炒り豆腐とすいとんの話

ここ最近はなんだかこってりしたものが食べたくて和食以外のものばかり食べていた。クリームスープパスタにラザニア、トースト、カレー、即席ラーメンと体に悪いだろうなあと思いつつ和食から随分と離れて食事をとっていた。

そんな時、SNSで炒り豆腐を食卓に並べている写真を見て、炒り豆腐が食べたくなった。炒り豆腐は学校の給食によく出ていて、あのほんのり優しく甘い味付けと柔らかな色合いが大好きだった。しばらく存在も忘れてしまっていたのだけど、そうか、給食センターでなくても家で作れるのか。

早速、この日の夕飯にと木綿豆腐と人参、干し椎茸、鳥もも肉を買ってきて料理に取り掛かる。木綿豆腐をゆでて水を切っておき、人参は千切りに、干し椎茸は水で戻す。手順はいたって簡単なのに、素材を丁寧に扱っている感じがした。それぞれの違った下ごしらえをする食材たちが一つにまとまると考えるだけで、ワクワクが止まらない。

人参と鳥もも肉を鍋に入れて炒め、肉の色が変わったら干し椎茸を。そのあと豆腐を加えてつぶしながら混ぜる。調味料と卵を入れて一煮立ちすれば完成。

なんとも簡単にできてしまった。大好きだった給食の料理を作れるようになるとは、私も成長したもんだなあとなぜかしみじみする。出来上がった炒り豆腐からは椎茸の匂いがほんのりする。

実は、豆腐という食材はあんまり好きではない。味が一辺倒に感じるからすぐに飽きてしまう。冷奴や麻婆豆腐なんかも。今まで、豆腐は苦手だけれど健康を考えると食べることはしたい…、ずっとそんな風に考えていたけれど、味噌汁に入れるくらいしか手立てがなくて困っていた。だけど炒り豆腐は豆腐が小さくなっていて、豆腐にきちんと味が染み込んでいるという点で苦手意識がなかったのかもしれない。どうしてこんな大好きだったものを忘れていたいたんだろうと不思議でしょうがないけれど、これからはあの大好きな味を家でも楽しめると考えると本当に嬉しいことだ。

これで夕飯のメインはできたわけだが、汁物がない。別にインスタントの味噌汁でもいいけれど、ここまで頑張ったのだから、もう少し頑張りたい。

この前々日にラザニアを生地から作ったら、レシピのラザニア生地が如何せん硬くて生地を伸ばすのにとってもしんどい思いをした(すごく硬い生地を1mm厚に伸ばすのは到底できるもんじゃない)。こんな思いのままいると生地というものに苦手意識が湧いてしまうんじゃないかと思い、記憶を更新するべく柔らかい生地を使うすいとんなんてどうだろうか。

小麦粉と片栗粉、少しの塩、水を混ぜて耳たぶの硬さになるまで捏ねる。生地に求めていたのはこの柔らかさだよなと思いつつ、次に玉ねぎを刻む。鍋にお湯を沸かし、玉ねぎと冷凍していた油揚げを入れる。そこに先ほどのすいとんの生地を一口大にちぎり丸めて平らにして鍋に入れていく。生地の形成作業は簡単なもので、ちょっとした達人気分。5分ほど煮れば、調味料を入れて出来上がり。

食卓に炒り豆腐とすいとん、ご飯を並べて、いただきます。

一番初めに炒り豆腐に手を伸ばす。おお、給食の時の味とおんなじ。口の中に椎茸の香りが広がる。ご飯が進む美味しい味。久しぶりに食べるとさらに美味しい。続いてすいとん、こちらも優しい味わいでスルスル飲んでしまう。その中にある歯ごたえのあるすいとんが汁を吸っていて美味しい。もちもちな食感もたまらない。

どちらも味が身体中に染み込んでいくようだった。普段は食べるのが遅いのだけど、今晩は違ったようで食べきるまでどの料理も温かかった。食事を温かいうちに食べきるのって、大事なことだけどなかなかできなかったから、それも嬉しかった。

何か気づきがあったり、思い出したりする料理は自分にとって大事な料理なんだろうなあと思っている。さらに食べることに幸せを感じられるのは本当にいいことだから、これからも料理を頑張っていきたいと思うし、新しい料理やちょっと距離を置いていた料理にも挑戦したいと思う。明日は何を食べるのか、今から考えるのが楽しみだ。


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