自分の価値観を調整するにはどうしたらいいか?
前回の記事では、自分の価値観に自覚的になり、フィルターの調整をするために、自分の主観だけではなく、複数の視点をもつことについてお話しをしました。今回の記事は、具体的にどのような手順でフィルター(自分の価値観)の調整をすると良いのかについてお話しします。
今回の記事の位置付けとしては、前回から引き続き、改善・イノベーションの2つ目のプロセスである「メタ意識の活用と現象の観察」に関する内容となります。
フィルター(価値観)調整の手順
こちらが、フィルター(自分の価値観)調整の手順となります。手順というと作業的なニュアンスがありますが、一つひとつを丁寧に、時間をかけながら、自分の中での納得感やしっくり感を大切にして進めていくイメージとなります。
それぞれの手順の詳細をご説明するとともに、私自身の例をお用いながら具体的にお話ししたいと思います。
①自分がもっている価値観に気づく
前回の記事において、自分がもっている価値観を調整するためには、そもそも自分の価値観に自覚的になる必要があるということをお伝えしました。私たちは、事象そのものを直接的に観察しているような感覚を持ちますが、実は自分たち固有の「眼鏡」を通して事象を観察しています。
価値観という「眼鏡」を通じて物事を見ていることを大前提として、「自分はどのような価値観(眼鏡)を通じて、目の前の事象を見ているのだろうか」ということに問いが立つことが大切です。
私自身の価値観が変容した事例を一つお伝えすると、私は昔から「周囲の人から認められたいという願い」があり、「周囲の人から認められることがいいことだ」という価値観を持っていました。
この価値観に自覚的になったきっかけは、会社が創業期から安定成長期になり、会社としてどのような方向性に進んでいきたいかについて考え始めたことです。会社としての方向性を考えるときに、自分はどうしたいのだろうかということを考えるようになりました。
それまでの自分は、「(前職の戦略コンサルティング会社において)一人前のコンサルタントとして認められたい」という願いや、「(起業してから)一人前の起業家として認められたい」という願いを持っていました。しかし、会社としての方向性や、自分はどうしたいかということを考える時に「誰かに認められる」という感覚がしっくりこなかったのです。
自分の中にある小さな違和感に気づいた瞬間でした。
②その価値観が、これまでどのような過程で形成されてきたかに想いを馳せ、それを否定することなく受け止める
2つ目の手順としては、自覚した価値観が、これまでどのような過程で自分の中で形成されてきたかについて想いを馳せます。
ここでのポイントは、その過程を否定することなく、受け止めるということです。
今の自分にはフィットしなくなりつつある価値観であったとしても、これまでは自分にとって大切だった価値観の一つです。その価値観が形成される過程にも自分固有のストーリーがあり、それを否定するものではありません。
そのような自分固有のストーリーを否定することなく、自分にとって大切なものとして受け止めて頂きたいのです。
先ほどの私自身の例では、「誰かに認められる」という価値観は、どこからくるのかに想いを馳せました。
私は、2人兄弟の次男です。(次男の私がなぜ「文四郎」なのかって?Good Questionです!それは、別の機会にお話ししましょう。)兄は4歳年上で、子供の時は体格や力の差が大きく、喧嘩になると勝てた試しはありません。
また、私は3月生まれで、体格も小さい方です。学校では、背の順でいつも前から5番以内。4月生まれの友達との身体的・精神的な成長差は大きく、お兄さん・お姉さんに囲まれているような感覚を今でも覚えています。
このような環境の中で、家族や友人と良好な関係を保つには、「周囲から認められる。一目置かれる」ということは、自分にとっての自然な生存戦略だったのだろうと思います。
当然ながら、子供の時は、意識的にそのような生存戦略をとっているわけではありません。無意識に、自分にとって不快感情を少なくして、快感情を多くしようとしたときに、自然とそのような価値観を持つようになったのだと思います。
③自分の願いに立ち返った時に、どのような価値観をもつことが良いかを捉えてみる
3つ目の手順としては、自分の願いに立ち返って、どのような価値観をもつことが良さそうかを捉えてみることです。
繰り返しとなりますが、2つ目の手順で、その価値観を持つようになった過程を大切に受け止めた後に、3つ目の手順に進むことが大切です。その過程を受け止めることなくこの手順に進もうとしても、これまでの価値観が手放せず変容できないということになってしまったり、変容したと思っても表面的な変容になってしまったりします。
この手順では、自分の願いに立ち返ります。「何の制約もなかったとしたら、どのようにありたいか?どうしたいか?」というような問いが有効です。
私自身の例で言えば、「自分の主体的真理に生きる」ということでした。周囲から認められるということを否定するニュアンスではありません。「周囲から認められるという客観的な評価」を第一におくのではなく、「自分が心からやりたい、ありたい」ということを一番大切にしたいという願いでした。
④必要があれば、価値観を調整して、新しい価値観を試着してみる
4つ目の手順としては、3つ目の手順で捉えた願いを大切にするためには、価値観の調整が必要かどうかを考え、調整が必要であれば、新しい価値観を試してみます。
この手順では、「試してみる」という感覚が大切です。価値観の変容は簡単なものではありません。これまでもってきた価値観は、長い年月をかけて培われたものであり、一朝一夕で変わるものではないことが多いからです。
メタファーとしては服を購入するときに試着するように、新しい価値観を「試着する」感じがいいのではないかと思います。服を試着するのは、ぱっと見て素敵な服だなと思ったとしても、本当に自分にフィットするかは着てみないとわからないからですね。価値観も同じでぱっと考えていいなと思ったとしても、本当に自分にあっているかは「試着」してみないとわからないのです。
私自身の例でいえば、「周囲から認められる・評価されるということよりも、自分の主体的真理に近づくことを優先する」ということを試してみました。
⑤試着した新しい価値観によって、どのような結果(事象や感情)がもたらされるかを観察する
5つ目の手順では、試着した新しい価値観によって、どのような結果がもらされるかを観察します。
