刹那的快楽
私は今
バニラアイスクリームが食べたい
銀色のスプーンで
角度をつけて斜めに取り出し
波の一時を射止めたような
ギザギザした表面を
生成りのざらりとしたなめらかさに
眠るように横たわる黒い粒粒を、
右から左へ 左から右へ
曲線で捕えたい。
そうして、
しばらくの沈黙と時間の経過をもって
狂おしい程の甘さに縛られる。
冷たさの後にくる
刹那的な快楽と
やがて引き出される怠惰なけだるさを
銀色のスプーンで
バカみたいに何度も繰り返す。
恋愛に似た
この有限のまやかしは
記憶も飛躍も回顧も想像も全部連れて
私は 私を 忘れていく