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【虎に翼 感想】 6/3 寅子、司法省での新たな出会い


ライアン初登場

昭和22年3月
週の始まりにふさわしい、楽しい回だった。

司法省民事局民法調査室主任:久藤賴安(くどう よりやす)、通称 “ライアン” の登場である。
世が世なら、久藤藩藩主のお殿様。お殿様と聞くと細川護熙さんくらいしか思い浮かばない世代だが、この人物にもモデルとなった方がいるようだ。

司法省の職員に追い返される前に、ライアンに見つかって気に入られたことは、寅子にとっては、とっかかりとしてはよかった。おかげで桂場にも再会した。

合格証書、直言作のスクラップなどを桂場の机の上に勝手に置き、「この国は変わる。すべての国民が平等ならば、私にも裁判官になる資格が備わることになる」、「婦人代議士が誕生したのだから、婦人裁判官がいてもおかしくない」と、前のめりになって語る。
そして、「桂場さんも以前、私が裁判官に向いていると仰いましたよね」と、共亞事件直後の竹もとでの発言(「君は裁判官になりたいのか」)を拡大解釈する。

寅子が泣き落としにかかったのは意外だった。
「父も夫も兄もこの戦争で亡くなった。残された家族を養い、大学に入る弟に心置きなく勉学に励んでもらいたい」と、桂場に頭を下げる。寅子も必死だ。
桂場の寅子についての記憶は、弁護士を諦めたところで止まっていただろうから、彼にとっても想定外だったかもしれない。しかし今、初めて寅子の事情を知ったのである。ぼろぼろのぼろ雑巾状態だった彼女が、意を決して司法省まで足を運んだ……ひとまず住所を書かせたのは彼の温情かもしれないが、寅子の粘り勝ちだ。
当時、家族を戦争で亡くした女性はたくさんいただろう。しかし、法曹資格を持っている寅子は、司法省に足を運べる。もちろん彼女が努力した結果であるが、その他大勢の女性たちは、どのような相手に頭を下げていたのだろうか……そう考えると恵まれている構図ではある。

寅子は日本国憲法に希望をもち過ぎていた。
桂場「彼女を取り巻く状況は何も変わっていない。憲法が真の意味で国民に定着するか定かではない」
「途中で逃げ出すようではいけない。裁判官は、法の、司法の砦だ」

日本国憲法では、裁判官に関する条文もある。弁護士を一度諦めた寅子に対する桂場の懸念は、これを念頭に置いているということなのだろうか。
残念だが、懸念は払しょくされず、裁判官には採用されなかった。

久藤の「GHQが喜ぶ」の言葉で、寅子が “婦人の解放” を指していることにすぐに気づいたことから、寅子が新聞を再び読むようになっていることがうかがえる。GHQの五大改革のうちの一つである。

久藤は桂場のことは何と呼んでいるのだろうか。激しく気になる。


ライアンの訪問

その日の夜。
戦時中、もんぺになっていた着物が元通りになっている。『カーネーション』で主人公の糸子(尾野真千子)が、“後で着物に戻せるもんぺの作り方” を教えていたことを思い出す。
人事課長が桂場だと聞かされ、また落ち込むはるさん。いや、桂場は私情を挟む人間ではないことは、共亞事件のときに分かったんじゃないのか。司法の砦が私情で崩れるような世界に、娘を送りだしたのか。はるさん。

そうこうしていると、自宅に久藤が訪ねてくる。
昼間、寅子が、大切なスクラップとかを全部置いて帰っていたから心配だったが、久藤が “帰り道” だからと持って来てくれた。
帰る方向が同じなのか……。「一緒に帰ろう」とか言われたら、ちょっとうっとうしいな……。
はるさんを「てっきりお姉さんかと」と褒めそやしたり、いちいち信用できないが、背に腹は代えられない。久藤の提案どおり、司法省で、彼のもとで働くこととなった。自分を引き上げてくれる久藤の存在をよすがに頑張るしかない。
寅子の気持ちを、犬の遠吠えが代弁してくれている。だから頑張れ。


ハーシーとの再会

翌日、初出勤の日。寅子は民事局民法調査室に配属された。
久藤は、「GHQもサディ(寅子)を雇うことに大賛成してくれている」と嬉しそうだ。
しかし寅子からすれば、女性像を求めてくる相手が、お国からGHQに代わっただけにすぎない。それでも頑張るしかない。

「きみの大学の同級生がいるよ」と伝えられ、つい花岡の顔が思い浮かんでしまった。
いや、再会したからといって、どうにかこうにかという話ではないのは分かっている。
そもそも、生きているのかも分かっていないのだから。

さて、扉を開けると、そこにいたのは……小橋であった。
ハーシー、合格したのか……高等試験が恣意的なものであることを痛感させられている我々は、つい、いろいろと勘ぐってしまう……すまない。
寅子、小橋は生きていたんだぞ!もうちょっと喜んであげてもいいんじゃないか。彼の言うとおり、勝手に期待して勝手にがっかりしたな。

学生っぽさはさすがに抜けているけど、小橋が変わっていなかったことが、なんだかホッとした。夫を亡くしている寅子に気をつかうわけでもなく、学生時代と変わらぬ失礼ぶりは健在だ。
そして、そんな小橋にイラっとして心を開かないことに決めた寅子にも、安心した。
戦時中は生き延びることに必死で、そんな気持ちになる余裕はなかっただろうから。負の感情のベクトルは、諸外国に向けるべきとされていただろうから。

小橋が高等試験に合格したのは、寅子よりは後だろう。寅子と轟が合格したとき、小橋が受かったとは紹介されていなかったから。修習の期は寅子が上のはずだ。
寅子の気持ちになってみる。これが弁護士だったら……弁護士にとっては修習期が重要だから威張れたのに。しかし、いかんせんここは司法省だ。不本意だが小橋を先輩としてみなそう……寅子も結構失礼。
学生時代、この二人の絡みは、そこまでなかった気がする。ピクニックのときくらいか。小競り合いが見られる今後が楽しみだ。

小橋は、花岡と轟の消息は知らないのだろうか。「亡くなった」との話が出ないから安心していいのかな……。

そして、今日は写真だけだったが、日本初の婦人代議士の一人に伊勢志摩さん!絶対に絡んでくること間違いなしのキャスティングだ。楽しみに待ちたい。

「虎に翼」 6/3より

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