結果というのは、自分の感情もあれば、自分や自分の周囲の起こる出来事というのもあります。服の試着のメタファーで言えば、服を試着したら、自分で鏡をみたり、友人に自分の姿をみてもらったりしますね。それと全く同じで、新しい価値観を試着した自分を観察するというイメージです。
そして、新しい価値観のフィット感がよければ、それをもう少し自分の中に取り入れて試してみます。一気に、自分の内側にいれるのではなく、少しずつ試していく感じが良いと思います。
私自身の例で言えば、これまで大切にしてきた「周囲から認められること」を手放すことは、「怖い」感覚がしました。周囲から認められる機会が減ることで、自分が自分である根拠が失なわれるような感覚がありました。
一方で、「自由になる」「心が軽くなる」という感覚も持ちます。これまで「周囲から認められる」ために、必要以上に頑張ってきたのかもしれないと思いました。そのような肩肘張る感じが必要なくなることによって、心の軽さを感じたのだと思います。
この心の軽さが自分にとってはしっくり来ましたし、何より新しい心地よさだったので、「自分の主体的真理に生きる」という価値観が自然と、自分の内側に一段入っていきました。
今回の記事では、フィルター(価値観)調整の手順については、私自身の具体例と共にお話し致しました。このフィルター調整が、自分で普段使いできるようになると、自分の過去を受け入れながらも、今や未来の自分のありたい姿に近づいていくようなしなやかな生き方ができるようになると私は思っています。
本日の問いとなります。(よろしければ、コメントにご意見ください)
・あなたは、自分の価値観が形成されてきた過程を大切にすることを実践することで、どのような感覚をもつことができましたか?あるいは、これからできそうでしょうか?
・あなたにとって、新しい価値観をいきなり自分の内側に入れようとするのではなく、「試着すればよい」という感覚を持つことで、どのようないいことがありそうでしょうか?
How do we adjust our values?
In the previous article, we talked about having multiple viewpoints, not just our own subjective ones, in order to become aware of our values and adjust our filters. In this article, we will discuss the specific steps to adjust our filters (our values).
The positioning of this article, continuing from the previous one, is about the second process of improvement and innovation: Use of meta-consciousness and observation of phenomena.
Filter (value) adjustment procedure
This is the procedure for adjusting the filter (one's sense of value). The word "procedure" has a working nuance, but the image of the process is to proceed with each step carefully, taking your time, and valuing the sense of satisfaction and fit within yourself.
Filter (Values) Adjustment Procedure
Become aware of the values you have.
Think about the process through which these values have been formed, and accept them without denying them.
When going back to your own desires, try to understand what kind of values you would like to have.
If necessary, adjust values and try on new values
Observe what kind of results (events and feelings) are brought about by the new values you have tried on.
I would like to explain each of these steps in detail and use my own examples to illustrate them.
1) Become aware of the values you have
In my previous article, I mentioned that in order to adjust your values, you need to become aware of your values in the first place. We have the sense that we are directly observing events themselves, but in fact we are observing events through our own unique "glasses."
It is important to ask the question, "Through what kind of values (glasses) am I looking at the events in front of me?"
To give you one example of the transformation of my own values, I have always had a desire to be recognized by those around me, and I have always held the value that it is good to be recognized by those around me.
