がするのでそのあたりからずっとやってるんだと思うと,長い歴史なような気がしてきた.

生成系だと御朱印も好き.

この展示を作り出したのが2016か2017あたり→ 2019公開.

ぬるぬるした表現はいいよねえ

疲れた時、ネコ動画を見て癒されているんですが、じつは #未来館 の展示にもネコがいるんですよ! といっても、これは実在するネコではなく、人工知能が生み出したもの。たくさんのネコ画像から姿や顔などの特徴を学習し、再現したものです。 癒し効果は実在するネコと比べてどうなんだろう…?

Posted by 日本科学未来館 on Wednesday, September 29, 2021


ここから先は

0字
落合陽一が「今」考えていることや「今」見ているものを生の言葉と写真で伝えていくことを第一に考えています.「書籍や他のメディアで伝えきれないものを届けたい」という思いを持って落合陽一が一人で頑張って撮って書いています.マガジン開始から2年以上経ち,購読すると読める過去記事も800本を越え(1記事あたり5円以下とお得です),マガジンの内容も充実してきました.

落合陽一が日々見る景色と気になったトピックを写真付きの散文調で書きます.落合陽一が見てる景色や考えてることがわかるエッセイ系写真集(平均で…

いつも応援してくださる皆様に落合陽一は支えられています.本当にありがとうございます.