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#101:イーデン・フィルポッツ著『灰色の部屋』

 イーデン・フィルポッツ著『灰色の部屋』(創元推理文庫, 1977年)を読んだ。原著は1921年に刊行された英国ミステリの古典期の作品である。フィルポッツの作品でこれまで読んだのは、代表作とされる『赤毛のレドメイン家』と『だれがコマドリを殺したのか?』の2作品。

 『だれが〜』を読んだのは比較的最近だが、『赤毛の〜』の方は初読は小学生の頃。当時は(今でも?)海外ミステリの必読の名作として推されていた作品だったので、新潮文庫版で読んだのだが、当時の私にはよくわからなかった。成人後に創元推理文庫版で再読して、ようやく「名作」とされていることに納得した。

 本作は冒頭から魅力的な謎が提示され、予想外の展開を挟みながら物語が進んでいく。話の展開に冗長な部分がないわけではないが、発表された年代を考えれば、十分に楽しめる作品だと私は思う。最後に明かされる真相にはちょっとびっくり(いろんな意味で・・・)。子供の頃には、海外ミステリの様々なトリックの例を作品名を伏せて紹介する本を読み耽ったものだが、本作はそうした本で紹介されていたある有名なトリックの実作例であった。ちょっと懐かしいものに出会ったような気分を味わう経験となった。