I became aware of these values when the company entered a period of stable growth from its founding phase and I began to think about what direction we wanted to take as a company. When thinking about the company's direction, I began to consider what I really wanted to do.
Until then, I had the desire to be recognized as a full-fledged consultant (at my former strategic consulting firm) and as a full-fledged entrepreneur (after starting my own business). However, when thinking about the direction of the company and what I wanted to do, the feeling of "being recognized by someone else" did not feel appropriate.
It was the moment I realized a small sense of discomfort within myself.
2) Think about the process through which these values have been formed, and accept them without denying them
The second step is to think about the process through which the values you are aware of have been formed in you.
The point here is to accept the process without denying it.
Even if these values are no longer fitting for you today, they are still one of the values that have been important to you in the past. The process of forming these values also has its own unique story, which is not to be denied.
I would like you to accept these unique stories as important to you, without denying them.
In my own example earlier, I pondered where the value of "being recognized by someone else" comes from.
I am the second son of two brothers. My older brother is four years older than me, and when we were children, there was a big difference in size and strength, and when it came to fights, I never managed to win.
I was also born in March, and I am on the smaller side in size. The difference in physical and mental growth between me and my friends born in April was so vast that I still remember feeling as if I was surrounded by older brothers and sisters.
In this environment, in order to maintain good relationships with family and friends, it was a natural survival strategy for me to be "recognized by those around me."
Of course, as children, I did not consciously adopt such a survival strategy. I think I naturally came to hold such values when I unconsciously tried to reduce unpleasant emotions and increase pleasant emotions for myself.
3) When going back to your own desires, try to understand what kind of values you would like to have
The third step is to go back to our own wishes and try to capture what values seem good to have.
Again, it is important to carefully accept the process by which you came to hold those values in the second step before proceeding to the third step. If you try to proceed to this step without accepting the process, you may end up not being able to let go of your previous values and not being able to transform, or you may think you have transformed, but the transformation will only be superficial.
In this procedure, you return to your wish. Questions such as, "If there were no constraints, how would I like to be or what would I like to do?" are useful.
In my own example, it was about "living in my own subjective truth". This is not a nuance that denies the need to be recognized by those around me. Rather, it was my wish to place the utmost importance on "what I truly want to do and be," rather than placing "objective recognition from those around me" as the first priority.
4) If necessary, adjust values and try on new values
The fourth step is to consider whether an adjustment in values is necessary to value the wishes perceived in the third step, and if so, to try a new set of values.
A sense of "trying it out" is important in this procedure. Transforming values is not an easy task. This is because the values that we have held up to now have been cultivated over a long period of time, and often do not change overnight.
As a metaphor, I think it is good to feel like you are "trying on" new values, just as you try on clothes when you buy them. You try on clothes because even if you think they look nice at a glance, you don't know if they really fit you until you try them on. The same is true for values: even if you think something is nice at first glance, you don't know if it really fits you until you try it on.
In my own example, I have tried to "give priority to approaching my own subjective truth rather than being recognized and valued by those around me.
5) Observe what kind of results (events and feelings) are brought about by the new values you have tried on
The fifth step is to observe what results are obtained by the new values tried on.
Consequences can be your feelings, or they can be events that happen to you and around you. In the metaphor of trying on clothes, when you try on clothes, you look in the mirror yourself or ask a friend to look at you. In exactly the same way, you observe yourself trying on new values.
Then, if the fit of the new values is good, I will try it out by bringing it inside me a little more. I think it is better to try it out little by little, rather than all at once inside yourself.
In my own case, I felt "scared" to let go of "being recognized by the people around me," which I had always valued. I felt as if I would lose the basis for being myself by having fewer opportunities to be recognized by those around me.
On the other hand, I also have a sense of "freedom" and "lightness of heart". I realized that I may have worked harder than necessary in the past in order to be "accepted by those around me." I think I felt a sense of lightness of heart by no longer needing such a feeling of tension in my shoulders.
This lightness of heart felt right to me, and above all, it was a new comfort, so the value of "living in my own subjective truth" naturally took a step inside of me.
In this article, I have discussed the procedure for filter (values) adjustment with my own specific examples. I believe that when you are able to use this filter adjustment procedure on a daily basis, you will be able to live a flexible life, accepting your past while moving closer to where you want to be now and in the future.
Here are the quests of the day. (If you'd like, please share your thoughts in the comments.)
・What sense have you been able to have by practicing valuing the process by which your values have been formed? Or do you think you will be able to do so in the future?
・What good might come from having a sense of "just try it on" for you, rather than trying to suddenly put new values inside of you?
Bunshiro Ochiai
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