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【北欧留学】フィンランドの医療制度を日本と比べてみた

日本は、患者が自分の好きな日に、(ある程度)好きな医療機関に、比較的安価で受診することができ、医療の質も高い。とても医療サービスの良い国です。(フリーアクセス)

これで何の問題もないのなら、このまま続けていけるのが一番良いのだけど、この医療制度を維持するのにはとても人手とお金がかかります。

現在、高齢者人口は増加し続けており、そのピークは2042年頃。ますます医療需要が増大する中で、このままお金のかかる医療制度を維持していくと、日本の医療費は破綻してしまう。というのが、多くの政治家や専門家、国民の危惧している所です。

実際に、われわれ現役世代が毎月給料から天引きされる社会保障費は増加し続けていますから、制度の維持に多くのお金が必要になっていることは間違いありません。

医療従事者の数も、2040年には約81万人の不足(リクルートワークス研究所)と試算が出ています。私が北欧視察を決めたのも、この現場の人手不足がきっかけだったので、今後はますます苦しくなっていくのでしょう。

さて、高福祉国家である北欧の国フィンランドではどんな医療制度を導入しているのでしょう。今回の視察でそのメリット・デメリットを学ぶことができたので、日本の実情と照らし合わせながらレポートします。


フィンランドでは、具合が悪くなってもすぐに自分の好きな医療機関に行って医師の診察を受けることはできないそうで、まずは地域の保健センターへ行って看護師の面談をうけ、それで医師の診察が必要だと認められれば二次医療に進むことができます。

ヘルシンキ市内カラサタマ地区の保健センター
内部の様子。待合いすと各個室ブース
1階は予約なしで訪れた人。2階は口腔ヘルスケア。3階ヘルスステーション。4階薬物乱用サービス。5階精神科。6階入国管理局 とある。

薬局で薬や軟膏を購入して治る程度であれば、看護師のアドバイスのもと自身でケアを行います。(セルフメディケーション)

こうして軽度な身体の不調は自分でケアすることで、自発的な健康管理や疾病予防の取り組みを促進することはもちろん、医療費の適正化に貢献することができます。

地域の保健センターからより高度な医療機関へ送られる。ここはエスポー市にあるエスポー病院。
エスポー病院のインフォメーション。日本の病院は、総合窓口には多くの医療事務スタッフが働いているが、こちらは医療DXが進みバックオフィス業務は効率化が進む。受付スタッフは「info」のカウンターに一人だけ。他の医療スタッフと何やら話し込んでいる。

医師による診察や治療が必要だと判断さえれれば、設備の整った二次医療機関、三次医療機関に送られ、適切な検査と治療を受けます。

ここまでは医療について公的なサービスを受ける場合です。公的なサービスであれば、患者の自己負担は無料か、ごく安価です。しかし保健センターで看護師の面談を受けるのに2~3時間待たされるなど、デメリットもあるのだそう。

一方、民間の医療サービスを受けるという選択肢もあるようです。この場合は料金は高くなりますが、すぐに診察を受けることができて、診察時間も長めに取ってもらえます。どうしても時間がない人や心配な人、お金に余裕のある人は、こちらの選択肢を選ぶこともできるんですね。

民間医療サービスのデメリットは、高額な料金がかかることの他にもう一つあります。それは、医師が民間医療に偏ってしまう事。民間医療に勤めたほうが給料が高いし仕事も楽なので、医師の就職先として民間医療の方が人気なのだそう。

医師からすると公的医療サービスは、日本の3分診察のように、少ない時間で多くの患者を捌かなくてはいけません。仕事が大変なうえに給料も民間ほどもらえないので、どうしても人気が偏ってしまうんですね。

地方の公的医療サービスとなると医師不足は深刻で、地方は医師に高額な給料や、1年だけなどと条件で譲歩して、人員の確保にあたるそうです。

看護師の人員確保にも問題があります。看護師養成の教育レベルは非常に高く、専門性も高いにもかかわらず、当の看護師たちはそれに見合うだけの給料がもらえていると感じていません。他の北欧諸国(スウェーデン・ノルウェー)と比べて賃金は最低なので、高待遇を求めて他国に出てしまう看護師があとを絶ちません。

まあこれは日本も同じ状況です。フィンランドのほうが他国と陸続きだし言語のハードルが低いので顕著なだけで、日本の看護師さんだってそのあたりがクリアできれば日本から出て行ってしまうでしょう。


こうしてみると、フィンランドは人手不足の問題が最も深刻なようです。
日本は人手の問題はもちろん、お金の問題もありますから、さらに思い切った変革が必要であることは間違いありませんね。

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